「そういえば、レイ、夏休みまた山に修行行くんだって?」
「・・・まこと、それ誰から聞いたの?」
「美奈から。夏休みなのにわざわざ修行とか信じられなーいとか言ってたけど、あたし、聞いてないんだけど」
「(あのおしゃべりめ・・・)」
「・・・誕生日のときもそうだったよな。そのときは単にあたしが聞くタイミング逃しただけかなーって思ってたけど、やっぱり美奈には言ってあたしにだけ教えてくれないんだね」
「(美奈には私の留守中を頼んでたのに・・・これじゃ意味ないじゃない)」
「あたしには言いたくないってんなら、しょうがないけどね。ああ、やだやだ。さみしいなあ」
「・・・悪かったわよ」
「・・・みんなに黙ってるならそれはそれで心配だけど、なんであたしにだけ言ってくれないのさ。あたし、レイの邪魔?」
「まあ、正直言うと・・・邪魔ね」
「うっ・・・」
「ちょっと、部屋の隅っこで落ち込むのやめて。幽霊と間違えるから」
「無理。もう立ち直れない」
「あのねえ・・・私が修行に行くってあなたに言ったらついてくるでしょ」
「そりゃあ・・・いっしょに行きたい」
「それがいらないのよ。修行なんて連れ立っていくものじゃないじゃない、旅行じゃないんだから」
「でもさあ・・・」
「でもじゃない。そういうこと言うからあなたに言うの嫌なのよ。放っておいて」
「だって、真夏とはいえ山だぞ?ひとりでそんなとこ行ってなにかあったらどうするんだ」
「中学生が都会でひとりで暮らしながら戦士やってるよりはるかに安全よ」
「でも、熊が出たりとかしたら・・・」
「ヒグマならさすがに変身するけど、本州の熊くらいなら変身しなくても倒せるわ」
「道に迷ったりしたら・・・」
「おじいちゃんとは連絡取るようにしてるし、道は知ってる」
「でも、怪我とかして動けなくなったら」
「万一動けなくなっても変身すれば狼煙くらい起こせるわ。そもそも変身したら山くらいすぐ降りられるし」
「滝に打たれて風邪なんか引いたら・・・それに、あんな白い服で水かぶったら透けちゃうだろ。誰が見てるかわからないのに」
「あれは下に白いウェットスーツ着てるから寒くないし透けないわ」
「ウェットスーツ!?そんなの着て、修行の意味あるのか・・・?」
「滝に漠然と打たれて寒さなんかに耐えるのが意味ある人もいるのかもだけど、私の場合そうでもないから。自然の中でマイナスイオンを浴びるのがいいみたいだからやってる」
「マイナスイオンって・・・ウェットスーツもだけど、レイの口からそんなカタカナの言葉が出てくるのなんかやだ・・・」
「あなた、私の名前知らないの?」
「いや、そういうことじゃないけどさ・・・なんかマイナスイオン浴びに行くレイとか・・・巫女さんのイメージと遠いから・・・」
「勝手なイメージつけられても迷惑だわ」
「で、でも、マイナスイオンが目的なら、だったらなおさらそんな遠いとこ行かないであたしの家に来ればいいじゃないか。植物とかいっぱいあるからマイナスイオンなら浴びられるぞ」
「あなたがいたら本末転倒でしょう。誰もいないところで自然の中でやるから修行なのよ。はっきり言って、あなたが邪魔なのよ」
「うぅっ・・・」
「・・・だから、幽霊みたいに部屋の隅っこで落ち込むのやめなさいよ」
「だって・・・あたしはただ心配なだけなのに・・・レイの力になりたいだけなのに・・・」
「私の力になりたいならおとなしく待ってて」
「帰ってくるまでちゃんと帰れるかわからないじゃないか・・・」
「・・・待っててくれたら、ちゃんと強い自分になって戻ってこようって思えるのよ」
「・・・え?」
「熊に会って戦うのも道に迷ってなんとかするのも寒さに耐えるのも変質者対策も私の仕事。あなたの仕事はただ信じて待っててくれたらいい」
「・・・・・・・・・」
「信じて」
「・・・・・・待たせたらそれこそ木の根っこ引っこ抜いて草の根分けても探しに行くからな」
「・・・これで、守らされるものが一つ増えたわね。せいぜいあなたに自然破壊させないように気をつけるわ」
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セーラー戦士ならヒグマも倒せるって信じてる。
三部作はバトルものというリクエストをいただいて書かせてもらったのですが、かっこいい内部と全員の見せ場を!と欲張ったので、大好きと言っていただけるなら光栄の極みです。
既刊に関しましてご期待に添えなくて申し訳ありません!が、いただいたコメントが力になっておりますので、これからも当ブログにお立ち寄りいただけたらと思います。
コメントありがとうございました!
作者様の小説のお陰で、セラムンの世界がぶわっと広がりました。
出会えて良かったとはこのことです本当にありがとうございます。
どのお話も素晴らしいのですが特に「TACTICS」「TRACE」「TRUST」の三部作には脱帽しました。大好きです。
4人の人物像がリアルに浮かび上がる文章力にただただ感嘆しております。
そして既刊本についてですが、勝手な質問に親切に対応して頂きありがとうございました。
承知致しました!
お手数をお掛けし恐れ入ります。
今後とも更新を楽しみにしております!
重ね重ねありがとうございました!
セラムン展からこの世界にいらっしゃったとのことで、見つけてくださりありがとうございます。
字ばかりなので一気読みはお疲れではと心配ですが、とてもうれしいです。今となっては内部百合自体がマイナーなので、もうそのお言葉がただただありがたく・・・ブワッ
まばら更新ですが、内部好きさん増えればいいなあと地味に活動しておりますので、内部好きさんが楽しい思いをしてくださればと思います。これからもよろしくお願いします。
そして通販のお問い合わせもありがとうございます。
せっかくおっしゃっていただいて申し訳ないのですが、現時点では特に通販は行っておりません。既刊はすでに完売しているものがあるのと、そもそも数をあまり発行していないのと、管理人が直接でないお金のやり取りに責任を取れない可能性があるからです。
今後ともブログの方で楽しんでいけるように努力していきたいと思います。
コメントありがとうございました!
この前のセラムン展でこの世界に足を踏み入れたド新規です。
サイトの小説や小ネタを一気読みさせて頂きまして、作者様のお陰でまこレイ・美奈亜美にドハマりしてより一層内部が好きになりました。
どのお話も素晴らし過ぎて、宝箱のようなサイトや!!!!!!!更新ありがとうございます!!!!!!!、と額を床に消しゴムのように擦り付けて拝み倒したい気持ちです。
ありがとうございます。作者様のファンです。
ところでなのですが…
既刊本を購入させて頂きたく思っているのですが、何か方法はございますでしょうか…?
通販などをされていたら利用したいと思っているのですが…
突然の不躾な質問、申し訳ございません。