過去ログ７７より

[15161] 028:母 和良珠子 2005年05月18日 (水) 19時48分
母になるとは獣（けだもの）に還ること　おもねるものはみな噛み殺す

[15163] 058:剣 もりたともこ 2005年05月18日 (水) 20時23分
金色の剣を抜いて襲いくる陽には負けぬと今日も厚塗り

[15178] 040:おとうと 折口　弘 2005年05月18日 (水) 23時43分
姉の言うズルイも何も分からない　生まれたときから僕はおとうと

[15199] 027:液体 屋良健一郎 2005年05月19日 (木) 00時00分
液体になったり固体に戻ったり午後の古文書学の眠さに

[15207] 022:弓 落合和男 2005年05月19日 (木) 00時54分
矢を打てぬ弓にて弾かれ旋頭歌のごと低音を歌うかチェロは

[15219] 074:麻酔 青野ことり 2005年05月19日 (木) 13時08分
黒鍵を選んだやうに降る雨は六月鬱に麻酔をかける

[15234] 086:占 矢嶋博士 2005年05月19日 (木) 23時08分
ちちははが口ぎたならしく　唾きとばし喧嘩しをるを　九歳が傍に叫びぬ　咽喉裂きて「仲直りして！」　泣き叫び「仲直りして！」　此の世の果て置き去りされし　絶望のこゑしぼりだしぬ　九歳のあはれに生きぬ　責任はただわれにあり　情けなきふがいなき身の　おとこなる父にあるものを　九歳をきのふも今日も　かなしませをりぬ　（九歳の未来（みらい）に）

もはや大人（おとな）の九歳ならばあはれこころに占める思ひに哀しみの充つ

[15245] 045:パズル 五十嵐きよみ 2005年05月20日 (金) 00時12分
一冊をどこまで言葉で埋めてもパズル雑誌の変わらぬ軽さ

[15259] 035:禁 近藤かすみ 2005年05月20日 (金) 10時54分
夫のため禁煙飴を買ふことに愛と依存はいくつあるのか

[15268] 034:背中 林　ゆみ 2005年05月20日 (金) 13時51分
ちっぽけな背中に七つ星を背負いテントウムシが飛び立つ宇宙

[15275] 071:次元 野良ゆうき 2005年05月20日 (金) 22時12分
並走する闇　ずれてゆく次元　満月というひとつの答え

[15288] 028:母 みち。 2005年05月21日 (土) 02時56分
祖母はいま昨日と同じ天井を見つめて今日を生ききっている。

[15311] 010:線路 藤苑子 2005年05月21日 (土) 13時18分
一度は廃線となりし電車路　線路生まれの草逞しき

[15324] 078:携帯　 落合朱美 2005年05月21日 (土) 14時26分
あたくしを待ち受け画面に封じ込め携帯するなど笑止千万

[15325] 079:ぬいぐるみ　 落合朱美 2005年05月21日 (土) 14時27分
今もまだぬいぐるみでは癒されず明日はポチの三回忌なり

[15333] 051:泣きぼくろ みあ 2005年05月21日 (土) 19時07分
愛されて大きくなった泣きぼくろ その指つぎは何を抱くの

過去ログ７６より

[14965] 077:櫛 こはく 2005年05月16日 (月) 13時12分
身勝手なうしろめたさが鳴らす櫛かつてあなたもしたことでしょう

[14968] 041:迷 きじとら猫 2005年05月16日 (月) 14時58分
黒猫が横切るだけで不吉とは！そんな迷信犬の陰謀

[14990] 057:制服 暮夜宴 2005年05月16日 (月) 21時07分
制服の（みんな一緒）が少しだけ息苦しくて千切ったボタン

[15009] 023：うさぎ 中山博史 2005年05月16日 (月) 22時54分
アルバムのなかにうさぎをこわごわと抱く君のゐる　嫁にゆくのか

[15020] 066:消 今岡悦子 2005年05月16日 (月) 23時40分
消印のない封筒に風船が飛びつづけたりいわさきちひろの

[15021] 032:乾電池 林　ゆみ 2005年05月17日 (火) 00時07分
単一の乾電池なら何個分？なんて単位で体重訊くな。

[15049] 050:変 島田 久輔 2005年05月17日 (火) 12時52分
変数名だぶっておきた誤動作だ、窓に明けゆく薄命の空

[15059] 060:影 黒河更沙 2005年05月17日 (火) 16時36分
夕焼けに向かって帰る吾が影を軽やかに踏みぬ少女のありき

[15094] 046:泥 やまもとまき 2005年05月17日 (火) 21時18分
泥ヲ塗ル。顔ニ、手足ニ。生キルタメ。ココハ戦場。息ヲ潜メロ。

[15099] 027:液体 久哲 2005年05月17日 (火) 22時12分
固体だが液体として触れている俺は小さいほうが好きだな

[15111] 049:ワイン 三宅やよい 2005年05月17日 (火) 22時46分
重馬場の飛沫を浴びる騎手ならむ薔薇とワインをこぼす夕暮れ

[15120] 098:未来 ベティ 2005年05月17日 (火) 23時58分
夭折の従姉弟ふたりを見送りて愛は未来に誓えぬと識る

[15124] 014:主義 兵庫ユカ 2005年05月18日 (水) 00時54分
ちらちらと見え隠れする「主義」という趣味　武装しているだけのひと

[15134] 043:馬 里坂季夜 2005年05月18日 (水) 05時43分
騎馬戦でとられた帽子返されるようにプレゼン書類が戻る

[15154] 050:変（再投稿） ぴいちゃん 2005年05月18日 (水) 14時39分
身に起こる変化（へんげ）のきざしに気づいてかオタマはしきりと空を見ている

過去ログ７５より

[14761] 054:靴下 原田　町 2005年05月13日 (金) 12時38分
容疑者の部屋というのが映されてその軒下に揺れる靴下

[14772] 030:橋 蝉マル 2005年05月13日 (金) 18時10分
隣国との心の架橋なおざりに瀬戸に鳴門に巨橋架けきし

[14797] 022:弓 恩田和信 2005年05月13日 (金) 21時22分
遅刻にも吠えず優しく笑むきみのこめかみで弓引き絞る音

[14800] 070:曲 橘　みちよ 2005年05月13日 (金) 21時39分
オシラサマ座敷童子も眠られずゲームに沸きし曲がり屋の夜

[14804] 074:麻酔 橘　みちよ 2005年05月13日 (金) 21時42分
身の一部うしなふ前のわれのまま麻酔醒めぬまま死にてゆきたし

[14810] 052:螺旋 仁村瑞紀 2005年05月13日 (金) 22時41分
姓も血も二重螺旋ものこさない生き方がある　今日は青空

[14816] 021:うたた寝 ＰＤＰ 2005年05月14日 (土) 00時09分
うたた寝をせずに頑張るアリよりも寧ろ微妙にキリギリス寄り

[14835] 069:花束 青野ことり 2005年05月14日 (土) 14時09分
花束を包みし英字新聞に海のむかふの愁ひがにじむ

[14858] 045パズル 方舟 2005年05月14日 (土) 18時00分
パズル解く如き半生送り来て余生の答え迷う事無く

[14874] 036:探偵 雪之進 2005年05月14日 (土) 22時07分
廃屋にあったら怖い変死体　び、び、び、びびるな僕らは探偵団

[14877] 053:髪 仁村瑞紀 2005年05月14日 (土) 22時11分
母の髪に歳月は降る霜のごといつしか父の享年越える

[14878] 065:城 ジテンふみお 2005年05月14日 (土) 23時04分
ねえ寧々よ　余とて一国一城の主としての小遣いをのぅ

14879] 066:消 ジテンふみお 2005年05月14日 (土) 23時07分
消えやらぬせっけんの香で満員のチンチン電車が走る湯の街

14887] 021:うたた寝 屋良健一郎 2005年05月15日 (日) 00時43分
信長の首を獲ったり日本史学特殊講義でうたた寝をして

[14888] 047:大和 みあ 2005年05月15日 (日) 00時46分
面タオルきりり絞めあげ７歳の大和心は蹲踞が苦手

[14895] 030:橋 黒月秋哉 2005年05月15日 (日) 02時49分
体内に水満つ者の行き交えば河上に架かる橋もまた川

[14908] 043:馬 如月初香 2005年05月15日 (日) 12時25分
春の野に野生馬のむれ静かなり身よりいのちの湯気たてながら

[14909] 048:袖 みあ 2005年05月15日 (日) 13時06分
ほんとうはねえちゃんだって欲しかった ちょうちん袖も赤いリボンも

[14913] 018:教室 田咲碕 2005年05月15日 (日) 14時30分
やわらかくぬるく優しい教室は抜け出したくない檻でもあった

[14918] 054:靴下 mamaGON 2005年05月15日 (日) 15時14分
久々に夢に見し亡母は靴下をはかんとうつむき顔あげざりき

[14925] 060:影 mamaGON 2005年05月15日 (日) 15時27分
あるなしの風に吹かれてユキノシタ影なきほどの花を震わす

[14939] 031:盗 海神いさな。 2005年05月15日 (日) 22時59分
失くしたか盗まれたかさえわからない記憶があった場所が傷むの

[14953] 070:曲 飛永京 2005年05月16日 (月) 03時29分
まだすこし黄色と棘がのこってる曲がり胡瓜のさきっちょの花

過去ログ７４より

[14557] 055:ラーメン もりたともこ 2005年05月10日 (火) 10時03分
夜十時ラーメンを食べた　自己主張してる体重計は無視する

[14561] 042:官僚 前野真左子 2005年05月10日 (火) 15時40分
＜反省＞も＜遺憾＞も覚え官僚の手綱捌きに舞へ舞へ小猿

[14569] 027：液体 みち。 2005年05月10日 (火) 17時30分
生きるには必要なこと。くちびるをかんでしみ出た液体の味。

[14590] 005:サラダ 落合和男 2005年05月10日 (火) 22時59分
ア・カペラがサラダのごとく鳴る朝に音符は黒で記してはならぬ

14600] 007:発見 キタダヒロヒコ 2005年05月11日 (水) 08時02分
「発見」は愚かなる雲あをぞらのわれらヒト科のしばらくの椅子

[14640] 016:たそがれ　渡部光一郎 2005年05月11日 (水) 21時55分
もう少し待っていたまえたそがれを受信するには時間がかかる

[14645] 074:麻酔 落合朱美 2005年05月11日 (水) 22時26分
春の所為？麻酔打たれし人の如うららうららかいつまでも寝る

[14648] 088:食 今泉洋子 2005年05月11日 (水) 22時33分
桜鯛食めば思ほゆ美しき名前の駅に別れし人を

[14661] 031:盗 林　ゆみ 2005年05月12日 (木) 00時04分
二次元の男にこころ盗まれた夜は栞になって眠ろう

[14669] 016：たそがれ 美里和香慧 2005年05月12日 (木) 01時08分
ふらふらと過ぎ行く春は嘘いちみり分の重さもなくて　たそがれ

[14678] 023:うさぎ 花月　香 2005年05月12日 (木) 12時33分
優しさが傷つくこともあるのだと君を罵るうさぎの瞳

[14687] 035:禁 八香田 慧（ようかだ　けい） 2005年05月12日 (木) 13時51分
お利口さん何でもかんでも禁止してどこも等しく泥沼になる

[14699] 047:大和 八香田 慧（ようかだ　けい） 2005年05月12日 (木) 13時58分
ヤマトから大和経由で得る歴史無知を育てる教科書が見え

[14713] 068:四 織田香寿子 2005年05月12日 (木) 18時16分
過ぎし日の四月思えば背後より檸檬まるごと契りしごとし　

[14718] 051:泣きぼくろ 仁村瑞紀 2005年05月12日 (木) 20時12分
泣きぼくろをつけたら泣ける？そうしたら可愛い女と笑ってくれる？

[14728] 072:インク 中村悦子 2005年05月12日 (木) 22時48分
夢で濾過されたひかりが窓際のインク壺にひとしずく　朝です

[14739] 042官僚 松山宮崎 2005年05月13日 (金) 07時43分
拘置所の祖父の罪名選挙違反警察官僚が新茶をいれる

[14752] 018:教室 翔子 2005年05月13日 (金) 10時34分
春風がこんなにたくさん溜まるからみんな虚ろな午後の教室

過去ログ７３より

[14364] 048:袖 仁村瑞紀 2005年05月07日 (土) 21時56分
とれかけた袖のボタンを付けなおす 君のこころも留めなおせたら

[14367] 017:陸 篠田　美也 2005年05月07日 (土) 22時37分
美しき娘でありし追憶に陸イグアナは瑠璃、瑠璃、と泣く

14370] 062:風邪 飛永京 2005年05月07日 (土) 23時25分
暑邪（しょじゃ）燥邪（そうじゃ）
風邪（ふうじゃ）寒邪（かんじゃ）
火邪（かじゃ ）厚邪（こうじゃ）
邪神の花見は
なんじゃもんじゃで

[14371] 030:駅 近藤かすみ 2005年05月07日 (土) 23時33分
省線の京橋駅にて母に逢ふ夢にひらきしパラソルの白

[14385] 014：主義 美里和香慧 2005年05月08日 (日) 03時52分
風のよにシュプレヒコール流れてた　主義は幻想みたいに、あの日

[14392] 040おとうと 松山宮崎 2005年05月08日 (日) 07時51分
おとうとの背丈を超えたひまわりはいまびっしりと悪意育む

[14413] 014:主義 市川　周 2005年05月08日 (日) 13時34分
シマウマが縞の値段をつり上げて挙句白馬　ビバ資本主義

[14418] 016:たそがれ ケビン・スタイン 2005年05月08日 (日) 16時40分
たそがれといっしょに愛に包まれて　明日もこんなむらさきがいい

[14436] 045:パズル 野樹かずみ 2005年05月08日 (日) 21時44分
わたしもまた誰かにとって失ったパズルの破片のひとつでしょうか

[14447] 028:母 海神いさな。 2005年05月08日 (日) 23時12分
両足の間の宙(そら)から生まれ来る君とあたしの母性のカタチ

[14449] 096:留守 ベティ 2005年05月08日 (日) 23時13分
幾度なく呼び鈴鳴らす君よ知れ居留守ではなく愛が留守だ、と

[14458] 008:鞄 柴田　瞳 2005年05月09日 (月) 00時17分
鞄ごと抱き締められてそれがもう十六歳の精一杯で

[14492] 023:うさぎ 萩原留衣 2005年05月09日 (月) 12時27分
本当は飼育小屋には抜け穴があってうさぎはときどき月へ

[14507] 065:城 ピッピ 2005年05月09日 (月) 18時02分
「ぼくがやっと城に着いてもピーチ姫は『誰？』って言います。なんで？」（ルイージ）

[14516] 043:馬 五十嵐きよみ 2005年05月09日 (月) 20時26分
わたくしの海馬をいつか震わせる未来の記憶のようなさみしさ

[14521] 040:おとうと 上澄眠 2005年05月09日 (月) 21時16分
菜の花や月は静かにおとうとの選ばなかった道をてらして

[14527] 012:メガホン 渡部光一郎 2005年05月09日 (月) 22時07分
メガホンがあればいいんだ俺の絶叫も絶叫のなかでは無音

[14532] 030:橋 秋月祐一 2005年05月10日 (火) 00時08分
ながいながい橋の途中で「シリウスが好きだ」と言つてぼくをにらんだ

過去ログ７２より

[14162] 053:髪 ピッピ 2005年05月06日 (金) 22時02分
黒髪に鋏を入れるいのちから最も遠い血液ながれる

[14182] 024:チョコレート みにごん 2005年05月06日 (金) 23時12分
チョコレートパフェを完食した後は生きる意味とかどうでもいいし

[14188] 077:櫛 白玉だんご 2005年05月07日 (土) 00時00分
子の髪に櫛滑らせる背後からそっとつむじに手を置いてから

[14195] 083:キャベツ 白玉だんご 2005年05月07日 (土) 00時04分
地平よりフレンチナッツステッチのさみどりが来るキャベツ高原

[14199] 087:計画 白玉だんご 2005年05月07日 (土) 00時05分
計画は倒されるべく立てられるわら半紙上に七月半ば

[14204] 027:液体 佐藤理江 2005年05月07日 (土) 00時16分
健やかなまぶたの下をうるほはす色をもたない液体であれ

[14214] 097:静 白玉だんご 2005年05月07日 (土) 00時40分
送別の宴を終えて十八の彼の足取りふと静かなり

[14220] 061:じゃがいも 斉藤そよ 2005年05月07日 (土) 01時07分
玉手箱あければそこにじゃがいもの花が無限にひろがるでせう

[14225] 066:消 斉藤そよ 2005年05月07日 (土) 01時09分
消えてゆく雪をみているふきのとう無垢なよろこびひきついでいる

[14252] 097:静 はぼき 2005年05月07日 (土) 09時08分
ペンを置き静かに一つ息をつくＥメールではこうはいかない

[14257] 020:楽 桜井龍斗 2005年05月07日 (土) 09時11分
音楽は「音」を「楽しむ」はずなのに　君が縛るの　指で　ピアノで　

[14269] 056：松 津山　類 2005年05月07日 (土) 09時47分
堤防を走るダンプのために切る松一本の手討ちを見たり

[14287] 057:制服 今岡悦子 2005年05月07日 (土) 11時45分
ほとばしる水を治めて制服を今日も着たのか自転車の子は

[14298] 071:次元 あみー 2005年05月07日 (土) 13時36分
突き指の痛さときたら失恋がつらいとかいう次元ではない

[14316] 053:髪 暮夜宴 2005年05月07日 (土) 15時55分
シニヨンに髪結って君かけ出せば春はまるごと微笑むだろう

[14332] 038:横浜 美作直哉 2005年05月07日 (土) 17時43分
湯に浸り汽笛の和音に送られて横浜ゆらり年の瀬を越す

[14350] 008:鞄 百田きりん 2005年05月07日 (土) 20時26分
君がいるよりもうれしいこの部屋に君の鞄がころがっている

過去ログ７１より

[13981] 012:メガホン 紫峯 2005年05月04日 (水) 22時35分
一言も何も言わずに見つめ合う 二人の横に伏せたるメガホン

[13991] 059:十字 飛永京 2005年05月05日 (木) 00時08分
オルガンは葡萄十字を刻まれて終止線のないカノンを奏す

[14005] 046：泥 古内よう子 2005年05月05日 (木) 02時14分
泥棒に入られたような部屋にいる　犯人はたぶんあたしだと思う

[14012] 023:うさぎ 嶋本ユーキ 2005年05月05日 (木) 02時31分
その眼には映せぬほどの哀しみを宿したペットショップのうさぎ

[14018] 057:制服 野良ゆうき 2005年05月05日 (木) 09時12分
制服の男達（おとこ）のつくる長城の上を静かにわたりゆく風

[14030] 068:四 落合朱美 2005年05月05日 (木) 12時00分
かえりみち四月の雨の傘の中君と歩けば花の咲く　咲く

[14039] 060:影 青野ことり 2005年05月05日 (木) 12時58分
影踏みができないほどに日は淡く足の先から透けてきてゐる

[14046] 013:焦 ケビン・スタイン 2005年05月05日 (木) 13時38分
黒焦げのトーストにジャムを塗るみたい　怒ったままのあなたとのキス

[14061] 070:曲 あみー 2005年05月05日 (木) 17時21分
衝撃のあまり脳裏に鳴り響くバッハ作曲「鼻から牛乳」

[14066] 028:母 香乃 2005年05月05日 (木) 20時59分
戻りゆく日が来る時を母は知り娘の布団客間に敷く夜

[14073] 058:剣 ジテンふみお 2005年05月05日 (木) 21時47分
アナログの剣がタンスを貫いて一年を告ぐ形見の時計

[14098] 052:螺旋 もりたともこ 2005年05月05日 (木) 23時34分
子孫など残すべきではないのかもしれぬ螺旋の奥に傷あり

[14102] 093:ナイフ ベティ 2005年05月05日 (木) 23時50分
ナイフより爪が貴方を抉ります　浅い傷には情愛の　毒

[14116] 050:変 原田　町 2005年05月06日 (金) 09時00分
明日もまた変事なきこと信じつつ二合の米を磨いで眠らん

[14127] 094:進 寺川育世 2005年05月06日 (金) 11時35分
茫茫と桃の花咲きこの国に眩暈のやうな行進つづく

[14130] 097:静 寺川育世 2005年05月06日 (金) 11時37分
てのひらがどんどんうすくなる夕べ静脈に銀貨奔りゆくみゆ

[14144] 002:色 魅弥華韻 2005年05月06日 (金) 17時04分
くちびるの色にかさなるくちべにの色のかすかに夕まぐれゆく

[14150] 048:袖 ピッピ 2005年05月06日 (金) 20時33分
インリンのM字開脚袖口に見える少女を誰も知らない

過去ログ７０より

[13771] 099:動 吉野楓子 2005年05月01日 (日) 21時59分
もはやもう流動食も飲み込めぬ父の寝顔のひたすらに優し

[13783] 094:進 麻生智矩 2005年05月02日 (月) 00時04分
進めずにセルから風をときはなつ　船はどこまで流れるだろう

[13805] 018:教室 佐原みつる 2005年05月02日 (月) 19時51分
はつなつの書道教室Ｔシャツの柄は墨汁にて描かれる

[13813] 010:線路 紫峯 2005年05月02日 (月) 21時05分
無人駅暮れて線路は途絶えたる　ただしろじろとホーム残して

[13814] 038:横浜 田丸まひる 2005年05月02日 (月) 21時05分
巻き戻しなんかできない一瞬を観覧車からこぼす横浜

[13818] 040:おとうと きじとら猫 2005年05月02日 (月) 21時28分
無職とは無色のように生きることおとうと達は静かに微笑（わら）う

[13826] 041:迷 みあ 2005年05月02日 (月) 23時28分
おととしの海で迷子のむぎわらぼう まだ「さようなら」言えぬ　さよなら

[13835] 093:ナイフ 林本ひろみ 2005年05月03日 (火) 01時17分
夕闇を銀のナイフで切り開くまだ誰も見ぬ朝が見たくて

[13858] 059:十字 すずめ 2005年05月03日 (火) 14時08分
選択の自由は前後左右だけ飛ぶも潜るもならぬ十字路

[13877] 057:制服 ジテンふみお 2005年05月03日 (火) 20時26分
五月だけ胸のすずらん制服の一部とみなし許可致します

[13909] 040:おとうと やまもとまき 2005年05月03日 (火) 23時47分
おとうとの手を引いて乗る市バスには濡れた魚の匂いが満ちて

[13946] 028:母 内田かおり 2005年05月04日 (水) 09時31分
木漏れ日を浴びて居りしか母の胸のところどころの透明揺るる

はぼきさん １０首選

007:発見
君の掌（て）に傷跡一つ発見しそっと一息吹きかけてみる

017:陸
陸揚げのコンテナの中それぞれに閉じこめられし異国の風よ

022:弓
弓と矢が核弾頭になっただけ今なお続く戦いの日々

046:泥 はぼき
被災地の瓦礫の下にテディベア泥にまみれて持ち主を待つ

062:風邪
早く寝たほうがいいよと風邪声の電話切らせて残るさびしさ

068:四
この丸い地球のどこかその景色四角く切られ絵葉書の中

074:麻酔
現実は足音もなく忍び寄る麻酔が切れていくようにして

080:書
「幸せの足音がした」そう書いた日記のページ破って捨てる

088:食
生きるため食べているのか食べるため生きているのか分からなくなる

097:静
ペンを置き静かに一つ息をつくＥメールではこうはいかない

白玉だんごさん １０首選

007:発見
「し」の文字は裏から見れば「つ」になると大発見を語るおさなご

016:たそがれ
すれ違う自転車われのライト見てライトを点すたそがれの道

018:教室
お教室お道具箱にお絵描き帳幼稚園には敬称あふれ

019:アラビア
裏向きの「し」より始まるアラビア語書けば右手のこぶしに消える

031:盗
盗まれて戻りてまたも盗まれて戻り静かに眠る自転車

032:乾電池
十本にシュリンクされて乾電池放たれるまで眠るレジ横

052:螺旋
螺旋（ねじ）巻けばきしみ伝わり指先を離せば命吹き返す時計

057:制服
二度と着ぬ制服の名の布外す鋏の先に糸絡まりて

077:櫛
子の髪に櫛滑らせる背後からそっとつむじに手を置いてから

087:計画
計画は倒されるべく立てられるわら半紙上に七月半ば