2024年3月14日(木)
#343 ハンブル・パイ「I Don’t Need No Doctor」(A&M)
#343 ハンブル・パイ「I Don’t Need No Doctor」(A&M)
ハンブル・パイ、71年11月リリースのライブ・アルバム「Peformance Rockin’ The Filmore」からの先行シングル・ヒット曲。ニック・アシュフォード、ヴァレリー・シンプスン、ジョー・アムステッドの作品。ハンブル・パイによるプロデュース。全米73位。
英国のロック・バンド、ハンブル・パイは、69年結成。何度も解散、再結成されており、現在もオリジナル・メンバーのジェリー・シャーリーを中心に活動が続いているが、私たちリスナーの印象に強く残っているのは、やはり最初の69年から75年までの、約6年間の彼らだろう。
それも大きく分ければ、第1期と第2期に分かれる。前者はピーター・フランプトン在籍時代、後者は71年後半にフランプトンが脱退して、元コロシアムのデイヴ・クレム・クレムスンが参加していた時代である。
「Performance〜」はまさにフランプトン時代最終期のライブコンサートを収録したアルバムで、アルバムのリリースを待たずして彼はバンドを離れる。
演奏場所は、米国ニューヨーク市のフィルモア・イースト。満場のオーディエンスを相手に繰り広げた、歴史に残るとまで言われた熱演を、2枚のLPレコードに収録したこのアルバムは、全米21位のヒットとなった。
本日取り上げた「I Don’t Need No Doctor」は、もともとレイ・チャールズが66年にヒットさせた曲。レイ・チャールズ・フリークとして知られる、ハンブル・パイのスティーヴ・マリオットがこの曲をステージのラスト・ナンバーとして選んだのも当然だろうな。
さらに辿っていけばこの曲、R&Bデュオ「アシュフォード&シンプスン」として知られるニック・アシュフォード、ヴァレリー・シンプスン夫妻らが作曲したナンバーである。夫アシュフォードのソロ曲として66年8月にリリースしたものの、ヒットはしなかった。
だが、いい曲にはすぐに目敏い(いや目は見えないけど)レイ・チャールズが気に入って10月にはカバー・リリース、世間に広く知られるようになった。
そして、再びカバーしてこの曲を永遠のスタンダードたらしめたのが、彼らハンブル・パイというわけである。
爆発的なイントロに始まり、アグレッシブなリフ、そしてマリオットの沸騰寸前の激しいシャウトが、オーディエンスの耳を襲う。
中間部には、フランプトンの流れるようなギター・ソロ、そしてオーディエンスとの熱いコール・アンド・レスポンスが延々と続く。
最後は、オーディエンスの期待を貯めに貯めて、再度の大爆発! いやー、これ以上のホットなライブがあるだろうか。9分以上という長尺もまるで意識させず、あっという間に時間が過ぎてしまう。
オリジナル、レイ・チャールズ版さえも上回る、熱過ぎるパッションがこのパフォーマンスには満ち満ちている。
その後も本曲は、幾つものアーティストによってカバーされている。若いリスナーには、ハンブル・パイよりもジョン・メイヤーによるバージョンの方がお馴染みかも知れない。
当世三大ギタリストのひとり、メイヤー君も、ギターではさすがに頑張っているのですが、ことボーカルにおいては、やはりマリオット御大には、足元にも及ばないな、というのが筆者の個人的意見であります。メイヤー・ファンには悪いけど。
真にソウルを感じさせる白人ボーカリストと言えば、スティーヴ・マリオットをおいて他にない、というのが小5の頃からその手の音楽を聴き続けて55年あまりの、ワタシの結論なのです。