All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

題詠blog2008(071~080)

2008年09月29日 20時55分49秒 | Weblog
071:メール
きみからの離婚知らするEメール旧姓のままの身を湯にひらく

072:緑
異教徒のごときわれなり万緑のひかりの群れに影もちをれば

073:寄
狂ふがに咲くべし寄る辺なきわれの上を一陣の風の逝きたり

074:銀行
満期との知らせもらひし銀行にわれより先に影入りゆけり

075:量
湯に入れば量の分だけ上がりくる水位よわづか5センチの生
  (量=かさ)

076:ジャンプ
バー越ゆる一瞬の弧の美しく立ち去り難く見しハイジャンプ

077:横
本心を解くパスワード8文字のアスタリスクに伏する横文字

078:合図
それは夏の終はりの合図 直線を描きし雨が点描になる

070:児
おのが身をしろき闇へと葬れり蚕児ふたたび生まるるために
  (蚕児=かひこ)

080:Lサイズ
Lサイズの花から萎えてゆく籠に脇役たちは立つ最後まで

題詠blog2008(061~070)

2008年09月29日 20時54分04秒 | Weblog
061:@
地と空にへだたるひとを想ふときキーボードから探せぬ@ 

062:浅
ひがんばな秋まだ浅き狐野へ解き放たれし指に何乞ふ

063:スリッパ
それぞれの道を歩める双生児スリッパひとつこの夏に消ゆ

064:可憐
可愛いですべて事足る平成に死語となりゆく可憐の二文字

065:眩
蝸牛のあとを時間がついてゆくやうな眩しき雨後の手のひら

066:ひとりごと
足元にかぐろき穴を持ちゐたる鞦韆が夜に吐くひとりごと

067:葱
朝礼のごとくならびて葱ばうず五月の風に順序よく揺る

068:踊
風のままに踊れる萩の花群が裡に抱くひとかたまりの闇

069:呼吸
しづかなる器官となりて眠りをり下顎呼吸といふデクレッシェンド

070:籍
籍に意のなくなりし夏 いちまいの婚姻届みづに近づく

題詠blog2008(051~060)

2008年09月29日 20時49分47秒 | Weblog
051:熊
黄に塗られクマのプーとぞ笑はるる熊に眉毛もほほゑみもなし

052:考
「考へる人」と呼ばれて永遠に考へること強ひられし像

053:キヨスク
のどやかなローカル線のキヨスクに単行本といふ時を買ふ

054:笛
老いるとは遡ること おいびとの集へば笛に点呼取らるる

055:乾燥
団栗のまぎれ込みたる乾燥機 響きかろらに秋を回せり

056:悩
夏の陽にうぶ毛光れる悩ましき桃の丸みを陽射しごと剥く

057:パジャマ
うぶすなにわれは子となり母の小言聞きつつ母のパジャマに眠る

058:帽
水たまりの空割りながら帰る子の帽子そろつて太陽の色

059:ごはん
豆ごはん豆が嫌いな子の皿で豆とごはんに分解されぬ

060:郎
惜しみなく愛を奪ひて碑となりし武郎の上に降る蝉しぐれ

題詠blog2008(041~050)

2008年09月29日 20時48分26秒 | Weblog
041:存在
不確かな存在なれどゆつたりと虹は初秋にその脚浸す

042:鱗
みづよりもうすき色した鱗粉を広げて水に蝶の死は浮く

043:宝くじ
仮定形で語られし夢あの日から湿気を帯びてゆく宝くじ

044:鈴
ひとの手の記憶を剥ぎて冬に立つ鈴懸のごとく生き来しきみよ

045:楽譜
いつせいに飛び立つ鳥の音させて体育館に繰らるる楽譜

046:設
あどけなさ残る茶髪の設計士 机上に昭和を解体しゆく

047:ひまわり
ひまはりに悲とルビを打つヒロシマが季語の季節に開くがゆゑに

048:凧
冬ざれの空と綱引きするやうに凧の糸引く父の手に添ふ

049:礼
みどり子に割礼の儀の降りそそぎのち厳かに父の名を受く

050:確率
生死にも確率はあり限りなき分子をのせて回るこの地球(ほし)

題詠blog2008(031~040)

2008年09月29日 20時45分39秒 | Weblog
031:忍
忍の字をゆびさきに持つ心地せり線香花火の玉落つるまで

032:ルージュ
ゆふぐれの裂け目に生れし哀しみの影ぬり込める緋色のルージュ

033:すいか
まどかなる光のなかに受胎せしすいかの蘂の黄の膨らめり

034:岡
あやまちは遠くなりけりそそくさと二岡の坊主頭の伸びて

035:過去
菩提寺のふるき過去帳 夭折の家系の先にあるわれと知る

036:船
小さき身を船に屈めてゴール前水面を渡る風になるひと

037:V
Viagra のみに繋がる夜をかさぬ離婚届を出さざるきみと

038:有
流産歴有に丸つけふたたびを孕まぬやうに入れたるIUD(リング)
(IUDとは避妊の目的で子宮の中に入れる小さな器具のこと)

039:王子
めでたしのその後はいつも語られずたとへば王子の不倫諸々

040:粘
急激に家族の粘度たかくなり街の重力ゆがむ八月

題詠blog2008(021~030)

2008年09月29日 20時44分16秒 | Weblog
021:サッカー
風を追ひサッカー場の空をゆく雲、雲 夢は延長に入る

022:低
いつの世も弱者は小さく群れてをり踝よりも低く咲く花

023:用紙
メモ用紙にうすく残りし筆圧に触るパソコンの反照のなか

024:岸
銀杏の実のごと岸に散らばりて老ら無心に陽を集めゐつ

025:あられ
ひなあられ食みつつ母と一年の闇を包みし薄紙ほどく

026:基
ひと粒のいのち流して下降せし基礎体温のグラフ哀しも

027:消毒
きみゆゑに生れし無数の罅に入る消毒液のやうな月光

028:供
黙ふかく水子供養に訪ふひとの頬を撫でゐる萩の千の手

029:杖
わが知らぬ地名を杖で空に書く老の濁音ゆたかな訛り

030:湯気
ほそき脚たたみて鳥の眠りをり水さへ湯気となる冬の地に

題詠blog2008(011~020)

2008年09月29日 20時42分52秒 | Weblog
011:除
携帯に削除されざるひとのゐて受信トレイの監視つづけぬ

012:ダイヤ
ゆつくりと雨の離るる底辺にダイヤのひかり抱く瑠璃花

013:優
またきみが紫陽花色の嘘をつく優しさゆゑと言ひ訳しつつ

014:泉
噴泉のしぶきは空に弧をえがき影は地表に直線をかく

015:アジア
アジアより渡りくる鳥みづからをしろき墓標と空に捧げて

016:%
五年後の%(生存率)を告げきたる医師の名を見るお悔やみ欄に

017:頭
これは腕これは頭蓋といひながらああ手から手へ悲しみ渡す

018:集
遺歌集は現在形でつづられて行間にけふも秋の雨降る

019:豆腐
一丁の豆腐の含む水ありておのがおもさに潰れゆきたり

020:鳩
悲しくも問ふ口をもつわれのうへこゑのみに鳩は愛を交はせり

題詠blog2008(001~010)

2008年09月29日 20時38分27秒 | Weblog
001:おはよう
おはやうはintroduction 否、家へ帰るきみとのconclusion

002:次
お下がりの服しか着れぬ次女のやう既婚のひとを愛する日々は

003:理由
古書店に色褪せながら『愛される理由』が次の持ち主を待つ
(『愛される理由』二谷友里恵の著書)

004:塩
生命をはぐくむこともゆるされぬ子宮しづかなしづかな塩湖

005:放
本心を放てぬわれに無花果はみづからあかき胸ひらきをり

006:ドラマ
午後四時の再放送のドラマならわれも主役になれるだらうか

007:壁
壁紙に設定されしさくらばな久遠の空に散りつづけたり

008:守
「妻」といふ名に守られて前列に咲く花々よ陰など知らず

009:会話
感情のままに五文字を送りつけ真夜のこゑなき会話打ち切る

010:蝶
なつみかん滴のやうに蝶を生み蝶々は風のやうに夏生む