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音曲日誌「一日一曲」#437 ザ・ライチャス・ブラザーズ「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」(Philles)

2024-06-16 08:26:00 | Weblog
2024年6月16日(日)

#437 ザ・ライチャス・ブラザーズ「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」(Philles)



ザ・ライチャス・ブラザーズ、1964年11月リリースのシングル・ヒット曲。バリー・マン、シンシア・ワイル、フィル・スペクターの作品。スペクターによるプロデュース。

米国のボーカル・デュオ、ライチャス・ブラザーズは1962年カリフォルニア州オレンジ郡にて結成。メンバーはビル・メドレーことウィリアム・トーマス・メドレー(1940年同州ロサンゼルス生まれ)と、ボビー・ハットフィールドことロバート・リー・ハットフィールド(同年ウィスコンシン州ビーバーダム生まれ)である。低音パートはメドレー、高音パートはハットフィールドが担当していた。

彼らはそれぞれ別のバンドで活動していたが、共通の友人を介して知り合い、同じバンド(ザ・パラモアズ)に所属することになる。

バンドは62年にインディーズレーベルのムーングロウからシングルをリリースするが、不発に終わる。かわりにふたりでデュオを組んで、同年末にレコード・デビューすることになるのである。

そのグループ名は、ソウルフルな彼らの歌声を聴いたある黒人が「彼らには正しいソウルがある」と讃えたことから来ている。

最初のシングルは「Little Latin Lupe Lu」。ムーングロウレーベルから1962年12月にリリース。メドレーの自作である本曲は、全米49位のヒットとなり、快調なスタートとなった。

2曲目の「My Babe」は全米75位。しかし、以降の4曲はまったくチャートインせず、ジリ貧のまま終わるかに思われた。

しかし、そんな彼らに救いの手が差し伸べられた。稀代のヒット・メーカー、フイルム・スペクター(1939年生まれ)である。

彼らの歌を聴き、気に入っていたスペクターは、自らが設立したレーベル、フィレスにふたりを招き入れたのだった。

そしてそこでリリースしたファースト・シングルが、本日取り上げた一曲「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’(邦題・ふられた気持ち)」である。

この曲は「On Broadway」「Walking In The Rain」などヒット曲を数多く持つバリー・マン、シンシア・ワイルのコンビ(実生活では夫婦でもある)と、スペクターが共作した。

スペクターにより制作されて1964年11月にシングル・リリースされるやいなや、本曲は大ヒットした。全米1位、R&Bチャート2位、1965年年間5位、そして他国でも英国、カナダで1位を取るなど軒並みヒット。日本でもヒットして、一躍その名を知られるようになった。

「20世紀に米国テレビ・ラジオで最もオンエアされた100曲」(BMI調べ)では、800万以上のオンエアで堂々の1位に輝いている。

そんなスーパー・ヒットを出して人気グループとなった後も、65年4月に「Just Once In My Life」で全米9位、同年7月に「Unchained Melody」で全米4位、同年末の「Ebb Tide(邦題・ひき潮)」と立て続けにヒットを出した。65年はまさにライチャス・ブラザーズの当たり年だったのだ。

66年にはスペクターのプロデュースから離れてヴァーヴに移籍、「(You’re My) Soul And Inspiration」を2月にリリースして再び全米1位を獲得、その人気ぶりを見せつけた。

しかしながら、デュオとしてはその頃がピークだったようで、次の曲「He」(全米18位)以降はチャートも下落していき、67年には大きなヒットが出なくなる。

そして68年、メドレーがソロシンガーとなるため脱退して、ライチャス・ブラザーズは実質的に解散となってしまう。

ハットフィールドは、別のシンガー、ジミー・ウォーカーと組んで、新生ライチャス・ブラザーズとして活動を続けたもののふるわず、71年で解散。

その後、メドレーがソロシンガーとして活動を続けていくことに困難さを感じたこともあり、74年にはハットフィールドに呼びかけて、再結成となる。

同年5月には久しぶりのシングル曲「Rock And Roll Heaven」(アラン・オデイの作曲)を全米3位のヒットとした。

再結成の後は、5年ほどの休止期間を挟んで、ふたりの活動は2003年、ハットフィールドが63歳で亡くなるまで続いた。同年には、ロックの殿堂入りを果たしている。

彼らのサウンドは、「ブルーアイド・ソウル」と呼ばれている。本来黒人がやっていたソウル・ミュージックを白人も歌い、より多くのリスナーに支持されたというジャンルだが、その用語はライチャス・ブラザーズの登場により一般化したといっていいと思う。

その後、米国・英国でいくつものバンドがそう呼ばれるようになる。ヤング・ラスカルズ、スペンサー・デイヴィス・グループ、ゼムなどである。

その流れを継いで、この「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」を再び大ヒットさせたデュオ・グループがいる。言わずと知れた、ダリル・ホール&ジョン・オーツである。

彼らは1980年に本曲をシングル・リリース、全米12位のヒットとなった。

1957年生まれの筆者の世代は、この曲はむしろホール&オーツバージョンを先に聴いて覚えたという人が大半だろう。そこから、オリジナルのライチャス・ブラザーズ・バージョンへと遡るわけである。

主に低音パートのメドレーをフィーチャー、それに高音パートのハットフィールドを絡ませて盛り上げていくライチャス・バージョンもいいし、高音パートのホールをよりフィーチャーしているホール&オーツ・バージョンも素晴らしい。

共に甲乙つけ難い出来であり、筆者はどちらも愛聴している。

楽曲の良さ、サウンドの魔術師フィル・スペクターによるアレンジの巧みさ、シンガーふたりの歌唱力。三拍子そろって、ナンバーワンも納得のヒットとなった、エヴァグリーン・ソウル。

いかにも対照的なビル・メドレーとボビー・ハットフィールドの、歌声のコントラストを味わってほしい。




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