一九四五年夏―。日本の敗戦は満州開拓団にとって、地獄の日々の始まりだった。崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は、日本への引揚船が出るまで入植地の陶頼昭に留まることを決断し、集団難民生活に入った。しかし、暴徒化した現地民による襲撃は日ごとに激しさを増していく。団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けを求めたが、今度は下っ端のソ連兵が入れ替わるようにやってきては、“女漁り”や略奪を繰り返すようになる。頭を悩ました団長たちが取った手段とは…。第19回開高健ノンフィクション賞受賞作
序章 「乙女の碑」の詩
第1章 満州への移住
第2章 敗戦と集結
第3章 ソ連兵への「接待」
第4章 女たちの引揚げ
第5章 負の烙印
第6章 集団の人柱
終章 現代と女の声
文芸評論家・斎藤美奈子氏激賞!第19回開高健ノンフィクション賞受賞作1945年夏――。日本の敗戦は満州開拓団にとって、地獄の日々の始まりだった。崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は、日本への引揚船が出るまで入植地の陶頼昭に留まることを決断し、集団難民生活に入った。しかし、暴徒化した現地民による襲撃は日ごとに激しさを増していく。団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けを求めたが、今度は下っ端のソ連兵が入れ替わるようにやってきては“女漁り”や略奪を繰り返すようになる。頭を悩ました団長たちが取った手段とは……。《選考委員、全会一致の大絶賛!》作品は、共同体の「自己防衛」のために女性たちを「人柱」に捧げる「隠された暴力」の柔らかなシステムを浮かび上がらせている点で、極めて現代的な意義を有していると言える。――姜尚中氏(東京大学名誉教授)本書は、変わることのできなかった日本人の問題として悲しいことに全く色褪せていないのである。――田中優子氏(法政大学名誉教授)犠牲者の女性たちが著者の想いと心の聴力に気づいて、真実の言葉を発してくれたのだ。われわれはその言葉に真摯に耳を澄まし、社会を変えていかねばならない。――藤沢周氏(芥川賞作家)この凄惨な史実をほぼすべて実名で記した平井の覚悟と勇気は本物だ。隠された史実の掘り起こしだけではない。ジェンダー後進国であるこの国への果敢な挑発であり問題提起でもある。――森達也氏(映画監督・作家)ディテールの迫力が凄まじい。当時の触感や恐怖がそのまま立ち上がってくるような、生々しい感覚を見事に描き出した文章に圧倒された。――茂木健一郎氏(脳科学者)《推薦》今日の「性暴力」にまっすぐつながる過去の「性接待」。その事実に、あなたは打ちのめされ、そしてきっと覚醒する。――斎藤美奈子氏(文芸評論家)【著者略歴】平井美帆(ひらい みほ)1971年大阪府吹田市生まれ。ノンフィクション作家。1989年に高校卒業と同時に渡米し、南カリフォルニア大学に入学。同大学で舞台芸術と国際関係学を学び、1993年卒業。その後、一時東京で演劇活動に携わるも1997年に再び渡米し、執筆活動を始める。2002年に東京に拠点を移す。著書に『中国残留孤児 70年の孤独』(集英社インターナショナル・2015)、『獄に消えた狂気 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件』(新潮社・2011)など。
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