漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

こういうわけで、早くに投稿をした方がいいのです

2012-03-08 17:39:43 | ■漫画家志望の進路の考え方

どうでしょうか。
海外を視野に入れると別ですが、今の日本での働き方はだいたい前の記事に書いた4つです。
全部読んでみると、働き方はたくさんあるようで、結局一生ある程度安定して稼ぎたいなら、1の正社員・公務員になるか、4の自営業者として成功し続けるか、どちらかしかないことがわかるでしょう。

そして、このうち1.の正社員・公務員は、前の記事にも書いたとおり、実質的に未経験でなれるのは二十代前半くらいまでです。そのあとはぐっと厳しくなります。

なぜ大変になるかと言うと、日本の会社は24,5歳くらい以上の年齢の人に対しては「正社員としての実務経験」をとても重視するからです。

これは、ある程度大きな会社のホームページの「採用情報」を見てみればわかります。「新卒」と「キャリア採用」のどちらかしか選べない会社が少なくありません。このキャリアというのが実務経験ですね。まあ名目は「中途採用」「経験者採用」などいろいろありますけど、中身を見ますとたいていは実務経験がある人というようなことが書いてあります。

「新卒」でもないし「キャリア」もない、という人は応募すらできないのです。

重要なのは「正社員としての」という部分です。フリーターや派遣社員としての仕事は評価されないことが多いです。(でも書かないよりマシですから履歴書には書いておきましょう。特に長く続けた仕事は書いた方がいいです)

なので、「新卒で正社員にならない」という選択をした人間は、その後正社員になりたくても、「経験ないから雇ってもらえない」→「雇ってもらえないから経験積めない」の悪循環に入ってしまいます。
大学生が留年までして「新卒」で就職しようとするのは、このおかしなシステムがあるからなんですね。

なお、あまり社会人経験のない人が誤解しがちなのが「資格をとれば就職できる」という考え方ですが、日本では、「資格だけ」で就職できるような仕事はほとんどありません。

資格が無駄とは言いませんが、ある程度以上の年齢になると、あくまで「実務経験がある」という前提があればこそです。


例えば、経理の実務経験がある人が簿記1級を取得していれば、それは武器になります。しかし会社員経験一切なしの人が、簿記1級だけもっていても、新卒や第2新卒ならともかく、それ以上の年齢では就職は厳しいでしょう。

看護師、教師、公認会計士、弁護士、公務員などの難関資格なら別ですが、これらは簡単にとれる資格ではありません。専用の予備校や専門学校に通ったりして、数年がっちり勉強する必要があります。また、これらも資格があっても年齢や経験でハネられることはありますので、資格があればいつでも就職できるわけでもありません。

「就職できるような資格」は、それ相応に取得するのが大変ですし、またそれだけで就職できるのは結局若いうちということです。
よく資格関係の会社が、「資格をとれば、就職・転職できる!」ような感じでCMしてますが、通信教育などでちょこちょこ勉強した程度でとれるような資格は、ほとんど就職の役にはたたないと思っていていいと思います。

 

実家が自営業をやってらして後を継げばいいとか、結婚して専業主婦(夫)になるから就職する必要はないとか(これも最近では難しいですね。専業主婦(夫)を養えるような人は減ってるので)、そういう人は別ですが、そうでないなら、日本の就職事情が非常に厳しいことを知っておいてほしいと思います。

ですので、年齢制限のところにも書きましたが、親が衣食住を保証してくれる学生の間に、できるだけの準備をしておき、この「新卒」というタイムリミットが来る前には、漫画の道をどう進むべきか、ある程度の回答を出せるようにしておくのが良いと思います。

そのためには、中高生くらいから漫画を描き、高校生くらいには投稿や持込ができるようになっているのが望ましいです。
漫画家のステップアップのところに書いたとおり、デビューだけでは食べてゆけません。連載がとれるまでを目安として時間を計算してください。
本格的に持ち込み生活に入ってからデビューまで、早い人で1~2年、遅い人なら4~5年以上かかります。
そこからさらに、連載をとれるまでとなると、さらに数年かかります。(数年かかれば誰でもとれるわけではありません。ほとんどの人はとれないまま漫画業界を諦めます)

私も、初投稿から受賞して幸先はよかったものの、その後悪い意味でスゴイ担当さんにあたったり雑誌が潰れて再デビューしたり何だりと、デビュー後ごたごたがたくさんありまして、漫画家を目指し始めてから結局「これは漫画で生計をたてるのは無理だな」という判断がつくまで約10年かかりました。

たとえば20歳から目指し始めて、10年も判断に時間をかけていたら、結果が出たときすでに30歳です。
私はもともと会社員で、会社を辞めずに目指していたので問題ありませんでしたが、もしフリーターや無職だったら、30歳から人生立て直すのは相当に大変です。しかし、これが14,5歳からなら10年かけても24,5歳です。まだまだ取り返しはつきます。

私が急げ急げとあちらこちらで急かしているのはそういうわけです。

私はいわゆる氷河期世代で、まともな正社員として就職できなかったばかりに苦労している人をこれでもかというくらい見ているので、どうしても正社員、就職にこだわった記事になっていますが、皆さんが大人になるころには(まあ、今もうすでにそうなんですけど)正社員なら安心という世の中ではなくなっていると思います。
でも、だからといって就職せずに自力だけで生きられる人もやはり多くないとは思うので、世の中の情勢を見ながら、自分がどうやって生きていくのかよくよく考えてゆくとよいと思います

ここを読んでいる皆さんはいわゆる「ゆとり世代」の方がほとんどかと思います。ゆとりゆとりと揶揄されるようになってしまいましたが、「ゆとり教育」はそもそも、それまでの詰め込み暗記中心の教育方法を見直し、「自分で考え、自分で生き抜く力をつける」のを目的として導入されたのです。
結果として真逆の方向に向かってしまったようですが、教育のせいにしていても皆さんの人生は良くはなりません。

氷河期世代の人たちも、「社会が悪い」「会社が悪い」と嘆きましたが、結局誰も助けてくれないままでした。現在においては「このままだと生活保護世帯になるので、その社会負担はどうするか」なんて議論になり、もう完全に見捨てられています。早い段階で社会を生き抜く厳しさに気づき、そういう中でどうやったら自分が生きていけるか真剣に考え、自分で自分をなんとかした人だけが、なんとか今無事に安定して仕事を得ているのです。

なお、今からの世界はゆとりどころか、大競争時代に入ると思います。ネットなどのインフラの進歩のおかげで、急速にグローバル化しているからです。
グローバル化というのはいいことではあるのかもしれませんが、世界中の企業、世界中の労働者が同じ土俵でライバルになるということでもあります。
皆さんが就職するときのライバルは、同じ日本人の大学生だけではなく、世界中の学生、労働者なのです。これだけライバルの幅が広がるのですから、それは大変な競争社会です。

大人はあまり当てにせず、「自分で考え、自分で生き抜く力」これを自分で身につけていってください。


最新の画像もっと見る