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音盤日誌「一日一枚」#479 THE MANHATTAN TRANSFER「THE BEST OF」(ワーナー・パイオニア/Atlantic PXF-1019A)

2023-03-11 05:22:00 | Weblog
2023年3月11日(土)



#479 THE MANHATTAN TRANSFER「THE BEST OF THE MANHATTAN TRANSFER」(ワーナー・パイオニア/Atlantic PXF-1019A)

米国のコーラス・グループ、マンハッタン・トランスファーのベスト・アルバム。81年リリース。アーメット・アーティガン、ティム・ハウザー、スティーブ・バリ、ジェイ・グレイドンほかによるプロデュース。

マンハッタン・トランスファー(以下マントラ)は、男性シンガー、ティム・ハウザーを中心に結成された男女混成の4人組。71年に一度レコード・デビューしたものの売れずに解散。その後、異なったメンバーで再編成して75年に再デビュー、大ブレイクした。

そんな彼らの、75〜81年の代表曲12曲を収録した一枚。米国盤と海外盤では収録曲に若干の違いがある。

【個人的ベスト6:第6位】

「バードランド」

ジャズ・フュージョン・バンド「ウェザー・リポート」77年のシングル曲、アルバム「ヘヴィー・ウェザー」収録曲のカバー。キーボーディスト、ジョー・ザヴィヌルの作品。

マントラ79年のアルバム「エクステンションズ」のオープニング・ナンバーだ。歌詞は男性ジャズ・シンガー、ジョン・ヘンドリクスによるもの。

本来はインストゥルメンタル用のこの曲を、マントラ4人の圧倒的な歌唱力により、ボーカル・ナンバーとして見事に再構築している。

楽器の即興演奏のフレーズに歌詞を当てはめて歌うこの手法を「ヴォーカリーズ」と呼ぶが、マントラはその後85年の自分たちのアルバムのタイトルに、この言葉を使うことになる。

自由自在なボーカル・アレンジ、ことに女性シンガー、ジャニス・シーゲルの縦横の活躍ぶりはグラミー賞でも高く評価されたほどだ。

ノリの良さは、ピカイチの一曲。

【個人的ベスト6:第5位】

「トワイライト・ゾーン」

日本でも放映されておなじみのSFテレビドラマ「ミステリー・ゾーン(邦題)」のテーマ・ソング「トワイライト・ゾーン」(バーナード・ハーマン作曲)と、ギタリスト、ジェイ・グレイドンとマントラの男性シンガー、アラン・ポールの共作「トワイライト・トーン」が合体したナンバー。

グレイドンはバンド、エアプレイのギタリストとして有名だが、一方、いくつものアーティストのプロデューサーとしても名を馳せている。マントラのアルバムも2枚プロデュースし、いずれも大ヒットさせている。

これもアルバム「エクステンションズ」に収録の一曲。

それまではスイング・ジャズやドゥワップ、シャンソンなどのノスタルジックなサウンドを得意としてきたマントラに、はじめて未来的なポップ・サウンドを持ち込み、新たな世界を切り開いたことで、グレイドンは名プロデュースの評価を得ている。

この曲の聴きどころはマントラの巧みなコーラス、各メンバーのパワフルな歌唱に加えて、グレイドンの気合いに満ちたギター・ソロだろうな、やはり。

多重録音をフルに活用した息詰まるような熱演、マントラの歌と互角の活躍ぶりである。

【個人的ベスト6:第4位】

「グロリア」

アトランティックでのファースト・アルバムより、R&Bの作曲家レオン・ルネの作品。48年にミルズ・ブラザーズ、54年にキャデラックスがヒットさせたラブソング。

ドゥワップ・コーラスのスタンダードを20年ぶり、75年に甦らせたのがマントラだ。

ノスタルジックな香りが、ぷんぷんと漂う一曲。思い入れたっぷりの歌唱が、さすがマントラだ。

【個人的ベスト6:第3位】

「フォー・ブラザーズ」

78年のアルバム「ニューヨーク・エッセンス」収録のナンバー。ジャズ・サックス奏者のジミー・ジュフリー作のスイング・ジャズ・ナンバー。58年に発表されている。

このインスト演奏に当てはめて歌詞を書いたのは、またもジョン・ヘンドリクス。彼はヴォーカリーズのパイオニアと呼ばれている。

スピーディなリズムに乗り、超絶な早口で歌いまくり、洗練されたコーラスをキメるマントラの各メンバー。

それに負けじとサックスを吹くのは4人。作曲者のジュフリー、アル・コーン、リー・コニッツ、ルイ・デル・ガット。息の揃った演奏がナイス。

時代から取り残された感のあったスイング・ジャズを、最新のバージョンにアップデートしたのがマントラ。

これぞ温故知新ってことじゃないかと、筆者は思うのである。

【個人的ベスト6:第2位】

「オペレイター」

マントラのデビュー・シングル。全米22位のスマッシュ・ヒットとなった。

女性ゴスペル・シンガーのシスター・ウィノナ・カーの曲「オペレイター、オペレイター」を下敷きとして、作曲家のウィリアム・スピヴァリーが書き上げた作品。

ゴスペル感覚の横溢したアレンジ、シーゲルのソウルフルな熱唱が強く印象に残る一曲。

ジャズとゴスペル、白と黒、クールとホット、そういった二面性を併せ持つ彼らは、まずこのホットな曲で勝負したわけだが、みごとリスナーの気持ちを掴むことに成功した。

すべての人の心を揺り動かす、名曲だと思う。

【個人的ベスト6:第1位】

「タキシード・ジャンクション」

マントラといえば、この曲を絶対外す訳にはいかないだろう。アトランティックでのデビュー・アルバムに収録され、またシングルでもヒットした、彼らのテーマ・ソング的なナンバー。

ジャズ・ビッグバンドのリーダー、アースキン・ホーキンスほかによる39年の作品。さまざまなジャズ・シンガーにより歌われてきたが、76年にマントラがリバイバル・ヒットさせたことで再注目された一曲。

本盤は78年の初のライブ・アルバム「マンハッタン・トランスファー・ライヴ」からのバージョン。女性シンガー、ローレル・マッセー在籍最後の録音。

ラスト・ナンバーということもあって、盛り上がりかたがハンパない。メンバーの煽りにより、オーディエンスも大合唱だ。途中のサッチモ(ルイ・アームストロング)の物真似も楽しい。

この曲なくして、マントラのブレイクはなかった。そう言い切っていい。

マントラはその後もコンスタントに活動を続けている。グループ・リーダーのハウザーは2014年に72歳で亡くなったが、新メンバー、トリスト・カーレスを加えて存続しており、オリジナル・メンバーのふたりは70代になっている。

マンハッタン・トランスファーというグループは、何度もメンバーを入れ替えながらも、音楽への真摯な姿勢を変えずに、脈々と続いている。

まさに、アメリカン・ミュージックそのものといってよいパフォーマーたち。

高いスキルとエンターテイナー性を兼ね備えたこのグループは、これからもずっと聴き続けていかれることは間違いあるまい。

<独断評価>★★★★

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