NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#196 V. A.「A TRIBUTE TO CURTIS MAYFIELD」(WARNER BROS. 9362-45500-2)

2022-05-29 05:09:00 | Weblog

2003年11月30日(日)



#196 V. A.「A TRIBUTE TO CURTIS MAYFIELD」(WARNER BROS. 9362-45500-2

2003年も残るところ、あとひと月ほど。時のたつのは早いのう。

で、年末とは何の関係もないのだが、たまにはトリビュートものも取り上げてみたい。

カーティス・メイフィールド。42年シカゴ生まれ、99年に57才の若さで亡くなるまで、インプレッションズ、そしてソロで独自のソウル・ワールドを生み続けた、シンガー/ギタリスト/コンポーザー。

彼の音楽は黒人・白人を問わず、多くのミュージシャンに強い影響を与え、日本でも山下達郎あたりをはじめとして、信奉者の多いミュージシャンズ・ミュージシャン。

そのわりには、あまり彼自身の音楽について語られることがないのが、残念なのだが。

このアルバムは、94年、カーティスの生前に作られた一枚。とにかく、参加ミュージシャンの豪華さでは、ピカイチ。さすが、カーティス・メイフィールド!と唸らせるものがある。

<筆者の私的ベスト4>

4位「PEOPLE GET READY」

ロッド・スチュアートのカヴァーによる、おなじみのナンバー。カーティスのソロでもインプレッションズでも録音されている。

ロッドが歌う「PEOPLE GET READY」といえば、ジェフ・ベックの「FLASH」に収録されたヴァージョンが知られているが、本盤のはそれとはまた別の録音。こちらはアンプラグド・ライヴ版である。

ロッドのハスキーな歌声が、カーティスのそれとは全く違った魅力を放つ。ストリングスを交えた、落ち着いた雰囲気のアコースティック・アレンジがいい感じだ。

盟友ロニー・ウッドのアコギ・ソロも、枯れた味わいがあってマルである。

3位「I'M SO PROUD」

これもまた、カーティスの十八番的ナンバー。ロックファンにも、BB&A、トッド・ラングレンのヴァージョンでおなじみであろう。

カヴァーするのは、何と50年代から活躍している、息の長いソウル・コーラス・グループ、アイズレー・ブラザーズ

インプレッションズをもしのぐ長寿グループの彼らが歌う「I'M SO PROUD」は、さすがの出来ばえ。

良質のシルクを思わせる、しなやかなロナルド・アイズレーの歌声、そしてまろやかなコーラス。絶品であります。

ゆったり、まったりとしたバック・サウンドも、楽曲に見事マッチしていてグー。

2位「WOMAN'S GOT SOUL」

カーティスよりはだいぶん年上のB・B・キングも本盤に参加、歌とギターを聴かせてくれる。

二人のやっている音楽の方向性は、さほど近いとはいえないが、共通するのはソウル、つまり「歌心」だな。

インプレッションズ時代からよく知られたこの曲を、BBは彼一流の歌心、力強い歌声で、見事に料理してみせてくれる。

カーティスは、従来のR&Bのように男女の色恋のみを歌のテーマとせず、常に社会的な視野に立った歌詞で音楽界をリードして来たひとだが、そういうところが社会派、BBの心をも捉えたのかも知れない。

金銀財宝にもまさるもの、それがソウル。まさに至言だ。

1位「I'M THE ONE WHO LOVES YOU」

はっきりいって、ベスト4の選に漏れたナンバーにも、出来のいいトラックは多い。グラディス・ナイトアレサ・フランクリンの歌のうまさはさすがだし、レニー・クラヴィッツナラダ・マイケル・ウォルデンの、ロック感覚を融合したヴォーカルも実にカッコいい。スティーヴィー・ウィンウッドも、もちろん文句なしの歌唱力だ。

あのエリック・クラプトンも、カーティス風のファルセット唱法に挑戦しているのが珍しい(ちょっと聴いた分には、エリック・カルメン風だったりする)。

カーティス本人やインプレッションズも登場して、ホント、豪華なラインナップだわ。

で、ベスト1を選ぶのも楽ではないのだが、やはり実力、そして貫禄でこのひとだろう。スティーヴィー・ワンダーである。

カーティスとならんで、70年代以降のソウル・ミュージックをリードして来た実力者。カーティスの8才年下にあたる。

十代より早熟の天才ぶりを発揮、すべての先輩アーティストたちをたちまち凌駕したスティーヴィーも、カーティスの先鋭的な音楽性には一目置いていたということか。

その歌いぶりは、本当に思い入れたっぷりという感じ。彼はこのナンバーを、女性へのラヴ・ソングとして歌うだけでなく、カーティス・メイフィールドに対する賛歌としても歌っているように感じられる。

全体に見ると、やはり、黒人アーティスト勢のほうが、カーティスの音楽への理解、愛情においてひと回り上のものがあるのは否めないが、白人アーティストもなかなかがんばっている(特にウィンウッドとフィル・コリンズ)。

「ソウル」を進化させた男、カーティス・メイフィールドの生み出したさまざまな音楽世界を知ることが出来る一枚。

今のミュージック・シーンが、いかに彼に多くを負うているかが、本盤を聴くとよくわかることだろう。

<独断評価>★★★★


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