地に紫陽花天に青空肉親焼く 廣瀬直人
紫陽花の季語で、この句を見た時軽い眩暈を覚えた
こんなに直接的に悲しみを表現する句を、見たことが無い
いったいこれは…
2020年5月、廣瀬直人全句集と言う分厚い本が出版された
この本を引っ張り出して、この句の背景を調べてみることにした
「帰路」の昭和39年
「昭和三十九年六月
妹京子結婚後一年あまりにして、産児と共に急死
西宮火葬場にて荼毘にふす(十句)」
と言う前書きがあり、この句も含め十句が載っていた
この前がきの通り、
直人氏は、この年に妹さんと、
その産児(生まれたばかりの子)を無くされていたのだ
紫陽花の藍喪主に沁む火葬場 直人
その時、直人氏の庭には、紫陽花が咲いていたのだろうか
それとも、葬場の庭か…
紫陽花の青色の花言葉は、冷淡 無情
青嵐葬場に満ち母と子焼く 直人
薔薇の風一陣生死なまなまし 直人
煙となりて夏空に舞ふ妹よ 直人
直人氏の妹とその産児を悼む句は、
筆舌に尽くしがたい程、哀しみに溢れている
人生の無常、やりきれなさ…
胸が痛くなってくる
桃の花は直人氏を代表する句だが
この紫陽花の句も、
直人氏の句を越えるものはないだろう
とumeさんは思う
直人氏の庭にもきっと
紫陽花が綺麗に咲いていることだろう…