All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

はぼきさん 10首選

2005年05月10日 18時55分01秒 | 10首選
007:発見
君の掌(て)に傷跡一つ発見しそっと一息吹きかけてみる

017:陸
陸揚げのコンテナの中それぞれに閉じこめられし異国の風よ

022:弓
弓と矢が核弾頭になっただけ今なお続く戦いの日々

046:泥 はぼき
被災地の瓦礫の下にテディベア泥にまみれて持ち主を待つ

062:風邪
早く寝たほうがいいよと風邪声の電話切らせて残るさびしさ

068:四
この丸い地球のどこかその景色四角く切られ絵葉書の中

074:麻酔
現実は足音もなく忍び寄る麻酔が切れていくようにして

080:書
「幸せの足音がした」そう書いた日記のページ破って捨てる

088:食
生きるため食べているのか食べるため生きているのか分からなくなる

097:静
ペンを置き静かに一つ息をつくEメールではこうはいかない


白玉だんごさん 10首選

2005年05月10日 18時54分31秒 | 10首選
007:発見
「し」の文字は裏から見れば「つ」になると大発見を語るおさなご

016:たそがれ
すれ違う自転車われのライト見てライトを点すたそがれの道

018:教室
お教室お道具箱にお絵描き帳幼稚園には敬称あふれ

019:アラビア
裏向きの「し」より始まるアラビア語書けば右手のこぶしに消える

031:盗
盗まれて戻りてまたも盗まれて戻り静かに眠る自転車

032:乾電池
十本にシュリンクされて乾電池放たれるまで眠るレジ横

052:螺旋
螺旋(ねじ)巻けばきしみ伝わり指先を離せば命吹き返す時計

057:制服
二度と着ぬ制服の名の布外す鋏の先に糸絡まりて

077:櫛
子の髪に櫛滑らせる背後からそっとつむじに手を置いてから

087:計画
計画は倒されるべく立てられるわら半紙上に七月半ば

寺川育世さん 10首選

2005年05月10日 18時54分06秒 | 10首選
004:淡
音のなき雷鳴る夜更け性愛の淡さもあああ春彼岸まで

010:線路
雨やみて線路と線路交叉せる地点より白く夏は立ちたり

016:たそがれ
菜の花もカンカン橋も夕闇に融けゆく君も僕もたそがれ

032:乾電池
乾電池の両極に指当つるとき水のからだの閃光したり

041:迷
月光に裸身隈なく輝らされて迷ひ少なき君をかなしむ

046:泥
後悔は泥酔の道のそちこちに落ちてゐてひとつ拾へば椿

048:袖
本日の運転は君 七分袖シャツより伸びる腕は夏へと

067:スーツ
桜花スーツケースに詰めるだけ詰めて一日(ひとひ)の労働とする

086:占
転生は無いものとして仰ぐときただ一色に占めらるる空

098:未来
カーテンに砂塵まみれの身を包む水より透き未来は無きか

林本ひろみさん 10首選

2005年05月10日 18時53分40秒 | 10首選
003:つぼみ
行く人の頭上に高く銀色のつぼみのかたち明け方の月

005:サラダ
すれ違う心をそっとまぜ合わすサラダボウルの緑の濃淡

013:焦
焦燥を感じるほども若くなく過ぎ行く人の背中見送る

019:アラビア
水槽にアラビア文字を書き綴る巻貝たちのいつもの伝言

021:うたた寝
うたた寝の私の背中を這って行く亀には私が何に見えてる

061:じゃがいも
ソラニンで死んでしまえるはずもなくじゃがいもの芽を穿つ真夜中

077:櫛
櫛の目の土器を残した人たちが暮らした同じこの星に住む

083:キャベツ
ハムスターキャベツの葉っぱつかまえる薄桃色のけなげな前足

091:暖
暖かな庭先に咲くオキザリス桃色の花抱きとめる春

093:ナイフ
夕闇を銀のナイフで切り開くまだ誰も見ぬ朝が見たくて


吉野楓子さん 10首選

2005年05月10日 18時53分07秒 | 10首選
006時
引き出しの隅でカチカチ動いてるアナログの恋みどりの時計

008鞄
くたびれた往診鞄はグランパのようなやさしさ満タンにして

027:液体
三態の気体・液体・固体から選ぶふたりという物体は何?

030:橋
ほたる橋ふたりで渡るやくそくを秘めて夕餉の菜をきざむ母

031:盗
早(は)よう来てうちもあんたば好いとうけん盗んでほしかぁ・・・ついて行くけん

039:紫
あすもまたみやこわすれの紫のうきにたへたる佐渡の順徳院(じゅんとく)

045:パズル
ひとつずつ花のこぼれをひらふごとパズルをあはす思ひ出ごっこ

081:洗濯
股下と胴回りとは比例せぬGパン二本洗濯し干す

092:届
母子手帳こわごわ貰う今度こそ無事に育てと妊娠届

099:動
もはやもう流動食も飲み込めぬ父の寝顔のひたすらに優し

りりさん 10首選

2005年05月10日 18時43分50秒 | 10首選
004淡 りり
淡い夢シャボンのようにはじけたの虹のきらめき捕まえられず

014:主義
怠惰なる事なかれ主義海の藻にゆらりと揺れる海の熱帯魚

018:教室
陽が翳る教室の席カーテンが揺れてミルクの香り漂う

026:蜘蛛
しましまのおしりの痣が女郎蜘蛛アタシの印よ知ってるの?

032:乾電池
ちからなく乾電池切れ残された処理をどうする迷うところよ

047:大和
軽そうに見えてもそこはカタイのよ大和撫子風に吹かれて

064:科学
子宮がね拒んだみたいあなたの子科学じゃないの魂のレベルで

076:リズム
太古から月のリズムに踊らされ満ちては欠け満ちては欠け

093:ナイフ
朝日裂くそのナイフでこの時を止めてくれぬか今日が始まる

097:静
一瞬のざわめき静まるホラ今ね天使が通ったからなんだよ

廣西昌也さん 10首選

2005年05月10日 18時34分25秒 | 10首選
001:声
Shadeにて皺を添えゆく中年の一子の声を誰も知らない

007:発見
営みは暗闇のなかお互いの発見という十月十日

014:主義
チクロ入り菓子を毎日食べていた共産主義に華ありし頃

018:教室
教室にひとつ机が足りないと言えないままに過ぎた六年

032:乾電池
乾電池抜いた空虚に指を入れ一子とつながらないか待ってる

035:禁
ゆうぐれの紫禁城から半月がぶらさげられているのが見える

046:泥
泥濘のなかに小さな虫がいて誰かを待っているような春

060:影
かの国の一子にとって影として僕は存在するのだろうか

092:届
一子からむらさき色の便せんに忘れなさいと手紙が届く

093:ナイフ
奥ふかいかなしみを持ち見るときに月は鋭いナイフみたいだ

冬野由布さん 10首選

2005年05月10日 18時16分20秒 | 10首選
014 主義
告げ口はしない主義だがここだけの話ばかりが集まってくる

021 うたた寝
うたた寝のあなたの顔が如月の日差しの中に溶け込みそうだ

028 母
年経るに連れて母は我のこと生まなかったといいてやまざり

048 袖
ない袖は振れぬが気持ちはあるわけで 募金箱に五円を入れる

058 剣
剣よりもペンは強いが核弾道ミサイルにまで勝つとは思わぬ

063 鬼
鬼胡桃秋のプールに浮かびをり背泳できぬ我を眺めて

070 曲
曲がらないきゅうりはどうしてできるのか結婚十七年目の会話

080 書
書の墨をゆっくりとする今のこと今までのこと棚上げにして

086 占
昨日今日携帯占い依存症結局何も言い出せず居り

093 ナイフ
沈黙といふナイフをば突きつけて男は寝間へ行きてしまへり

西中眞二郎さん 10首選

2005年05月10日 18時05分45秒 | 10首選
008鞄
聞き馴れし目覚しの音聞こえ来る小さな旅の鞄の中で

018教室
馴染みたる新教室も壊されて母校はすべて過去となりたり

022弓
弓抱え午後の電車に乗りて来し女子高生の眉の凛々しき

039紫
晴れて暑き六月の朝道に咲く紫陽花の花造り物めく

050変
夏掛けを毛布に変えた涼しさに小さくなって妻が寝ている

060影
花びらを浮かべ流れる瀬戸川に白き土蔵の影揺れている

063鬼
孫が来て見入るテレビに付き合えば百鬼夜行のこれぞポケモン

069花束
この角で死したる人のありたるか花束夜の風に吹かれる

079ぬいぐるみ
孫が来て忘れて行きしぬいぐるみ抱けば微かに土の香りす

095翼
輪を描き鳶は真昼の空にありて翼のほかの形(かたち)は見せず

谷口純子さん 10首選

2005年05月10日 17時55分37秒 | 10首選
01:声
鳴き声が人語に変わるすれすれで対決しおり黒猫白猫

010:線路
線路には線路猫ありさびさびとレールの色の身体ゆすりて

016:たそがれ
たそがれの高層の窓ひとつづつ黒猫の眼のあかりが灯る

028:母
掃除機のノズル換えたり窓枠に雲母のような猫の爪落つ

034:背中
腹と背中やすやすとくねりいれかわるこの軟体に骨ある不思議

039:紫
紫の頭巾を今宵縫いましょう人間ならば百歳の猫

065:城
天空の城にふたたび猫といるおまえ一匹がわたしの猫よ

072:インク
筆圧のかげん絶妙なインク文字この人の賀状われの宝ぞ

087:計画
猫犬合体計画犬反対多数猫はいつまでも無回答

091:暖
温暖化すすめる地球すこしづつ猫の背筋がファスナーにかわる