八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚162

2022-03-22 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

道明寺にエスコートされて、入った部屋は─────。

大広間?って、くらいの広い部屋だった。

 

個人の家なのに、広い上に天井もすごく高いの。

ペントハウスもすごいと思っていたけど、このお邸は桁違い。

すごいスゴイだらけだよ。

個人の家自体が、美術館や博物館って本当に桁違い。

 

その上、暖炉もあって本当に火がくべられていた。

パチパチって小さな音が聞こえてくる。

 

私が、この大広間の厳かな雰囲気に圧倒されていると────。

道明寺から手渡されたロイヤルブルーの小箱。

 

「なに、これ?」

「開けてみろよ。」

 

私が、この小箱を開けると─────。

そこには、私が初めて目にするネックレス。

土星の形のペンダントトップのあるネックレスが、キラキラした光を放っていた。

 

ケースをテーブルに置き、土星のネックレスをゆっくり手に取る。

「綺麗。」

綺麗すぎて、思わずため息が出る。

 

「つけてやる。」

「えっ、でも…。こんな高そうな物、もらえない。それでなくっても、ドレスまで用意してくれているじゃない。」

思わず、両手を振りながら言ってしまっていた。

 

そんな私に、

「いいんだよ。俺が、お前に用意したかったんだ。」

こう言って、道明寺は私の背中に移動した。

 

道明寺が、土星のネックレスを私の首に通す。

ドキドキと動く私の心臓。

そして、私の意識とは関係無しに、私の背中が勝手にビクビクと動き出す。

 

手にした時より、首に通してもらうと─────。

私の肌にも映えて、綺麗な光を出している土星のネックレス。

 

綺麗な光を出している石は、全て青。

澄み渡る空のような水色、視界に飛び込んでくるような鮮やかな青、深い海のような瑠璃色。

 

思わず、このペンダントトップの土星から発せられる光をすくうように大切に両手で包む。

道明寺は、私の背中越しにそれを見ていたらしく、

「スゲー似合ってる。」

なんて言ってきてくれたんだ。

 

お世辞でも、こんな風に言われるのはやっぱり嬉しい。

でも、素直じゃない私は、こんな時になんて言っていいのかわからない…。

 

なんて言ったらいい?

なんて言うべき?

素直に思ったことを言うのが良いはず…。

 

「ありがと。すごく綺麗。あの土星のボールペンと同じ青だね。」

こんな私の言葉だったのに、道明寺はすごく嬉しそうに笑ってくれたんだ。

 

そして、

「青は、お前の誕生石だからな。」

って、言ってきてくれたんだ。

 

私の誕生石…?

正直、貴金属に縁の無い生活をしてきたから、全く知らない。

私の誕生石は、青色なんだ。

 

私は、もう一度─────。

ペンダントトップを手に取った。

 

ボールペンも土星だった。

ペンダントも土星。

道明寺は、土星が好きなの?

 

ボールペンの時も思ったけど、既製品じゃないはず…。

ボールペンならまだしも(それでも、絶対に日数は掛かるはず。)

このネックレスは、注文したからといって、直ぐに出来るようなモノじゃない。

 

ペンダントトップを両手で包んでいる私の手に、道明寺も手を添えてきた。

そして、私を覗き込むようにして言ってきたの。

「それ、ホワイトデーのお返しだからな。ホワイトデーに注文したんだからな!だから、来年のバレンタインは、俺だけ手作りな。約束だぞ!」

 

えっ!?

ホワイトデーのお返し!?

ホワイトデーに注文した!?

ホワイトデーは3月14日。

 

今年のホワイトデーの記憶が蘇る。

『俺、来年はお前が作ったのを食ってみたいから、作ってくれよ。』

道明寺は、確かにこんなことを言っていた。

 

そして、今も、来年のバレンタインのチョコの催促。

もしかして────。

道明寺は、その頃から私のことを…好きでいてくれたりしたの?

厚かましすぎる、私の妄想なのかもしれないけど…。

 

でも、それだったら────。

大河原さんのことは、どうして…?

あの報道は9月だった。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。