漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

美大・芸大

2012-03-04 09:17:25 | ■漫画家志望の進路の考え方

「漫画家になるため」なら、それほど意味はないと思います。

漫画に関係なく、絵の勉強をしたい人、将来は漫画家以外に画家やイラストレーター、デザイナーなどを考えている人などで、かつ家がある程度裕福な人には良いと思います。

※ただし「絵に関係した仕事につきたい」のところに書きましたが、画家もイラストレーターも基本的にフリーランス職であり、漫画家以上に不安定な職なので、「漫画家になれるかどうか不安だから」という保険に選ぶのにはおすすめしません。またデザイナーは会社に就職すればある程度安定しますが、たいてい激務で漫画家との両立は非常に難しいです。ご注意を・・・。

 

 

でも、そういう人以外にはおすすめしないです。

まず第一に、

美大や芸大で学ぶような専門的な美術って、ほとんど漫画に関係ないですからね?漫画学科などは別ですが、そういう学科は別の意味でおすすめしません。理由は漫画専門学校のところに。)

 

「漫画家になるんだから、絵の勉強を」と思うのは当然の流れっちゃ流れなんですが、漫画に必要な画力の勉強は、独学で十分というか、美術予備校などで学べるレベルの基礎力以上は、独学中心でしか学べないと思います。デッサンのところでも書いたとおりです。

もちろんまったく関係しないとか無駄だとか、そういうことはないですが、学費等のデメリットを考えた場合、そこまでして行くようなもんでもないかと。

 

他におすすめしない理由ですけれども。

漫画家ってのは学歴まったく関係ないので、漫画家になるために大学などに進む必要はありません。それでも漫画家志望が大学に進む場合に考える要点は、以下のようなものだと思います。

1.漫画を描く時間・持ち込みやアシスタントをやる時間がとれるか。

2.漫画家になれなかったときに、就職できるような学歴になるか。

3.漫画のネタにできそうな専門知識や経験を積むことができるか。

4.学費など大学生活にかかるお金。

5.楽しそう・面白そうかどうか

美大や芸大の場合、まずネックになるのは、2.と4.です。

美大や芸大の就職はけっして良くありません。というか学科によってはほとんどないのではないでしょうか。比較的就職が良いのはデザインと建築だと思いますが、このあたりに進むと、今度は1.が非常に厳しくなります。

デザイン学科や建築学科は、どこの大学でも大変忙しいです。私はデザインでしたが、週1徹夜で課題をこなしていました。少しでもサボったりすると簡単に留年させられますので、必死でやっていくしかありません。なので、私は暇になった大学4年になるまで漫画はほとんど描いていませんでした。

私はできれば大学在学中にはデビューするのが望ましいと思っています。そうなると、美大や芸大の就職できるような学科と漫画を両立するのは相当に大変というか・・・無理じゃないかと思っています。

そして4.も大きいです。美大芸大は国公立は少なく難関な上、私立は非常に学費が高いです。

4年通うと学費だけで800万とかかかっちゃいます。画材費やら考えると1000万レベルです。さらに、よほど才能あるかよほど底辺大学でなければ、2年ほど美術予備校(後述します)に通わないといけません。

なので、お金持ちの家じゃないと、大変なことになります。もちろん奨学金制度などいろいろありますが、奨学金は返さないといけませんからね。上記のように就職がよくないということを考えると、安易に奨学金を借りると人生詰みますよ。

最近奨学金を返せず自己破産した40代男性のニュースがありましたが・・・・。奨学金は借金です。自分が数百万・・・一千万近い借金を返せるようになるのか、よく考えてみてください。

なお、入試から卒業まで学年トップを通せばたいていの大学では学費は免除です。施設使用費などはかかりますが。能力に自信のある方はそれを狙うのもアリ。

3.についても、まあこういうことは学ぼうと思えば、どこでも学べるので、もちろん美大や芸大でも学べるでしょうけれど、どうせならぜんぜん違う分野のことを学んだほうがいいとは思います。「漫画家になるんだから、絵や漫画は独学で描けて当たり前。専門的な勉強は他の分野を学んで、他の志望者に差をつける」って方がいいと思います。

 

で、さっきちらっと書いた「美術予備校レベルで学べる基礎力」についてですが。 

よく漫画家志望の人で、「美大や芸大で絵の基礎を学びたい」という意見を見ます。
プロの漫画家でも「自分は美大を出ていないから基礎ができていなくて」と言う人がいます。
これはちょっとだけ間違いです。

美大や芸大では絵の基礎は学びません。
絵の基礎ができていない人は、そもそも美大や芸大に合格できないからです。

では美大や芸大に合格する人は、どこで絵の基礎を学んでいるかと言うと、美大受験用の予備校というのがあるのです。

大学のレベルにもよりますが、独学のみで美大芸大に入れる人はとても少ないと思います。

なので、「美大に行ってないから絵の基礎ができていない」ではなく、「絵の勉強をしていないから絵の基礎ができてない」というのが正しいです。

逆に言えば、高い学費を払って四年間美大や芸大に通わなくても、美大受験用予備校に通ったり、学校の美術教師に習うことで、絵の基礎は学べるのです。

※予備校についてはこちらの記事にも書いています。

基礎以上の部分については、漫画と美術は離れていきます。だからほとんど関係なくなるのです。だから、わざわざ漫画家になるために美大というのは、学費がもったいないなと思いますね。

 

また参考までに、美大や芸大は、手取り足取り「上手な絵の描き方」を教えてくれるような場所ではありません。

教授は課題を出して、その結果について批評するだけです。
課題をどう解釈し、どう作成して、どう表現するかは、学生が全部自分で考え、自分でやるのです。そこから何を得るかも学生次第です。

美術系に係らず、大学というのはそういうところでして、学校が提供してくれるのは環境と時間と学歴だけであり、それをどう有効利用するのかは本人次第ということです。

何も考えず学校にただ通っていれば何か素晴らしいものが得られるかのような、過大な期待を抱くのはやめましょう。

 

そういうことをもろもろ考えて、それでも美大や芸大にいきたいなーという場合は、受験準備自体は高校二年の一学期くらいからで間に合います。(東京藝大はまったく話が別です。あそこは何かと特殊なので、志望する方はすぐに準備を始めてください)

予備校に通わないといけないので、親の了承をとったら、まずは学校の美術の先生に相談してください。


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