2001年5月26日(土)
ジョン・メイオール「THE COLLECTION」(CASTLE COMMUNICATIONS)
ここのとこ、ヤーディーズ人脈で何枚か聴いているが、今日のも彼らとつながりの深い一枚。
「ブリティッシュ・ブルースのゴッド・ファーザー」とよばれるジョン・メイオールのコンピレーション・アルバムである。
彼が1960年代にデッカに残したレコーディングの中から代表的なナンバー17曲で構成。
彼が率いるブルースブレイカーズといえば、まずこれを聴け!といわれる名盤中の名盤、「ウィズ・エリック・クラプトン」(66年)からの4曲よりスタート。
「KEY TO LOVE(愛の鍵)」はメイオールの作品で、シングル「パーチマン・ファーム」のB面ともなった曲。おなじみのハイトーンで少しうわずり気味の「メイオール節」が聴ける。
「ハイダウェイ」はクラプトンのアイドルの一人、フレディ・キングのデビュー・インスト・ナンバー。
ロバート・ジョンスン作の「RAMBLIN' ON MY MIND(さすらいの心)」ではクラプトンが初めてのリード・ボーカルをご披露。
「ALL YOUR LOVE」はもちろん、オーティス・ラッシュの十八番。
いずれも、当時スゴ腕ギタリストとして注目を集めていたECの、気合い十分なプレイが聴きものだ。
続いてのライヴ2曲も必聴。69年発表のライヴ・アルバムから「THEY CALL IT STORMY MONDAY」と「HOOCHIE COOCHIE MAN」。
実は66年4月、クラプトン在籍時の録音で、ベースはなんとジャック・ブルース(彼はごく短期間の在籍)。
ここでのECのプレイは、まるで何かに憑かれたかのような、激しくうねるようなフレーズの連続である。ファンならずとも、鳥肌が立つようなオーバーヒートぶりだ。
クリーム結成の前年、既にその革新的サウンドが準備されていたという、貴重な記録である。
で、面白いのは、先週取り上げたオールマンズ・ライヴでの「STORMY MONDAY」が、コード・プログレスや歌のフレージングなど、このブルースブレイカーズ・バージョンに非常に良く似ているということだ。
オリジナルのT・ボーン版以上に参考にしたことは、間違いあるまい。
オールマンズ、米国のバンドではあるが、しっかりブリティッシュ・ブルースも研究しとったのですな。
次はメイオールのデビュー・シングル、ファースト・アルバムにも収録された「CRAWLING UP A HILL」(64年)。メイオールの泣きのハープ・プレイが印象的だ。
「MARSHA'S MOOD」は、ドラマーのみを従え、全ての楽器を彼が演奏したという変り種アルバム「THE BLUE ALONE」からの一曲。ここではピアノを弾いている。実に多才なひとだ。
「A HARD ROAD」はクラプトン脱退後、ピーター・グリーンをリード・ギターに迎えた同題のアルバム(67年)より。
「THE SUPER NATURAL」も、そのグリーンをフィーチャーしたインスト・ナンバーだ。
ECとはまた一味違った、ソリッドでどこか神秘的なプレイを聴くことができる。ラテン・ビートを取り入れたりして、後年彼が結成するフリートウッド・マックを思わせるところも。
続くは「YOU DON'T LOVE ME」だが、オールマンズはこの曲も彼らのアレンジをまんまパクっている。ギターリフまでクリソツ。
ブルースブレイカーズの強い影響力を示す、好例といえるだろう。
「SUSPICIONS(PART 2)」と「PICTURE ON THE WALL」はともに67年のシングル曲。69年にはアルバム「LOOKING BACK」にも収められた。前者ではホーン・セクション(ディック・ヘクトール・スミス、クリス・マーサーらが参加)も導入しファンク色を出している。
「THE DEATH OF J.B. LENOIR」はアルバム「CRUSADE」から。弱冠19才のミック・テイラーがこのアルバムよりグリーンに代わるリード・ギタリストとしてグループに参加している。
「SANDY」は68年の「BARE WIRES」から。この曲でのスライド・プレイなどは実にアーシーでイカしている。
「THE BEAR」は同年の「BLUES FROM LAUREL CANYON」から。サザン・ロックにも通じるものがある、スワンピーなサウンドだ。これも、テイラーの音楽性に触発されてのものか。
「WALKING ON SUNSET」も同アルバムから。メイオールの達者なハープが楽しめる一曲だ。
この17曲で、デッカ時代のメイオール、約5年間の足跡がざっと見渡せるしくみである。
こうやって見てくると、ヤーディーズもスゴいギタリストたちを輩出してきたが、ブルースブレイカーズも負けず劣らずスゴいバンドである。
ロックの歴史の中で重要な位置をしめるプレイヤーを多数発掘し、育ててきたのだから。
メイオール自身は、プレイヤーとしては必ずしも華のあるひととはいえない。とくにボーカルはうまいとはお世辞にもいえない。
でも、すぐれた才能を持つプレイヤーを見出し、すぐに起用していくプロデューサーとしてのセンス、これは稀有のものだといえよう。
リード・ギタリストが脱退して後任をだれにするか思案しているとき、ヤードバーズのシングル「フォー・ユア・ラヴ」のB面「ゴット・トゥ・ハリー」でのソロに注目、クラプトンがフリーとなったことを聞きつけ、さっそくグループに招んだという彼のエピソードに、その「慧眼」を感じないではいられない。
おん年67才、今も現役でプレイし続けているというメイオールだが、彼がクラプトン、グリーン、テイラーという綺羅星のごときプレイヤーを懐刀とし、新しいブルースを創造していたこのデッカ時代が一番輝いていたのは言うまでもない。
ホワイト・ブルースのパイオニア、ジョン・メイオールの打ち建てた金字塔、ロック・ファン、ブルース・ファンを問わず、一度はチェックしてみてほしい。