NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#237 加部正義「ムーン ライク ア ムーン」(バップ 30111-28)

2022-07-09 05:19:00 | Weblog

2004年8月25日(水)



#237 加部正義「ムーン ライク ア ムーン」(バップ 30111-28)

加部正義のソロ・アルバム。83年リリース。加部正義・竹中尚人の共同プロデュース。

79年にこのふたりとジョニー吉長により「ジョニー・ルイス&チャー」を結成、82年にはバンド名を「ピンク・クラウド」と改称しているわけだが、このアルバムもその流れの中で作られている。

ふだんはべースを弾くマーちゃんが、このアルバムではもっぱらギターを弾いている。リード・ヴォーカルは一曲(SHINING BRAIN)のみ。チャーやジョニー、KAZこと南沢カズ(このひとはブルース畑のひとらしい)らが、他の曲ではリードをとっている。

チャーはタイトル・チューンの「MOON LIKE A MOON」以外では裏方に徹し、べースやキーボードを担当。

ドラムはもちろん、ジョニーが4曲で叩いているが、他にもBISHOP、SEIBOといったニックネームの若手ミュージシャンも参加している。

その他、ジョニーの奥さん金子マリ、チャー夫人のカンナ、マーちゃんのGF(多分)DEBI、マシュー・ザルスキー、ロミー木下といったおなじみの面子も顔を出しており、ファミリーな雰囲気のセッションという感じだ。

さて、問題はその中身だが、これがまた、まったく「売れ筋」とはほど遠い音楽(苦笑)。

12曲中10曲は歌詞のある「歌もの」なのだが、ヴォーカルを楽器のひとつとして捉えるような音録りをしているので、歌が全く前に出てこない。

曲調はサザン・ロック風あり、ジョニルチャ的ハードロックあり、プログレもどきあり、シャドーズをモダンにしたような、なんちゃってフュージョン・インストありと、いってみればバラバラだし、およそ統一感はない。しかも、曲によっては、ものすごくナイーブというかヘタ一歩手前な演奏もある(どの曲かは、聴いてみるとすぐわかります)。

いってみれば、仲間うちでワーッと集まって、好き勝手にセッションをやって、そのまま録音しちゃいました、って印象。

でも、不思議とそれが悪くないんだなあ。ロックって、もともとそんなもんだろって気がする。ロックって、本来、ゴッタ煮料理なんだと思う。

たとえば、オープニングの「そらみみ」。マーちゃんとマシューの硬質なギターの絡みがカッコいいハード・ブギ。

ハードなギター・プレイがいかしてるのは「SENSUAL HEART」。これを聴くだけで、マーちゃんがギタリストとしても一流であることがよくわかる。

ドアーズを80年代風にしたような、アンニュイな「PSYCHIC IMAGINATION」も面白い。

そして極めつけのサイケデリック・サウンドといえば、「NATIONAL BLUES」かな。筆者は、マーちゃんのプレイに、ヤードバーズ時代のジェフ・ベックを勝手に連想してしまった。とにかく、官能的な音色が素晴らしい。アルバム中のベスト・トラックだと思う。

「MOON LIKE A MOON」では、それに負けじとチャーも熱いプレイを聴かせているので、必聴。個人的には、マーちゃんのセンスの方が好みだけど。

ジョニルチャ=ピンクラとはまた別種の、スペーシーでハードなサウンドが面白いのが「HARD TIMES」。

南部風のひたすら泥臭いサウンド、垢抜けない歌詞がなんとも「気分」なのは「BONE HEAD WOMAN」。

TOTOあたりのプログレ・ハードもちょっと意識したかのようなナンバーは「TIME TELL YOU WHY」。

最後はインスト・カヴァー。ジム・シールズ作、ヴェンチャーズの演奏で知られる「ONLY THE YOUNG」でしめくくり。いかにも「エレキ世代」な彼ららしい選曲に、思わずにんまりしてしまう。

以上、取りとめのない作りでありながら、さすがにトップ・プロ、おさえるべきところはきちんとおさえてますんで、退屈はさせない仕組み。

とはいえ、ジョニルチャの固定ファン以外はたぶん買わないだろうなぁ、筆者の周辺でこんなアルバム持っているヤツ、他にいないし…と思っていたのも事実。

ところがどっこい、意外と根強い人気があるらしく、LP発売の11年後にはCDで復活、さらに10年後の今年7月、再びCDが発売されている。けっこう、隠れファンって多いんだね。

近年、加部、平尾、吉野らにより、ゴールデンカップスも再結成された。カップスのメンバーもいまや五十代だ。

また、一方では自身のバンドでギターも弾いている。シニア・ロッカーの代表として、精力的な活動を続けているマーちゃん。

それを見ていると、オレらもまだまだ現役でやれる、そう思わせてくれる。

未聴という皆さん。死ぬまでロックな男、加部正義のもうひとつの世界、ぜひ再発売されたCDで聴くべし!

<独断評価>★★★☆


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