2007年2月18日(日)
#347 エラ・フィッツジェラルド「エラ・アット・ジ・オペラ・ハウス」(ポリドール 23MJ 3084)
朝から天気の悪い、今日みたいな日には、こんな一枚かな。エラ・フィッツジェラルド、57年10月録音のライブ盤。シカゴのオペラ・ハウス、LAのフィルハーモニック・ホールにて収録。
「エラ・イン・ベルリン」をはじめとして、ライブに名盤の多いエラだが、これもその一枚だ。
当時39才のエラ。歌手として脂の乗り切ったころのライブなだけに、もう、悪いわけがないってもんでしょ。
バックをつとめるのは、オスカー・ピータースン、レイ・ブラウン(エラの当時の亭主でもある)、ハーブ・エリスら、ジャズ界のトップ・プレーヤーばかり。B面の3、4曲目は、JATPを従えていて、このメンツもスゴい。プレス(レスター・ヤング)にホーク(コールマン・ホーキンス)だぜ。
しかししかし、バックにばかり目が行っては、エラに失礼だ。とにかく、主役は彼女。
コール・ポーターの「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」にはじまり、ガーシュウィン兄弟の「オー・レディ・ビー・グッド」に終わる全9曲。どれも彼女が長い間じっくり歌いこんできた、お得意のナンバーばかり。
個人的には、マンディ=スティルマンの「ドンチャ・ゴー・ウェイ・マッド」のブルーズィな感覚、ジョニー・マーサーの代表曲「グッディ・グッディ」の強力無比なスウィング感、そしてベニー・グッドマンの十八番「サヴォイでストンプ」での圧倒的なスキャット、このあたりがツボ。
そのパンチの効いたパワフルな歌いぶりは、いまどきの娘っ子シンガーらなんぞに、とうてい真似の出来るものではないね。
一方、優しく情感あふれるバラード・ナンバーも、文句なしにいい。ロジャーズ=ハートの「ビウィッチト」、ストレイチ&リング=マーベルの「ジーズ・フーリッシュ・シングズ」、アーレン=コーラーの「イル・ウィンド」、スースドーフ=ブラックマンの「ヴァーモントの月」、いずれも心にしみる歌いぶりに感動。
そしてなんといっても極め付きは、JATPの錚々たるメンツを従えてのアンコール・ナンバー、「オー・レディ・ビー・グッド」。その当意即妙のアドリブ感覚、広い声域をフルに生かしたダイナミックな歌唱は、20世紀を代表するディーバ、歌のファースト・レディといった呼び名に恥じないパフォーマンスだ。
この一枚は、出来ればアナログ盤で、そして大型のオーディオ・セットで、低音を効かせて聴いてほしい。エラを支える、ダンナのスーベのプレイがまた、いいんだわさ。
歴史に残る、名唱名演。ナマ録の迫力は、やっぱりスゴい!
<独断評価>★★★★