誰も来ててねぇんだよ。

　

　工場から逃げだして、今までにだって！

 

逃げ出して数えきれねぇんだ。工場も弱り切って。

 

お袋さんが探し回って。

 

俺れが帰ってみると、血相を変えているから

 

そいつあ、捨てておけねぇーてんで。

 

おりゃー心のあたりの処を二、三軒回ってみたんだが。

 

来ててねぇんだよ！

 

いってぇ、どこをうろついてやがるんだ。

 

新幹線のガードの下を歩いていたんだ、腕組みをして。

 

威張って歩いているのが、サブちゃんらしい。

 

俺れは赤の他人から必死で頼むから、探したんだが？

 

偉そうな格好で歩いてやがる。

 

おー、お前のお袋さんが死にそうなんだ。

 

　「俺れがうろたえて探している」と思うだ！

 

馬鹿野郎！

 

いい年をして遊んで回るのも、ほどほどにしやがれ！

 

少しカモをかけてみたんで、血相をかけて行っちまった。

 

戻ってみると！

 

　てめぇ、死んじまえ。

 

　俺れの親孝行だったら！

 

　そうですか！

 

　俺れ死ぬです！

 

家の陰で話しを聞いて、

 

親子の温かさはしみじみと考える。

 

「死んで親孝行する」の言葉が

 

、親子の情愛を感じる。

 

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