2001年3月24日(土)
ピーター・グリーン・スプリンター・グループ「ホット・フット・パウダー」(日本クラウン)
ピーター・グリーンといえば、1960年代後半、フリートウッド・マック時代のブルーズィーなプレイがあまりに有名なロック・ギタリスト。
「ブラック・マジック・ウーマン」に代表される、マイナー・ブルース・チューンを弾かせれば、右に出る者はないとまで言われていた男。
1946年生まれの現在54才、もはや「伝説」と化していたひとだが、どっこい、まだまだ現役でがんばっていた。
それも、実にシブい、イナタいブルース・シンガー/ギタリストとして。
彼は96年にステージにカムバック、以来、97年の「スプリンター・グループ」、98年の「ザ・ロバート・ジョンスン・ソングブック」、99年の「SOHO SESSION」(ライヴ)、「デスティニー・ロード」とコンスタントに作品を発表し続けている。
2000年に「ザ・ロバート~」の続編として、前作でカバーした以外の13曲をレコーディングしたのが本作である。
「スプリンター・グループ」とは、ギター・ボーカル担当のピーターとナイジェル・ワトスンを中心とする6人組。
今回はこれに、実に豪華な6人のゲストが加わっている。
バディ・ガイ、オーティス・ラッシュ、ヒューバート・サムリンという60代のトップ・ブルースマンたち。
ロバート・ジョンスンと共に活動していた、現役最長老といってもよい1915年生まれのハニーボーイ・エドワーズ。
そして、ドクター・ジョンとジョー・ルイス・ウォーカー。
まさに話題盤なのだが、残念ながら彼らゲストから「これは!」というソロを聴くことは出来なかった。顔見世程度でしかないのである。
しいてあげれば「フロム・フォー・アンティル・レイト」「ゼイアー・レッド・ホット」でのドクター・ジョンのピアノくらいか。
ラッシュもサムリンも今ひとつ自身の個性を発揮していない。いつもノリノリのバディ・ガイの「クロスロード」でさえ、なんだか控え目のプレイだ。
エレキは添え物、あくまでもアコースティックなサウンドで、ロバート・ジョンスンをいま風(8ビートなど)に演奏するのがピーターのやり方。
このサウンド・ポリシーを優先させた結果、こういうまとめ方になってしまったのだろうな。
だから、コアなブルース・ファンにはおすすめできない。
ゲストを目当てに聴いても、がっかりするのがオチだからだ。
話題盤必ずしも名盤ならず。
でも、聴く価値のない駄作だとも思わない。
ピーターのひなびた(言い換えればジミということだが)ボーカルにも、それなりの味わいはある。
ピーターの熱心なファン、それからロバート・ジョンスンをカジュアルな感覚で(たとえば、家の中でBGMとして流すみたいな)聴きたいひとにはいいかも知れない。
ロバート・ジョンスン自身の弾き語りの、あのゴツゴツとした魔的な雰囲気とはかなり違った、淡々としたムード。これはこれでひとつの個性ではないかと思う。