All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

題詠blog2008(091~100)

2008年10月03日 20時15分09秒 | Weblog
091:渇
地におちてなほうち伏せぬ夏つばき空にいかなる渇望やある

092:生い立ち
生ひ立ちを低く語ればゆつくりとわが血に翳る父とふ過去世

093:周
円周率しらざる半弧やはらかにそのなな色を風に溶きたり

094:沈黙
一杯のみづにも重さあるものを沈黙のうちに墓の背を拭く

095:しっぽ
尾をしきり振りつつ低く唸りをりしつぽで笑ふと詠まれし犬が

096:複
複眼のひとつひとつにこの秋をやきつけて逝けとんぼもひとも

097:訴
頭を垂れてみづから死へと近づける薔薇の反意語なのか愁訴は

098:地下
咳払ひのこして父の留守電は切れたり孤独あふるる地下に

099:勇
誤植されし勇を舅となほすときわが歌に強き夏の陽の生る

100:おやすみ
おやすみはintroduction 初夏の椿のやうな夢をみごもる

題詠blog2008(081~090)

2008年10月03日 20時13分55秒 | Weblog
081:嵐
淡紅をかさねてさくら花嵐さんさんろくぱふみずに引くなり

082:研
色のなき花野のやうな癌研にわれよりわれを知る医師が笑む

083:名古屋
菓子問屋街へみちびく春の風ふるき名古屋の形に折れつつ

084:球
球体が蝕しあふ夜の底にゐて同心円のなき身かなしぶ

085:うがい
羊水に鎖されて孤独なる魚を放たな朝のうがひの水に

086:恵
ミルクより高価な水を売る国が恵まれぬ子への愛を募れり

087:天使
公園で生殖器よりみづ垂るる小僧の天使とまがふ風采

088:錯
降りながら死んでゆく雪てのひらに錯覚は透き骸となりぬ

089:減
口減らしの子は母さんと帰れないけふはどの子が逝くとおりやんせ

090:メダル
メダルなき北京の罪を背負ふがにうなだれ帰り来し牡馬の群れ