NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#325 オーティス・スパン「Ain’t Nobody’s Business」(Blue Horizon)

2024-02-25 07:56:00 | Weblog
2024年2月25日(日)

#325 オーティス・スパン「Ain’t Nobody’s Business」(Blue Horizon)





オーティス・スパンの69年リリースのソロ・アルバム「The Biggest Thing Since Colossus」より。グレインジャー=ロビンスの作品。(クレジットはジミー・ウィザースプーン)。マイク・ヴァーノンによるプロデュース。

スパンはミシシッピ州生まれ。生年は1924年、あるいは30年とも言われる。音楽一家に育ち、7歳からピアノを学ぶ。

10代にしてミシシッピ州ジャクスンのローカルバンドを振り出しに、46年シカゴに移住してマディ・ウォーターズ・バンドのピアニスト、ビッグ・メイシオ・メリーウェザーに師事しつつ、ラウンジで演奏活動を続ける。

52年後半よりメリーウェザーに代わってマディ・バンドに参加して、その名を知られるようになる。並行して、ハウリン・ウルフ、ボ・ディドリー、チャック・ベリー、サニーボーイIIといったミュージシャンのバックでレコーディングする。

マディ・バンドを68年まで続けた後は、英国のロックバンド、フリートウッド・マックとジャムセッションで共演して、ロック・ファンにもおなじみの存在となる。

今日取り上げた「Ain’t〜」が収録されたアルバム「The Biggest Thing Since Colossus」は、そのフリートウッド・マックとの共演がきっかけで生まれた一枚。

ギターはピーター・グリーンとダニー・カーワン、ベースはジョン・マクヴィー、ドラムはS・P・リアリー。マックの5分の3が参加したかたちだ。

この曲は、ブルース・クラシック中のクラシック。原題は「Tain’t Nobody’s Biz-ness If I Do」。22年にポーター・グレインジャー、エベレット・ロビンスのコンビにより作曲され、女性シンガー、アンナ・マイヤーズにより初録音。

その後、ビリー・ホリデイ、ベッシー・スミスをはじめとする数え切れないシンガーによって歌われたが、中でも49年のジミー・ウェザースプーンのバージョンは決定的なヒットとなった。スパン版もそれに準拠している。

スパンはその特徴的な塩辛声でしみじみと歌い上げ、手だれのピアノでそれをしっかりと盛り上げる。とりわけそのトリルは、短くてもわれわれの心を揺さぶってくる。

バックのピーター・グリーンの、ぐっと抑えめのソロも実にいい感じだ。

哀感に満ちたこの「エイント・ノーバディズ・ビジネス」は、名歌手ウィザースプーンに勝るとも劣らぬ出来映えだと思う。

まことに惜しいことに、スパンはこの録音の1年後、70年に肝臓癌でこの世を去ってしまう。

チェスレーベルで数多くのレコーディングを残したことが、われわれブルースリスナーたちにとっての唯一の慰めだろう。

レコードをかければいつでも、スパンのツボをおさえたピアノ・プレイ、シブい喉を味わうことが出来るのだから。

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