NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#270 ウォーカー・ブラザーズ「Land Of A Thousand Dances」

2013-06-02 08:50:35 | Weblog
#270 ウォーカー・ブラザーズ「Land Of A Thousand Dances」(Take It Easy With The Walker Brothers/Polygram)

アメリカ出身、英国でブレイクしたブルーアイド・ソウル・グループ、ウォーカー・ブラザーズのヒット・チューン。クリス・ケナー、ファッツ・ドミノの共作。

原題よりもむしろ「ダンス天国」の邦題であまりにも有名なナンバー。日本ではこのウォーカーズと、ウィルスン・ピケットの66年のヒットが知られているせいか、この曲はピケットがオリジナルだと誤解されやすい。

しかし、実はこの曲、もともとはニューオーリンズのR&Bシンガー、クリス・ケナーが62年にリリースしヒットしたものがオリジナルなのだ。

ケナーは29年生まれ。ファッツ・ドミノやアラン・トゥーサンらと組んで活動していた彼の出した最大のヒットは 61年の「I Like It Like That」。これは「Something You Got」と改題されて、さまざまなアーティストにカバーされたから、ご存じの人も多いだろう。そして、もっとも多くのフォロワーにカバーされた、息の長いナンバーがこの「ダンス天国」なのだ。

この曲の構造は至ってシンプル。ワンコードで延々とプレイされるスタイルで、聴き手にもっとも強い印象を残しているのは、ウォーカーズでは「ラーラララー」、ピケットでは「ナーナナナー」というハミングコーラスだろう。

しかしですね。オリジナルのケナーのバージョンを聴いてみると、そのハミングはまったく聴くことが出来ないのだ。しかも、テンポもミディアム。意外でしょ。

実は65年に最初のカバー・バージョンが、カンニバル&ハンターズによって出たのだが、そこではじめて「ナーナナナー」というハミングのアレンジを聴くことが出来る。

同グループのリードシンガー、フランキー・ガルシアが、この曲をレコーディングする前にライブで何度も演奏するうちに、ふとアイデアがひらめいてハミングを入れてみたら観客にバカウケ。レコーディングもそのスタイルでやったというのだ。

これをピケットもそのまま踏襲。ハンターズは全米30位止まりだったが、彼は全米6位の大ヒットに仕立てたのだった。

一方ウォーカーズは、ハンターズ版よりも彼らの持ち味に近づけて「ラーラララー」とハミングを変えてみせた、というところだろう。

要するに、「ヒット・ソングは進化する」ということだね。前にも「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」などを材料に言ってきたことであるが、タイトルや歌詞、ビート、アレンジ、こういったものを思い切って変えていくことによって、より時代のニーズに即したかたちへ変容していくのが、ヒット・ソングなのである。

ウォーカーズ版「ダンス天国」は、ブラック・ミュージックにはまったく興味を持たない一般リスナー層にまでソウル・ミュージックを浸透させたということで、大きな役割を果たしたといえよう。

リード・ボーカルのスコットと、それにハモをつけるジョン。ふたりの歌い手のワイルドなシャウトが、英国、そして世界のリスナーを興奮させたのである。

その歯切れのいいビートは、今聴いても実にカッコいい。最高のダンスナンバーを、踊りながら堪能してくれ。

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