2003年5月28日(水)
#164 クルセイダーズ「SCRATCH」(MCA MCAD-37072)
クルセイダーズ、74年リリースのライヴ・アルバム。ロサンゼルスは「ザ・ロキシー」における録音。
クルセイダーズといえば、前身のジャズ・クルセイダーズが結成されたのが60年だから、実に40年以上の歴史をほこるインスト・グループである。
当然ながらリリースしたアルバムの数もハンパでなく、約50枚。これを全部聴くことだって、どえらく大変なことだ。
だが、彼らくらいの、名うてのプレイヤー集団になれば、どれを選んでもそうハズレはないだろう。
ということで、ほとんど「無作為抽出」的に選んだのが、この一枚だ。
<筆者の私的ベスト3>
3位「ELEANOR RIGBY」
ベスト3とはいっても、5曲しか入ってないアルバムなので、半分以上の紹介になっちゃうのですが、まずはこれ。
いうまでもなく、ザ・ビートルズ、レノン=マッカートニーの作品。オリジナルは66年のアルバム「リボルバー」に収録。
テナー・サックスのウィルトン・フェルダー、トロンボーンのウェイン・へンダースンをフィーチャーして12分半にも及ぶ演奏を繰り広げるのだが、これが少しも冗長な感じがしない。
なんでだろう~?とテツ&トモ風に考えてみたが、考えられるのは、
1 全体のアレンジというか構成が、きちんと練られていて、ゆきあたりばったりの進行ではない。盛り上げどころをしっかり計算している。緩急、メリハリがうまくつけられている。
2 個々のソロイストの技量が極めて高く、フレーズの引き出しが豊富で、聴く者をあきさせない。
3 そしてもちろん、サウンドの土台であるリズム・セクション(ジョー・サンプル、マックス・ベネット、スティックス・フーパー)の技術が確かである。
ということになるんだろうな。当たり前の結論といえば、それまでなんだが。
アレンジという「計算」の部分と、インプロヴィゼイションという「非計算」の部分が見事に融けあって、他バンドにはおいそれとまねできない、絶妙な音の魔術を生み出しているとゆーことだ。
ソロは、まずフェルダー、続いてヘンダースン、さらにはサンプルがとる。いずれも、パッショネイト、でもどこか物憂げなフレーズがいい。それをまた、バックの巧者たちがしっかりと盛りたてる。
調べてみると彼らは、この曲を68年のアルバム「LIGHTHOUSE」で取り上げて以来ずっとレパートリーにしているそうで、なるほど年月をかけてじっくり練り込んだアレンジなのだなと、ナットク。
2位「SO FAR AWAY」
こちらも、ポップス・ヒット・チューンのカヴァー。キャロル・キング、71年の超ヒット・アルバム「つづれおり」中の代表曲。
多くのアーティストにカヴァーされているが、その中でもこのヴァージョンは出色の出来だろう。ここでもふたりのホーン・プレイヤーを中心に、完成されたメロウなアンサンブルを聴かせてくれる。
かのラリー・カールトンも、この時点では正式メンバーではなかったが、「フレンズ」ということで参加しており、どちらかといえばリズム・カッティングやリフ中心であまり前面には出てこないものの、この曲などではキラリと光るソロ・プレイをしている。
この曲での最大の聴きものは、ホーンのふたりの「どこまで息つぎせずに長い音を出せるかやれるだけやってみましょう」的ロング・トーンのところですな。
ゆうに1分を超え、しかも段々と大きくなるワン・トーンに、とにかく圧倒されます。
1位「SCRATCH」
1位はやはり、タイトル・チューンだろうな。いかにも彼らのお家芸といった感じのファンク・ナンバー。ヘンダースンの作品。
「スクラッチ」というのは、英語で「ガチンコ勝負」みたいな意味じゃなかったっけ?
だとすれば、まさにナットクの一曲。粘っこいミディアム・テンポのビートに乗せて、2本のホーンがひたすらファンキーに咆哮しとります。
フェルダーとヘンダースン、いずれも勝ちを譲らぬ「猛者」ふたり。さすがの風格です。
そしてソロ・パートはフェルダー。サイコーの音色です。
もうひとりの立役者、サンプルのフェンダー・ローズでのプレイも、もちろんごキゲン。
「ファンクの教科書」ともいえそうな名演ぞろい。でも妙にリキむようなこともなく、最後までさらっと演奏しているのも、実力派の彼らならでは。
やはり彼らの底力は、生演奏でこそ発揮される。それを思い知らせてくれる一枚ナリ。
<独断評価>★★★★☆