All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

過去ログ12より

2005年03月18日 18時10分20秒 | 題詠マラソン感想
[2193] 001:声 たなかたかと 2005年03月03日 (木) 15時22分
雨垂れの落ちる速さに比例して捨て猫の声の細くなる暮れ

泣いてしまいそうです。
ここは比例ではなく反比例の方がいいんじゃないかな・・と思いつつ。

[2201] 006:時 黒田康之 2005年03月03日 (木) 15時26分
この街に今いる人の時計みな全て等しく十二時を指す

あたり前のことなんですが、こうして改めて目にすると
恐怖感すら感じてしまいます。

[2222] 004:淡 舟橋剛二 2005年03月03日 (木) 17時17分
淡雪の淡という字の激しさよせめてこの火のひかりを君に

そう言われれば、淡いって意味とは正反対の「火」がふたつも
入っていますよね。
何度となく見て、書いてるはずなのに。

[2225] 007:発見 舟橋剛二 2005年03月03日 (木) 17時20分
死後七日発見されずいた人のその七日間ほどの永遠

七日という具体的な日数のリフレイン。
このくり返しによって、主人公の物悲しさが増幅されるようです。

[2256] 002:色 新藤伊織 2005年03月03日 (木) 18時36分
名前など関係なくてあなたから見える私は何色ですか

名前というのはある意味、冠詞ですものね。
それを取り外した時、相手の目に映るものは・・・・。

[2267] 036:探偵 謎野髭男 2005年03月03日 (木) 18時46分
店の名は名探偵と聞こえたり牛タン食わす名舌亭よ

だじゃれのような短歌は必ずや出てくると思っていましたが、
まさかここに出てくるとは。

[2318] 003:つぼみ 暮夜宴 2005年03月03日 (木) 20時52分
過ぎし春つぼみのままの君を折り僕のポッケにねじ込んだ罪

どんな罪なのか想像させられます。
青い春は切ないですね。

[2323] 009:眠 穴井苑子 2005年03月03日 (木) 20時57分
眠れない夜がないので見てみたい番組をまた見のがしている

眠れない夜はよく題材に使われますが、眠れない夜がないからと
くると新鮮でおもしろいですね~。

[2335] 003:つぼみ 冨樫由美子 2005年03月03日 (木) 21時23分
〈四月〉から手紙が届くツメクサのつぼみのやうな字で綴られた

ツメクサのつぼみのような字が春を感じさせます。

[2354] 012:メガホン 貿易風 2005年03月03日 (木) 21時46分
鼻の下メガホンの跡一の字にいけいけいけの声すでに消ゆ

おもしろいです。
ただメガホンの跡の方に視点を置いたほうがもっとおもしろく
なるのでは?

[2369] 006:時 ケビン・スタイン 2005年03月03日 (木) 22時14分
ジェラシーは人にするんじゃないんだね 未知なる時がこんなに苦い

口語ですが作者の深い葛藤を感じます。

[2375] 006:時 尾崎弘子 2005年03月03日 (木) 22時21分
いまわたし春時間ですからすこし削ります夏も秋も冬も

春眠暁を覚えず・・・・ですから(笑
それ自体を詠むのではなく、他の季節を削ると表現する。
しっかりとご自分の味を出された歌にされていると思います。

[2388] 012:メガホン  中村悦子 2005年03月03日 (木) 22時47分
不等号記号のようなメガホンでたまには叫ぶ「愛してますかっ!?」

たしかにメガホンは不等号記号ですよね。
「愛してますかっ!?」が利いてます。

過去ログ11より

2005年03月18日 17時50分48秒 | 題詠マラソン感想
[2001] 091:暖 谷口純子 2005年03月03日 (木) 01時52分
温暖化すすめる地球すこしづつ猫の背筋がファスナーにかわる

温暖化に合わせて、猫も進化する・・・のかも。

[2016] 003:つぼみ 古内よう子 2005年03月03日 (木) 02時22分
咲く前のつぼみがいいのでしばらくはそっと見守っていてください

難しい言葉はひとつも使われていませんが、妙に心がひかれます。
あせらないで、あせらないで、自然に開くまで待って・・・・と
語りかけてくるようです。

[2039] 001:声 マツムラ 2005年03月03日 (木) 08時43分
「教室ってこんなに声が響くんだ」 「ね」 卒業式の日直ふたり

卒業式の朝か夕方かは分かりませんが、卒業式の寂しさ、教室がこんなに
広かったこと、声が響くこと・・・いろいろなことを改めて知る。
それは卒業式だから気づいたことなのでしょう。
日直の2人の淡々とした会話。
会話がまた生きています。

[2084] 008鞄 吉野楓子 2005年03月03日 (木) 11時48分
くたびれた往診鞄はグランパのようなやさしさ満タンにして

昔の町医者は往診してくれましたよね。
私が通っていた町医者にもおじいちゃん先生がいました。
病気とはまったく関係ない話をいっぱいしてくれるので、行くのが
とても楽しみだったのを覚えています。
そんな先生のやさしさがいっぱい詰まっている往診鞄。
実にやさしい夕焼けのような短歌だと思います。

[2097] 011:都 田貫 砧 2005年03月03日 (木) 12時03分
東京都千代田区永田一丁目空にそびえる黒金の城

思わず、マジンガーZを歌いたくなりました。
住所を詠み込んでくる短歌の登場は予想していましたが、まさか
永田町を詠み込んでくるとは。
脱帽です。

[2106] 014:主義 田貫 砧 2005年03月03日 (木) 12時16分
民主主義を謳うも実は独裁制 あの国だけじゃないような気が…

あの国だけじゃないですよね。

[2113] 003:つぼみ てん 2005年03月03日 (木) 12時35分
植物園一巡りして九千と十七歩未だつぼみの桜

数字を詠み込んだ歌もたくさんありますが、九千と十七歩がこの短歌を
生き生きとしたものにしています。
若々しく春を待つ気持ちが溢れていると思いました。

[2132] 017:陸 クロネコ 2005年03月03日 (木) 12時59分
海越えた あの大陸の 真ん中へ 会いに行きたい でも暇がない

ありがちな起承転。
でも結でやられました。

[2150] 005:サラダ もりたともこ 2005年03月03日 (木) 13時44分
無農薬野菜を使ったサラダです ドレッシングは?水は?空気は?

安易に「」を使うのは好きではありませんが、この場合「無農薬野菜を
使ったサラダです」とし、自分以外のものの発言であることを示した方が
さらによくなるのではないでしょうか。

[2166] 011:都 風花 2005年03月03日 (木) 14時19分
雲間より光の帯は伸びて行きアトランティスの都を照らす

壮大です。
伝説の島が目に浮かぶようです。

[2175] 027:液体 春畑 茜 2005年03月03日 (木) 14時28分
液体のうえにさらなる液体を注ぐ時間を宴と呼べる

ありふれたたったひとつの事を自分なりの視点で短歌に仕上げる。
丁寧に物事を観察していないとこのような歌は詠めないと思います。

[2179] 031:盗 春畑 茜 2005年03月03日 (木) 14時35分
盗まれてしまいし傘の向日葵よ今宵いずくの雨にひらける

距離感、時間的経過を違和感なく感じます。
色彩的にも雨と向日葵が対比するようで美しいです。

[2190] 004:淡 あみー 2005年03月03日 (木) 15時06分
淡白な文面なのにひしひしと愛を感じているぜ(勝手に)

(勝手に)にやられました。
ここは()がなければ、これほどまでおもしろいものには
ならなかったでしょうね。



「題詠マラソン2005」 (026~030)

2005年03月18日 16時29分07秒 | 題詠マラソン
026:蜘蛛
鬼蜘蛛に捕えられたる蜆蝶 わたしもきつく巻かれてみたい


027:液体
晒しても晒してもなお春愁は液体として裡にとどまる


028:母
女から母へと変わる同性の眩しさ 夏の逆光のごと


029:ならずもの
ならずもの「なら」は寂しき未然形 未来・推量・否定のかたち


030:橋
この橋を越せば東京ぎざぎざのskylineがまがなしく燃ゆ

過去ログ10より

2005年03月18日 16時21分13秒 | 題詠マラソン感想
[1788] 001:声 新谷休呆 2005年03月02日 (水) 20時34分
眼差しとその声だけで恋をした歯科治療台歯磨き指導

歯医者さんって大きなマスクをしていることが多いですよね。
歯科医に対する信頼、安堵の気持ちを恋に例える。
その場限りだけかも知れないけど、優しい先生に恋をしたかわいらしい
気持ちが伝わってきます。
前半の柔らかさと後半の漢字ばかりの固さの対比もおもしろいです。

[1805] 005:サラダ 穴井苑子 2005年03月02日 (水) 20時55分
マカロニがその9割を占めてても今日もサラダと呼ばれています

同感。
なぜマカロニをサラダと呼ぶんでしょう。

[1819] 003:つぼみ ケビン・スタイン 2005年03月02日 (水) 21時26分
ポケットに突っ込んでいるこのこぶし つぼみのように開くのを待ち

なにかに耐えてこぶしを握り締めているのでしょうか。
その何らかの感情が解決されて、開くのを待っている。
かわいらしいものの代名詞のように使われるつぼみが、ここではとても
力強いものに感じました。

[1831] 087:計画 谷口純子 2005年03月02日 (水) 21時37分
猫犬合体計画犬反対多数猫はいつまでも無回答

いやいやいやいや・・・・。
犬と猫の性格をよく表していて、最高に笑ってしまいました。

[1847] 001:声 あや 2005年03月02日 (水) 21時59分
声たかく「謝謝」と言われて乗車するロンドンバスにわれ中国人

謝謝と言ったのはどなたなのでしょう。
乗客?運転手?
私の素朴な疑問は置いておいて・・・
日本人も中国人も同じアジア人。
謝謝といわれて戸惑うのではなく、溶け込んで旅行を楽しむ。
そんな楽しさが溢れていると思いました。

[1856] 001:声 やまもとまき 2005年03月02日 (水) 22時22分
故なしに子をどつきし日 声もなくうなだれて待つ夫の帰りを

「故なし」が悲しみを増幅させています。
殴るでも叩くでもなく「どつく」。
このどつくに母の行き場のないやり切れなさを感じました。

[1860] 001:声 鈴木貴彰 2005年03月02日 (水) 22時25分
チャッくんの声が聞こえた ゴンドラに耳石の揺れを感じていたら

チャッくんとは誰なのか。
分からないままにチャッくんと僕の世界に入り込んでしまいます。
まるで知っているかのような錯覚に陥ります。
この不思議な世界にひかれてやまないのはなぜなのでしょうか。
なんらかのノスタルジーが揺さぶられるからでしょうか。

[1862] 003:つぼみ 鈴木貴彰 2005年03月02日 (水) 22時26分
アサガオのつぼみをかじる むらさきにくちびる染めて受ける夕風

意図的にされているのか、にじみ出るものなのかは分かりませんが
鈴木さんの短歌にはどこかに置いてきてしまった郷愁というか、
もう帰れない世界への物悲しさが漂っていると思います。
同じ言葉を使っているわけではないのに、リフレインされているような
印象を受けます。
それがさらに物悲しさを呼ぶのでしょうか。

[1866] 007:発見 鈴木貴彰 2005年03月02日 (水) 22時27分
あっけなく発見された チャッくんとぼくが隠した家出資金も

鈴木さんの短歌には2句切れ、3句切れが多いです。
普通は同じような短歌が並ぶと読み手は飽きてしまうのですが、
それすらもリフレイン効果になっているような気がします。
先の分からない物語を読んでいるような・・・そうひとつの小説に
なっているんですね。
しっかりチャッくんファンになってしまった私でした。

[1899] 001:声(再投稿) 貿易風 2005年03月02日 (水) 22時46分
裏返る声がせかせる 22:30(じゅうじはん)勝負ネクタイ固く小さく

「裏返る」がよく分からないのですが、4句5句の「勝負ネクタイ
固く小さく」でいただいてしまいました。
何への勝負なのでしょうね。
気になります。

[1926] 010:線路 岩波ラスミチ 2005年03月02日 (水) 23時28分
ぼくは今、とぎれた線路、そのむこう。姿みえないきみに手をふる。

自分をとぎれた線路と言い放つその潔さ。
悲しいとか寂しいとか一言も入っていないのに、寂寥感を抱いてしまいます。

[1935] 005:サラダ のぶれば 2005年03月02日 (水) 23時31分
キャベツなきサラダを父は認めずも冷蔵庫から出すマヨネーズ

お父さんの哀愁がかわいらしいです。
お母さんには勝てないのでしょうか。

[1953] 001:声 五十嵐きよみ 2005年03月02日 (水) 23時49分
おなじ名の知らない少女を呼ぶ声にふりむくたそがれどきの渋谷に

私は4・4で割れる8文字があまり好きじゃないのですが、この歌は
それがあまり気になりませんでした。
これで5句までが4・4あるいは4・3だったらべったりとしたものに
なっていたでしょう。
逆に2句を「知らぬ少女を」と7文字にすると固くなってしまうかも
知れません。
字余りがたそがれ時を演出しているように思えます。

[1959] 006:時 久哲 2005年03月02日 (水) 23時58分
許される時間を越えた英雄に踏まれてみたいアンヌ隊員

作品としてはまだまだ推敲できるところもあると思います。
でも・・・・アンヌ隊員が実に利いています。
しかも「踏まれてみたい」とは。
ここが具体ではなかったら、アンヌ隊員ではなかったら、この短歌は
成功しなかったかも知れませんね。

過去ログ9より

2005年03月18日 15時43分46秒 | 題詠マラソン感想
1621] 008鞄 西中眞二郎 2005年03月02日 (水) 17時13分
聞き馴れし目覚しの音聞こえ来る小さな旅の鞄の中で

愛用の目覚まし時計も一緒の旅。
いつもより早起きして出かけたのでしょうか?
楽しいような、つい日常を思い出してしまうような。
作者はどちらの感情を持ったのでしょうね。

[1755] 019:アラビア 謎野髭男 2005年03月02日 (水) 19時11分
アラビアのロレンスなるは虚像たり問わるは歴史誰の目で見ん

主張が心に響いてきました。
歴史を自分の目で見ていきたいと思います。

[1772] 004:淡 有田里絵 2005年03月02日 (水) 19時45分
淡白な君に会う日はそれとなく自己主張してディオールの赤

ディオールなんですね、シャネルでもサンローランでもなく。
私ならここをシャネルのNo.5としてしまいそうです(笑
ディオールの赤という具体がぴりりと利いていますね。

[1782] 004:淡 黒田 康之 2005年03月02日 (水) 20時25分
今日からは青い背びれの淡水魚行き場のなさをさらして生きる

不思議な魅力があります。
唐突な比喩。
それがまた黒田さんの短歌の雰囲気となっています。
物悲しいというか、自虐的というか、そのすべてがうまくバランスを
とって独自の世界になっているのでしょうね。

過去ログ8より

2005年03月18日 15時31分50秒 | 題詠マラソン感想
[1399] 089:巻 斉藤真伸 2005年03月02日 (水) 00時59分
巻き爪の恐怖を説きてチョビ髭の外科医はカルテを一枚めくる

患者が巻き爪なのか、外科医が巻き爪なのか。
いずれにしても怖いはずなのに楽しく読めてしまいます。
結句のさりげなさもいいですね。

[1408] 096:留守 斉藤真伸 2005年03月02日 (水) 01時29分
留守電のランプはひかる懐かしきわが友のこえ一つ抱きて

「わが」はあえて入れなくてもいいのでは・・・とも思いましたが、
何気ない生活の中の一コマがうまく表現されています。

[1418] 002:色 あみー 2005年03月02日 (水) 03時57分
色々なことがあっても変わらずに笑ってくれてほんとありがと

物事をちゃんと観察しているか
言葉をぞんざいに扱わず、丁寧に詠んでいるか
地味でも短歌が完成されているか
視点に自分らしさがあるか
読み手に想像させる部分があるか
思いが素直に伝わってくるか
このどれかに当てはまらないと短歌に魅力を感じません。
この短歌は軽い口語、しかも会話調です。
でも本当に本当に作者の素直な気持ちそのままが表れていると思います。
なんだか胸がいっぱいになってしまいました。

[1436] o19:アラビア 船坂圭之介 2005年03月02日 (水) 08時16分
むらさきの昂みに天狼星を措きアラビアはいま「死に体」にあり

船坂さんの歌は全部選んでしまいそうなので、特に好きな作品だけを載せます。
歌についてはもう十分に他の方が感想を述べられていらっしゃいます。
同感です。
「死に体」が実に生きています。

[1446] 025:泳 船坂圭之介 2005年03月02日 (水) 09時26分
一過せる雨のすずしく 虚言癖持つ児ら嬉々と泳ぐはつ夏

読み上げた時の調べ、字面、文句なしです。

[1457] 028:母 船坂圭之介 2005年03月02日 (水) 09時53分
青鞜派否みし亡母(はは)がいらくさの中に墓標を揺らす七夕

船坂さんの作品はどれも助詞の使い方が抜群です。
非常に推敲されていると思います。
動詞よりも助動詞の使い方は難しい。
私はさらに助詞の使い方は難しいと思っています。
見習うべきことです。

[1474] 005:サラダ   さよこ 2005年03月02日 (水) 10時39分
風邪に病むのみどにやさしツルリンとすべりゆきたりマカロニサラダ

かわいいです。
風邪で痛むのどにつるりと入るマカロニサラダ。
何かの比喩にも受け取れて、実にいいです。

[1533] 012:メガホン 春畑 茜 2005年03月02日 (水) 14時21分
メガホンは水色がよく春の日のわが昂りにてのひらを打つ

水色のメガホン、これはご贔屓のチームカラーなのでしょうか。
それとも比喩か。
いずれにしても爽やかです。
しかし、爽やかだけに終わらないところが春畑さんの短歌の味になって
いるのだと思います。

[1538] 015:友 春畑 茜 2005年03月02日 (水) 14時24分
友好のために上野を出でゆけぬパンダ真昼を笹食むばかり

日中友好の象徴のパンダ。
それをパンダの悲哀として詠む。
笹のやけ食いでしょうか(笑

[1584] 035:禁 船坂圭之介 2005年03月02日 (水) 15時33分
結い上げし髪を誰(た)がため崩すかは知らず薄明どきの禁欲

ともすれば古くさくなってしまうような言葉。
それが逆になまめかしさをかもし出しています。
口先だけではなく、作者のの人生という根底があるからこそ
より深いものとして感じられるのでしょうね。

過去ログ7より

2005年03月18日 13時23分52秒 | 題詠マラソン感想
[1209] 001:声 久哲 2005年03月01日 (火) 21時19分
聞きなれた声につまずく 恥骨から痛み出すのが春と言うこと

よく意味は分からないのですがなんだかひかれました(笑

[1233] 008:鞄 みやちせつこ 2005年03月01日 (火) 21時41分
新しき鞄を左の手に持ちて右手で空を押し上げてみる

前向きな姿勢。
清涼感。
「右手で空を押し上げてみる」が抜群ですね。

[1237] 001:声 暮夜宴 2005年03月01日 (火) 21時42分
溢れ出る想いを声に出来ぬ子の切なき祈り深夜に軋む

本当に本当に切なさが伝わってきます。
この子の祈りが天に届きますように・・・・。

1257] 004:淡 kitten 2005年03月01日 (火) 21時54分
『あなたってボギーみたいなこと言ってやることは淡白なのね、つんつん』

すべてが『』の中。
しかも、つんつん。
かわいいです。

[1266] 003 : つぼみ K.Aiko 2005年03月01日 (火) 22時13分
無人駅 月の光を吸いながら ひとつふたつと生まれるつぼみ

私は基本的にスペースを多用した短歌はあまり好きではないのですが、
これは逆にスペースのおかげでゆったりとした時間経過を感じました。
つぼみが本当のつぼみなのか、無人駅にぽつぽつと降りる人間の比喩
なのかは分かりません。
でも、無人駅の荒涼とした中の生の息吹がとても幻想的に描かれています。

[1304] 064:科学 斉藤真伸 2005年03月01日 (火) 22時51分
ビニールのヒモに括られ店先に「科学朝日」は黄ばみつづける

科学朝日が売れてないってことでしょうか。
たそがれを感じます(笑
新品のまま黄ばみ続けるのは悲しいことですね。

[1346] 014:正義 船坂圭之介 2005年03月01日 (火) 23時25分
氷雨いま撫で切りにせり若干の錯誤にまどふ主義のもつれを

主義はなかなかみなさん苦労されているようですが、まるで題詠であると
いうことを感じさせない迫力があります。

[1354] 016:たそがれ 船坂圭之介 2005年03月01日 (火) 23時32分
空はしる雲たそがれを消すまでのひととき吾に在るは既視感

既視感またはデジャブはよく使われる言葉です。
その言葉の持つ雰囲気だけで作られた歌が多い中、この短歌は実に
くっきりとした輪郭と内容を感じます。
たそがれは確かに何らかの既視感を持つことが多いです。
何の既視感かを読み手に想像させているところ、すべて言ってしまわなかった
ところもこの短歌を深いものにしている要因だと思います。

[1382] 001:声 づら 2005年03月02日 (水) 00時24分
全身がスパンコールの将軍がサンバを歌う声で目覚める

季節の流行物を詠む。
松平健は多くの人が詠んでいることでしょう。
それをいかに類型のないように、自分だけの視点から詠むか。
この短歌には松平健やマツケンサンバという言葉は出てきません。
でも誰にもこれが松平健を指していると分かります。
しかも、松平健を詠むかと見せかけておいて、「声で目覚める」と一転自分の
方に視線を向けさせます。
目覚めがよかったか悪かったかは置いておいて・・・・(笑
耳障りのいい言葉はひとつも使われていません。
他の歌の中に入ると読み流されてしまうかも知れません。
流行物を自分の言葉で詠んでみるという姿勢にひかれました。

過去ログ6より

2005年03月18日 13時04分55秒 | 題詠マラソン感想
[1001] 002:色 島菜穂子 2005年03月01日 (火) 13時49分
わたくしを引き裂いたあとに流れ込む新しき空の色を覚えよ

強烈なインパクトとして残りました。
みなさんが選ばれているのも納得です。

[1027] 006:時 武田ますみ 2005年03月01日 (火) 15時38分
後悔をしているわけじゃないけれど数多のifを経てゆらぐ時間(とき)

リズム感が抜群にいいです。
人生は数多のifの繰り返し。
後半重くなるかも知れないこの短歌を前半の軽い口語が救っています。

[1034] 010:線路 武田ますみ 2005年03月01日 (火) 15時41分
線路のない廃線の駅ひたひたと昭和という名の亡霊が来る

私の住んでいる町にも廃線があります。
駅も線路も残っていませんが、線路だったらしき土手は残っています。
そこは昭和38年に閉鎖されたそうです。
線路は単なる象徴。
遠く過ぎ去っていく昭和。
深い短歌です。

[1053] 002:色 春畑 茜 2005年03月01日 (火) 16時25分
眼のなかに春はしずかにひらき出す印度孔雀の羽色をして

目の前に春が開くのではなく、眼の中にしずかに開き出す。
詠み方によっては平凡な短歌になってしまうところを、
印度孔雀がしめています。
色彩感あふれるまさに初春のような短歌だと思いました。

1069] 019:アラビア 斉藤真伸 2005年03月01日 (火) 16時32分
虚偽ひとつ封をし終えて卓上のアラビア糊は寝静まるかな

アラビアのお題が出た時、広辞苑でアラビアを調べました。
アラビア糊、ありました。
そのアラビア糊を主人公にし、まるでひとつのドラマを見たような
感覚に陥りました。
アラビアという言葉の持つ雰囲気なのでしょうか。
ここは単なる「糊」では歌が生きない。
アラビア糊だからこそ成功していると思います。

[1092] 005:サラダ 林本ひろみ 2005年03月01日 (火) 17時07分
すれ違う心をそっとまぜ合わすサラダボウルの緑の濃淡

同じ緑の野菜でも濃淡があります。
その濃淡が混じり合ってサラダになる。
人の心もそんな風に触れ合えないかな、という作者の思いが伝わってきます。
やさしいやさしい、でもちょっと切ない歌。

[1112] 039:紫 谷口純子 2005年03月01日 (火) 17時40分
紫の頭巾を今宵縫いましょう人間ならば百歳の猫

百歳をお祝いしたいです。
谷口さんの猫へのやさしさを感じます。

1151] 009:眠 春畑 茜 2005年03月01日 (火) 18時55分
眠りよりふたたび眠るまでの間を時にゆめみるごとくあゆめる

起きている時間を「眠りよりふたたび眠る」と表現してしまうところが
春畑さんのすごいところです。
何気ない日常を詠みながら類型を見ない。
簡単なことのようで難しいことですよね。

[1155] 052:螺旋 斉藤真伸 2005年03月01日 (火) 19時17分
病棟の西に張りだす非常口春は螺旋を描いてのぼる

何が螺旋を描いてのぼっていたのかは分かりません。
単なる心象なのかも知れません。
でもここが具体だったらどうでしょうか。
場所は病院です。
病院というのは人々のさまざまな思いが詰まった場所です。
一点に絞らずあえて「春」としたところに深いものを、広がりを感じます。

1167] 003:つぼみ ゆか 2005年03月01日 (火) 19時56分
大輪の偽花のつぼみ見つめおり肩透し食う医院待合室

これもなぜ肩透かしを食ったのか分かりません。
大輪の花が造花だったからでしょうか。
待合室で待ちぼうけを食わされたからでしょうか。
はたまた、妊娠だと思って行ったら違っていたのでしょうか(笑
さまざまな想像心を掻き立てます。

1178] 004:淡 岩波ラスミチ 2005年03月01日 (火) 20時23分
俺はもう淡い期待は抱かない。そこにいるだけ。君とやるだけ。

言い放った感じが実に爽快です。
私は短歌に句読点を入れるのはあまり好きではないのですが、この短歌は
逆にそれが箇条書きのようなイメージを持たせ成功していると思います。



過去ログ5より

2005年03月18日 05時13分42秒 | 題詠マラソン感想
[827] 005:サラダ 船坂圭之介 2005年03月01日 (火) 07時10分
十年(ととせ)経て猶夢に顕つ”ゐさらひ”の白きを恋ふる朝のサラダに

船坂さんももうすでに完走されています。
船坂さんの作品では短歌の醍醐味を味わわせていただきました。
どの短歌も驚くほどに完成度が高いです。
1首の中の1句たりとも粗雑に扱ってはおらず、丁寧に丁寧に詠まれています。
この姿勢は見習わせていただかなくては・・・。

ゐさらい、お尻。
唐突な感じもしますが、朝の爽やかなイメージと対比して十分に
なまめかしいものに仕上がっていると思います。
この場合対比していると言うより、際立たせていると言った方が
いいかも知れませんね。

[859] 020:楽 宮まり 2005年03月01日 (火) 09時20分
音楽の教科書だけをそっと抜き資源回収にそそくさと出す

宮さんのスピードの速さには驚かされました。
この短歌はいろいろなところで取り上げられていますが、本当に情景が浮かぶ
いい短歌だと思います。
国語でも数学でも美術でもなく音楽。
音楽はやはり郷愁をさそうものなのでしょうか。
ただ音楽の郷愁を見て懐かしく思うのではなく、資源回収を持ってきたところに
新鮮さを感じました。

[875] 034:背中 宮まり 2005年03月01日 (火) 09時32分
大き手で背中を押してくれた父 その反動で二・三歩下がった

普通は背中を押してもらうと感謝の言葉が続きそうなんですが・・・。
笑いました。

[879] 038:横浜 宮まり 2005年03月01日 (火) 09時35分
横浜と言えば横幅たそがれを歌ってくれる八百屋のおっちゃん

これもいろいろな方が取り上げてらっしゃいますね。
おじさんでもなく、おっさんでもなく、おっちゃん。
しかも、八百屋・・・。
脱帽です。

902] 007:発見 白玉だんご 2005年03月01日 (火) 09時47分
「し」の文字は裏から見れば「つ」になると大発見を語るおさなご

子供の純粋さが伝わってくるようです。
ほほえましいです。
かわいいです。

[948] 098:未来 宮まり 2005年03月01日 (火) 10時28分
未来とはいつのことかと問いたれば明日ぐらいが今風だと言う

ご自分が問う側、お子さんが答える側なのでしょうか。
「明日ぐらいじゃない?」ではなく「明日ぐらいが今風」。
実に今風の子を表していると思いました。

978] 010:線路 船坂圭之介 2005年03月01日 (火) 12時50分
業(ごう)ならば耐ゆべし冬の真夜嵐線路は遠く闇へ延び行く

暗さの中にも何か決意めいたものを感じます。
線路にご自分の境涯を重ねていらっしゃるのでしょう。
特に結句の「闇へ延び行く」にひかれました。




過去ログ4より

2005年03月18日 04時51分21秒 | 題詠マラソン感想
初めに・・・
いい悪いではなく私は文語でも口語でも定型を守っている歌が好きなので
必然的にそういった歌を多く選んでしまうと思います。
猫が題材の歌にも弱いかも(笑
以下、敬称は略させていただきます。
よろしくお願いします。


[737] 004:淡 武田ますみ 2005年03月01日 (火) 00時10分
初夏(はつなつ)の匂いのしている冷蔵庫「淡色野菜」と声に出すとき

淡色野菜を色ではなく声で使ったところにひかれました。
しかも真夏ではなく、初夏。
爽やかでいい短歌だと思います。

[738] 01:声 谷口純子 2005年03月01日 (火) 00時11分
鳴き声が人語に変わるすれすれで対決しおり黒猫白猫

分かります、分かります、私も猫を5匹飼っているので・・・・。
赤ちゃんの声と間違えることはありますが(逆もあり)、そこを人語としたところが
おもしろいです。

[749] 001:声 春畑 茜 2005年03月01日 (火) 00時27分
音にさえ母と子のあるさびしさに子音母音を声に鳴らせり

この感想を書いている時点でもう何人もの方が完走されました。
春畑さんもそのうちのお一方です。
100首すべてをじっくりと拝見させていただきました。
類型があるような歌材を自分の言葉で詠む。
自分の言葉で詠むというのは簡単そうに見えて努力のいることです。
しっかりとした基礎を感じました。

動詞は「ある」と「鳴らせり」の2つだけ。
「音」「母」「子」の重なり。
これらによってさみしさが浮かび上がってくるような短歌に完成されているのだと思います。

[760] 010:線路 谷口純子 2005年03月01日 (火) 00時47分
線路には線路猫ありさびさびとレールの色の身体ゆすりて

線路猫なるものが存在するのかどうかは分かりません。
でもいるように錯覚してしまうから不思議です。
過去ログ4の中で一番情景が浮かんでくる歌だと思いました。
人に想像させるということはすごいことです。

[784] 001:声 秋 2005年03月01日 (火) 01時22分
「人間て、恋する機械なのね」って指でアポロを割る君の声

軽い口語で一見すると破型のように見えますが、実はしっかり定型です。
私はこういう短歌にすごくひかれます。
リズムも完璧だと思います。
恋する機械なのねという君が機械のようにアポロを割っているのがおもしろい。
でも・・・・私もアポロは割って食べたくなります・・・・。

[791] 004:淡 ぞうきん猫 2005年03月01日 (火) 01時39分
九段から神田を抜けて淡路町万世橋を渡るきじとら

短歌に固有名詞や地名を入れるのは難しいものなのですが、ここまでされると降参です。
人間なら「で?」で終わってしまいそうですが、猫しかもきじとらというところが
絶妙な味を出しています。
地名も違和感なく繋がっていて、類型を見ないおもしろい短歌だと思いました。