All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

「題詠マラソン2005」 (056~060) 

2005年03月31日 02時36分48秒 | 題詠マラソン
056:松
舗装路にひとつ転がる松かさはリスの歯形をその身に残し


057:制服
水彩の時にさよなら 制服のリボンを渡る三月の風


058:剣
長剣を振りかざすごとつわものの御墓に繁る夏草の群れ


059:十字
左傾する南十字を呑み込んで冬の波濤は空までも打つ


060:影
山ぼうし麦わらぼうし影ぼうしつくつくぼうし ああ夏休み

「題詠マラソン2005」 (051~055)

2005年03月30日 15時34分09秒 | 題詠マラソン
051:泣きぼくろ
いつしらに現れたのか泣きぼくろ子を印すごと眦に映ゆ


052:螺旋
自らを犯す快感(けらく)よゆっくりと二重螺旋を貫くピアス


053:髪
奪うならすべてを奪え絶え間なく髪を立たせる逆境の風


054:靴下
それぞれの個性光らせ靴下は♪ ♪ ♪と陽だまりを揺る


055:ラーメン
明日からの化学治療を前にして武者震いしつ食べたラーメン

過去ログ50より

2005年03月30日 13時17分48秒 | 題詠マラソン感想
9798] 084:林 浜田道子 2005年03月27日 (日) 23時16分
風に揉まるる林の木々のみな芽吹き胸ふかぶかと熱きもの満つ

非常に丁寧に詠まれていますね。

[9822] 095:翼 黒田康之 2005年03月28日 (月) 01時49分
今僕に翼はないが地を伝う魔物になっておまえと走る

ゾクゾクしてしまいます。

[9824] 097:静 黒田康之 2005年03月28日 (月) 01時50分
きみの部屋に静寂があるどうしても入ってゆけない形のままに

静寂を「入ってゆけない形」と描写したところがすごいです。
静寂の中に渦巻く、さまざまな感情を感じます。

[9848] 014:主義 吉島恋太郎 2005年03月28日 (月) 09時31分
主義口にしてばかりゐる友人のいやに目につく銀歯のひかり

ありそうな光景ですよね~。
銀歯のひかりがなんか屁理屈っぽい友達を表していて
おもしろいです。

[9871] 015:友 KADESH 2005年03月28日 (月) 13時56分
お互いの近況などを語らえばいつしか友の独演となる

いつの間にか、聞き役にされていたんですね。

[9902] 009:眠 和良珠子 2005年03月28日 (月) 16時26分
めずらしく穏やかに眠りいる母の両手にあまる首のか細き

深いです・・・・。

[9915] 076:リズム 鈴木貴彰 2005年03月28日 (月) 19時15分
放鬆の裸身はソファに展ばされてけだるき夏のリズムの配下

これだけを読むと分からないですが、前後を読めばこれは
スペインのリズムが体の底に響いているということが分かり、
とても熱くそして哀しいものを感じます。
リタの故郷への哀愁でしょうか?

[9917] 078:携帯 鈴木貴彰 2005年03月28日 (月) 19時15分
発信をゆるさぬベルに縛られて携帯されぬアスタ・マニャーナ

アスタ・マニャーナ「明日またね」という意味だそうです。
「明日またね」と言えない相手との関係、リタの身上が
重く伝わってきます。

[9956] 081:洗濯 ハナ 2005年03月28日 (月) 21時59分
優しさを欲しがる病気 洗濯は柔軟剤をどぶどぶ入れる

どぶどぶがいいですね。
柔軟剤にさえ優しさを求めてしまう。
空っぽの心が伝わってくるようです。

過去ログ49より

2005年03月30日 13時03分32秒 | 題詠マラソン感想
[9594] 021:うたた寝 暮夜宴 2005年03月26日 (土) 21時21分
うたた寝の君の背中に少し泣く かけがえのないぬくもりだから

ありますよね、背中を見てるとそのいとおしさに泣けちゃう
ことって・・・。
じんわり。

[9633] 021:うたた寝 五十嵐きよみ 2005年03月27日 (日) 00時04分
「うたた寝をしていたような数年」といつか言いたい十代のこと

十代に戻りたい、十代を忘れたい、いろんな人がいることでしょう。
うたた寝をしていたような数年。
うん、そういえたらあったかいですよね。

[9637] 031:盗 落合朱美 2005年03月27日 (日) 00時14分
真夜中に焼き菓子ひとつ盗みおるポチの罪を被る父の愛

優しいお父様ですね。

[9686] 095:翼 クロネコ 2005年03月27日 (日) 09時52分
懐かしの キャプテン翼の 名セリフ 「ボールは友達!」 友達蹴るんか…

最後がぼやきのようで・・・笑いました。
翼くんは迷いなく蹴っていましたよね。

[9693] 033:魚 橘 みちよ 2005年03月27日 (日) 10時59分
赤と緑の光散りぼふ滑走路を深海魚のごとわが機はすすむ

点灯する光の中を銀の深海魚のような飛行機が進んでいく
光景が目に浮かびます。

[9759] 006:時 やまもとなおこ 2005年03月27日 (日) 17時52分
自転車と共に田んぼへ落ちてゆく瞬間、確かに時は止まった

経験・・・・あります・・・・。
たしかに時が止まります。

過去ログ48より

2005年03月28日 14時34分48秒 | 題詠マラソン感想
[9419] 008:鞄 林 ゆみ 2005年03月25日 (金) 21時20分
モノクロの鞄売り場に春を呼ぶ色とりどりのランドセルたち

うんうん、と頷いてしまいました。
ランドセルは色だけでなく、その存在で「春」を感じますよね。

[9452] 087:計画 謎彦 2005年03月25日 (金) 23時20分
計画の「画」のあたりに憧れのマスクメロンを感じてしまふ

最初、画の升目の部分がマスクメロンに似ているからなのか
と思いました。
でも、画がお皿に乗ったマスクメロンそのものの形なのだと
気づいたらおかしさがこみ上げてきました。
「憧れ」という表現も、庶民らしくておもしろいです。

[9467] 078:携帯 浜田道子 2005年03月25日 (金) 23時53分
背(せな)かがめ携帯電話かけているみんなおんなじかたちをなして

若者はそうでもなかったりしますが、サラリーマンたちは
なぜみんなバツの悪そうな態度で電話しているのでしょうね。

[9501] 028:母 飛鳥川いるか 2005年03月26日 (土) 10時52分
風葬をのぞむわが身にははそはの母音のごとくやはらかき雨

淡い淡い風景画を見ているような気持ちになりました。

[9544] 028:母 高崎れい子 2005年03月26日 (土) 16時09分
乳の出ぬ母でごめんね 子の恋ふはガラスの哺乳瓶のぬくもり

母乳がでないというだけなのに、なぜ子に対して罪悪感を
感じてしまうのでしょうね。
自分の体験に重なる部分が多く、ガラスの哺乳瓶がとても
切なく心に響きました。

[9560] 082:罠 黒田康之 2005年03月26日 (土) 17時02分
笑顔など罠にすぎない若者よ少女の顔を見ていけない

若者・少女と出てくる言葉は優しい言葉なのに、なぜか
危機感が心に迫ってきます。

[9567] 003:つぼみ 西王燦 2005年03月26日 (土) 18時39分
梅園に傘・傘・蕾・傘・つぼみ、別れるための儀式のやうだ

まだ開花しない梅園の様子がとてもよく表れていると思いました。
リズムもとてもいいですね。

過去ログ47より

2005年03月28日 14時34分09秒 | 題詠マラソン感想
[9248] 018:教室 今岡悦子 2005年03月24日 (木) 21時27分
あみだくじ作る係の小気味よさ席順きめる春の教室

みんなの運命を手にしているような気がするのでしょうか。
上に立ったような視線がたまりません。

[9315] 072:インク 黒田康之 2005年03月25日 (金) 00時30分
インク瓶の底にくすんだ青がある空に沈めた思い出みたい

たしかにインク瓶の底には黒に近いような澱がたまっています。
小さな小さなインク瓶の中に空を、空に沈めた思い出を
ながめる作者。
視線の移動も効果的ですね。

[9316] 073:額 黒田康之 2005年03月25日 (金) 00時31分
黒縁の眼鏡はもうすぐ出来上がるぼくの小さな額縁として

眼鏡を額縁と表現する作者の表現力の豊かさにひかれます。

[9357] 032:乾電池 橘 みちよ 2005年03月25日 (金) 12時22分
いまに水に沈めてやらむと思ひゐしポケベルの乾電池を替ふる

時・場所考えずに鳴るポケベル。
憎憎しさがよく表れています。
でも、捨てられないところが逆に泣き笑いしてしまいそうです。

[9385] 011:都 黒月秋哉 2005年03月25日 (金) 20時02分
0と1それだけのはずこの都市は花も花にやる水道水も

すべてがデジタルに支配されている都会。
自然に咲いている花にすらデジタルを感じる。
荒涼とした作者の心象が伝わってきます。

過去ログ46より

2005年03月28日 14時18分38秒 | 題詠マラソン感想
[9034] 019:アラビア ひぐらしひなつ 2005年03月23日 (水) 20時10分
アラビアと口にするたび白い花こぼれますます遠いアラビア

初句の「アラビア」結句の「アラビア」。
その間に白い花びらが舞っているようです。
感服・・・。

[9039] 093 ナイフ 冬野由布 2005年03月23日 (水) 20時16分
沈黙といふナイフをば突きつけて男は寝間へ行きてしまへり

沈黙はあるいは他のどんなものよりも凶器になるのかも知れません。

[9056] 025:泳 高崎れい子 2005年03月23日 (水) 20時49分
ふわふわと泳ぐ弟のなめらかな白き背中は海へ溶けゆく

弟の背中がまるで実態のない何かのように感じます。
思い出を回想しているような視線が魅力です。

[9097] 072:インク 浜田道子 2005年03月23日 (水) 22時56分
ようやくに敬語だらけの手紙書く万年筆のインク乏しき

敬語だらけの手紙。
親しい人間に出すものではないのでしょう。
作者の疲れが伝わってくるようです。

[9109] 033:魚 斉藤そよ 2005年03月23日 (水) 23時17分
わたくしのなかにも一尾回遊魚 いつか いつしか 海に あるいは

後半のスペースが効いています。
回遊魚のイメージと相まって遠くへ遠くへ泳いでいく姿が
空想されます。
「あるいは」の使い方もうまく、さらにさらに想像が
かきたてられます。


過去ログ45より

2005年03月28日 13時52分39秒 | 題詠マラソン感想
[8788] 065:城 鈴木貴彰 2005年03月22日 (火) 16時02分
不夜城にネオン輝くかがやけば濃くなる影の占める面積

非常に観念的な歌かと思うとそうではない。
実に細やかな観察眼で情景が描写されています。

[8793] 070:曲 鈴木貴彰 2005年03月22日 (火) 16時03分
自動ドア開くつかのま楽曲は友を殺しし路地に溢れぬ

この短歌もそうですね。
自動ドアが開いた瞬間に店の中から音楽が流れてくる。
そしてまた静けさが訪れる路地の様子が31文字の中に
閉じ込められていると思いました。

[8812] 027:液体 伊波虎英 2005年03月22日 (火) 17時38分
「生きたい」と波打つぬるき液体を超音波(エコー)画像は黒く映せり

「生きたい」に胎児の叫びのようなインパクトを受けました。

[8879] 045:パズル 吉野楓子 2005年03月22日 (火) 23時05分
ひとつずつ花のこぼれをひらふごとパズルをあはす思ひ出ごっこ

春風のようなやわらかさ。
淡い淡いノスタルジーに溢れていて優しい気持ちになれるようです。

[8900] 020:楽 みあ 2005年03月22日 (火) 23時35分
雨降りの木管楽器のシの音はすこしゆるめに坂道くだる

雨降りの音が木管楽器なのか、それとも実際の木管楽器の音を
詠んだものなのか。
どちらにせよ湿度や天候で変わる木管楽器の繊細さが現れていて
いい歌だと思います。

[8945] 046:泥 寺川育世 2005年03月23日 (水) 12時26分
後悔は泥酔の道のそちこちに落ちてゐてひとつ拾へば椿

華やかな花をある日突然落としてしまう椿。
結句が衝撃的なまでに心に迫ってきます。

 

「題詠マラソン2005」 (046~050)  

2005年03月27日 16時09分30秒 | 題詠マラソン
046:泥
泥濘に浮かぶうさぎの雪形のさみしさ春をうさぎでおれぬ


047:大和
先人の矜持もつごと敷島の大和の空に立つ杉林


048:袖
福寿草のきいろが冬をとき放つ朝かろやかに半袖を出す


049:ワイン
雛罌粟の野辺のふたりを潜ませてワインは春をまたひとつ過ぐ


050:変
小賢しく生きる手立てを知るがゆえ変を変とはいわぬ鵺たち

過去ログ44より

2005年03月26日 23時49分27秒 | 題詠マラソン感想
[8630] 054:靴下 林本ひろみ 2005年03月22日 (火) 00時37分
水玉の靴下がもう似合わない胸の奥には少女が住むのに

水玉って少女だけに許された模様なのかも知れませんね。

[8652] 018:教室 あみー 2005年03月22日 (火) 04時15分
教室であの時きみが歌ってた歌詞の間違ってる方が好き

「歌詞が間違ってる方が」がかわいらしいです。

[8669] 031:盗 吉野楓子 2005年03月22日 (火) 07時50分
早(は)よう来てうちもあんたば好いとうけん盗んでほしかぁ・・・ついて行くけん

方言がやわらかく心に沁み込んできます。

[8723] 031:盗 望月暢孝 2005年03月22日 (火) 11時23分
幾つかは盗んでほしいものあればドアを開いて今日も待ちおり

心象詠なのでしょうが、うまく暗喩されていると思います。 

[8737] 084:林 足立尚彦 2005年03月22日 (火) 12時32分
木はひとつ、林はふたつ。木の方がさびしくなくて気のせいじゃない

人間も一人よりも二人でいる時の方が寂しいことがあります。
漢字ひとつにおいてもじっくりと観察する作者に感動しました。

[8786] 063:鬼 鈴木貴彰 2005年03月22日 (火) 16時01分
蒼ざめた鬼面浮かべているだろう割られておらぬ鏡があれば

鏡って何だか怖い存在でもありますよね。
その怖さと鬼面の怖さが相まって背筋がぞくっとするような
寒気を感じました。