どの山にもどこかに一つは美しい場所がある。「日本百名山」の始祖が達意の筆で綴る、山旅の醍醐味、名峰の魅力、ふるさとへの想い…埋もれていた単行本未収録随筆、ここに精選。
1 山へのいざない
2 私の名山
3 静かな山旅
4 ふるさと今昔
5 東京暮らし
6 登山の周辺
7 未知なる土地へ
十六夜(いざよい)日記
なべて頂にのみ憩ひあり;ゲーテの詩
故郷にある富士写ヵ岳という1000m足らずの山に登ったのが最初だ。
山へ行くためなら何事をも放擲(ほうてき)するという有頂天ぶりが、大学へ入ってからも続いた。
「白い山」の意
アルプスの最高峰;モンブラン
アフリカの最高峰;キリマンジャロ
ヒマラヤの世界第六位の高さをもつダウラギリ
まず劈頭(へきとう)に聖峰;高千穂を掲げ得たことは、無上の喜びである。
百名山を選ぶというよりは、むしろ、名山を巡礼したい気持ちである。
殊に皇紀2600年、しかも紀元の月に、天孫降臨の伝えのある高千穂から日本百名山を始めることは喜びというよりも光栄であろう。
高千穂峰は霧島火山群の1つで標高1574m。
高千穂峰を最も美しく眺め得るのは、大幡山からであろう。
ドッシリとした風格を持った山といえば、先ず僕は第一に薬師岳を思い出す。
ドッシリといってもただ膨大なだけで血のめぐりの悪いような山;例えば南アルプスの間ノ岳もあるが、薬師岳はドッシリした上に、どこか清風颯々たるところがある。
登山行為を豊かにする精神的何物かーーそれを含んでいる書物が並んでいてこそ、私はその人の山登りを信用する。本当のマウンテニーアとは、手足を使って山を攀じ登るだけではなく、山の本を読み、山について考える人であらねばならない。
ーーこれはイギリスの登山家ウィスロープ・ヤングの有名な言葉である。
スタインの墓
アフガニスタンの首都カブールへ着いたとき、まず私の訪れたい場所はオーレン・スタインの墓だった。スタインは中央アジア探検家として、スウェン・ヘディンと並ぶ偉大な人物である。とくに敦煌や楼蘭であげた功績が著名である。
私がカブールへはいったときは5月半ばであったが、そこから見える雪の連嶺が私を喜ばせた。1500mの高地の爽涼の気が、肌に快かった。
是非もう一度でも二度でもアフガニスタンへ行ってみたい。
それほど私にとって興味ある国だった。
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