生活感

「おーい、レイ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「何？」
「もし明日予定がなかったら、ちょっと付き合ってほしいとこあるんだ」
「別にいいけど…どこ行くの」
「スーパー」
「え、スーパーって…あれよね？スーパーマーケットよね。日用品買う」
「そうだよ？ほかに何があるのさ」
「いや、スーパーは分かってるわよ。ただ単にわざわざ頼んでもらってついて行くような場所かと思って」
「明日は隣町のスーパーで大安売りなんだよーチラシ見たらほんと安いんだ。行かなきゃ」
「荷物持ちしろと？」
「そうじゃないよ。ひとり○点限りって品が多いから、ついてきてくれたら倍買えるだろ」
「ああ…そういえばそういうのもあるのね」
「…あんたには庶民の話が通じないんだったな。もういいよ一人で行くから」
「…なに拗ねてるのよ。行くわよ。安いものが倍買えるんなら得でしょう」
「そうか来てくれるのか。ありがとう。じゃあ、開店と同時に入るから覚悟しておくように」
「…覚悟って…そんな、コミケじゃあるまいし…」
「いーやあたしは生活かかってる分マジだよ。それに大きいスーパーだから駐車場があって、それで車で来る人多いから…車ある人は人海戦術でくる場合あるし帰り楽だからすごい買い込んでいくし、油断するとすぐ売り切れちゃって大変なんだよ」
「(私の知らないところで苦労してるのね…)」
「来てくれるんなら明日の計画を練るから。まずどこから行くのがいいかな。要領よく回らないと買い逃すからな…」
「計画って…そこまでしなきゃいけないもの？」
「いいか、レイ。大安売りは戦場だ。売り切れてて買えなかったなんていうのは負け犬のたわ言。譲り合いの精神と最低限のマナーは守ったうえで自分が必要な分は確実に…確保(カッ」
「(こんなおっかないまこと見たことない…)」
「だからって何でもわしづかみにすりゃいいってもんじゃないんだぞ。たとえばトイレットペーハーは商品によって質が全然違うから、どのメーカー買うか先に教えるから覚えておいて。あとこれすごい大事！ティッシュは値段だけに惑わされず何組入ってるかをちゃんとチェックしてから取らなきゃいけないんだぞ。安い箱は基本中身少ないからな」
「……既に戦意喪失しそうだわ」
「戦いの戦士のくせに何言ってるんだよ」
「そんな戦いしたことない」
「ならなおさら体験しといて。まあティッシュはあたしが取ってもいいんだけどね…慣れてるし。そもそも一番の狙いはティッシュだし」
「そうなの？」
「おひとりさま２セットってのも珍しいのに、値段自体も安いし…食料なんかはあんまり買い込む必要はないけど、ほんとティッシュは買っておきたい」
「ふーん…ティッシュね」
「ほんとティッシュはいるんだよー一部屋に一箱くらい置いちゃうしね。しかも最近とみに消費激しくてね。前はそうでもなかったけど、こっち引っ越してきてから本当一気に消費増えたんだよ」
「…そう」
「お客さん増えたからかなぁ…掃除に力入るからつい使っちゃうし、料理する時間がぐっと増えたからキッチン周りもほんとよく使うようになったんだよね」
「ああ…なるほど」
「やっぱりお客さんが来ると違うよなぁ」
「……私たち、負担、かしら」
「あ、いや、そんなことないよ！お客さん来てくれないと生活に張り合いないし、それに生活がすごいぎりぎりってわけじゃないから！一度贅沢を覚えてしまうと怖いから、心がけだけでも節制を忘れないようにしようってだけだよ」
「……………………」
「うん。ほんと、レイが気にしてくれるようなことじゃないよ。あたしは全然負担に感じてなんかいないから」
「……なら、いいけど」
「うん…本当に負担には思ってない。けど、消費量が増えたのは確かだからね。安くたくさん買える機会があれば買っておきたいって、それだけだから」
「…そう」
「まあ、一番消費量があがったのは寝室なんだけどね」
「えっ…」
「それまで寝室は申し訳程度に置いてただけなのに、レイが泊まりに来るようになってからほんっとティッシュ使うようになったなぁ」
「Σぶっ…」
「ああ、レイ、どうした？むせたのか？ティッシュ使う？」
「…………‥この、ばかっ！！明日行かない！！」
「ええっちょっそれ困るって！今後の生活のためにもついてきて！」
「行かないわよばか！！」





　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　新婚のような熟年のような。
　一緒に買い物に行って生活感丸出しの会話してトイレットペーパーとか一緒に買ってたらもう夫婦と言っても過言じゃない。