八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚144

2022-03-04 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

どうしよう…。

どこでサインを読み間違えたんだろ?

なんで道明寺は、そんなに怒っているんだろ?

 

それなのに、西門さんはいつもの口調で

「つくしちゃーん。俺にまで『初めまして』はねーだろ?俺とつくしちゃんとの仲だぜ。」

なんて言いだしてきた。

 

ぎゃー!!

なんてことを言うのっ!

この二人は、バカバカバカバカ!

この場を上手く丸める方法とか考えないのっ?

 

どうしようかと焦っている私に、西門さんは追い討ちをかけてくる。

「何回もヤッた仲だっつーのに、『初めまして』はねーだろ?」

 

「西門さん!そんな誤解されるようなこと、言わないでっ!」

私は、当然だと思って言ったのに!!

 

「誤解されて困るような奴がいるのか?」

なんて道明寺が言い出すから、ますます訳がわからない。

 

誤解されて困るとかじゃなくって!

そんな風に思われるのって、私は困るし嫌なの。

道明寺にとっては、西門さんと私が何かあっても平気なのかもしれないけど…。

 

ズキンってしている私に、西門さんはニヤニヤ笑いながら言ってきた。

「あれ?俺、つくしちゃんとは、何度も茶の練習をヤッた仲だって思っていたけど?違ったか?確か、つくしちゃんは、うちの初心者コースに通っていたよな?」

 

西門さんが、ここで終わらすわけもなく…。

「つくしちゃーん。何をヤッた仲って思ったんだよ?」

だとか

 

「エッチなこと考えたんだろ?スケベ。」

こんなことを、いつものように言ってきたんだ。

 

あまりに、いつもの西門さんの言い方に私もいつもの私になってしまった。

「もう!西門さんっ!」

こんなことを言いながら、西門さんの前に移動したんだけど…。

 

西門さんは余裕で、

「おっ!つくしちゃーん、顔真っ赤だぜ。」

「耳まで真っ赤にして、可愛いじゃん。」

「今日みたいなつくしちゃんなら、いつでもOK。メールしてこいよ。」

「俺が不服なら、専門のあきらはどうだ?」

 

こんなことを、私をからかいながら言ってくるの。

千人斬りもマダムキラーもいらないっつーの!

 

こう思いながらも…。

自分でも顔や耳が真っ赤になっているのに気付いていた私は、反論できなくって、口をパクパクしてしまった。

 

その時、花沢さんが私の手を取り、

「牧野、食べに行くよ。」

って言いながら、ビュッフェコーナーへ連れ出してくれたんだ。

 

 

 

おいっ、類!

なんで、類が牧野の手を取ってビュッフェコーナーに行くんだよ!

俺が、牧野を連れだしてーんだっ!

 

完全に出遅れた俺。

そして、残されたこの気まずい雰囲気。

 

俺と天草。

そして、紀明と滋にあきらと総二郎。

 

いち早く、この気まずい雰囲気を察知したあきらは

「へー。あの子、総二郎のお茶教室に通っていたのか。」

 

こんなことを、総二郎に話し出した。

天草は、何かを感じ取っているのか?

 

俺と滋。

そして、紀明にも意味ありげな視線を投げてきた。

 

この視線。

だから、政治家は嫌いなんだよ。

意味ありげな視線で『全てわかっている』っつー表情が頭にくる。

 

こんなムカつく視線を投げられているのにも気付かねー滋が、口を開いた。

「ふーん。つくしはニッシーの所の生徒さんだったんだ。で、清之介は、つくしとはいつから付き合ってるの?結婚は?」

 

「まだ付き合ってない。は、ただの上司と部下だ。」

クソ天草の返事がこれだ。

 

なにが『結婚は?』だよ。このバカサル女。

付き合ってなんかねーって言っただろっ!!

その上、この政治家一家、なにが『まだ』だっ!

しかも、こいつ『今』を強調しなかったか?

 

今から、お前の女になるような言い方するんじゃねー。

あいつは俺の女で、俺の妻なんだ。

絶対に、誰にも渡さねー。

 

「ってことは、清之介はつくしが好きなんだ。」

あっけらかんとした滋の言葉に、

 

「あぁ、好きだ。つくしが入社した時から、ずっと、つくしだけを見ていた。」

天草から発せられた言葉。

 

!!!

こいつっ。

天草は、完全に俺にだけに言ってきた。

 

しかも、牧野のことを《つくし》って呼んでいるのか?

体中から怒りが湧き上がってくるのがわかる。

俺はグッと歯を食いしばり、血管が切れそうなほど手を強く握った。

 

なんで天草が、牧野をつくしって呼んでいるんだ?

マジで天草と牧野は、付き合っているのか?

いや、牧野はそんな女じゃねー。

好きな男や、付き合っている男がいるのに、俺と結婚なんてしねーはずだ。

 

天草はマジだ。

マジで、牧野のことが好きだ。

ムカつくくらい、天草は牧野のことを思っている。

俺と同じくらい強い気持ちで牧野のことを思っているのがわかる。

 

そして、天草は…。

俺と牧野のことを、何か気付いている。

何に気付いているのかは、わかんねー。

その上で俺に宣戦布告をし、牧野を手に入れようとしているっつー事だけはわかった。

 

怒りで手が震えてくるのがわかった。

俺が牧野のいるビュッフェコーナーへ移動しようと一歩出した時────。

 

俺をワザと遮るように、天草がビュッフェコーナーへ移動して行った。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。