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音曲日誌「一日一曲」#186 小林麻美「TYPHOON」(CRYPTOGRAPH~愛の暗号/ソニーミュージック)

2023-10-04 05:21:00 | Weblog
2011年9月24日(土)

#186 小林麻美「TYPHOON」(CRYPTOGRAPH~愛の暗号/ソニーミュージック)





「その女(ひと)のことを、僕は40年前から好きだった。そして、今もなお」

な~んて、いかにもセンチな書き出しでスマソ。今回は筆者の個人的思い入れ120%を書きつけるだけなんで、それが気に入らないご仁は「てめぇの呟きなんか聞きたかねぇよ。チラシの裏にでも書いてろ、ペッ!」とスルーしてくれ。

小林麻美という、4才年上の、特別に美しい女性のことを意識したのは、71年。彼女がテレビドラマ「美人はいかが?」で脇役として出演しているのを観てからだ。。

主演の奈良富士子(今どきの女優でいうと柴咲コウタイプの女優さん)を明らかに食う(ように筆者には見えた)愛らしさで、彼女は筆者のハートをわしづかみにした。

以来、彼女は自分のアイドル・ランキングの、トップ1か2に、常にランクされていた。

ときおり芸能活動を休止したり、仕事をセーブしたり、そして結婚して完全に引退したりと、彼女のアイドル/芸能人としての実質的な活動期間はわりと短かったが、それでも十分印象に残る作品を残してきた。

その代表格が、彼女が30才を過ぎてから本格的に現場復帰して発表したアルバム「CRYPTOGRAPH~愛の暗号」だ。

彼女はそれまでのアイドル・ポップス路線を脱皮して、よりアーティスティックな表現をそのアルバムで見せてくれた。

アルバムほぼ一枚分、まるまるビデオ化するという、ビジュアル的展開も、84年当時では斬新なものだった。

きょう聴いていただくのは、シングルにはならなかったが、まちがいなく佳曲といってよいだろう「TYPHOON」だ。

松任谷由実の作品。アレンジは武部聡志。

ユーミンの曲ながら、小林麻美が歌うことにより、いわゆるユーミンぽさはほとんど感じられない。声のキャラクターがいかに、曲のイメージを塗り替えるか、よくわかるね。

でも何度も聴き込めば、ユーミンならではのセンスも十分感じられる。ことに転調してからの「あの夏の島の~」からのメロディラインとか、最高だよね。

武部聡志の繊細でやや控えめなアレンジも、彼女の線の細い、物憂げなボーカルと見事にマッチングしていた。今はもう製造されていない電子管楽器、リリコンかと思われる間奏の調べも、実にいい感じだ。

とにかく、曲を聴くだけで、あのPVの映像がいまも目に浮かんできて、至福のときを筆者に与えてくれる。これを神曲といわずして、何を神曲というのだ。

ところで筆者はほんものの小林麻美に、一度だけ遭遇したことがある。それもコンサートとかそういうのでなく、彼女のプライベート・タイムのときに。

十二、三年くらい前であったか、当時筆者はゴルフのレッスンを受けるために大森駅近くのスクールに通っていたのだが、ある日自転車に乗ってそこへ向かおうとしている筆者の目に、見覚えのある女性の姿が飛び込んできた。

それが、小林麻美だった。

彼女は車から降りてきて、笑顔で家族かだれか連れの人に手振りの合図をしていた。

長めの髪。長い手足。アイドル時代に比べてもさらに小顔になり、くっきりとした目鼻立ち。可愛いというよりはむしろりりしいといったほうがいい。見まちがえようもない、彼女本人だった。

そして彼女は僕の目には、うつし世の女神(ディーバ)そのものに見えた。

が、至福の瞬間は短かった。筆者は自転車に乗って移動していたのだ。立ち止まることも出来ず、あっという間に彼女の姿は視界から消えていった。

その間、ほんの1分足らず。

だが、その記憶は筆者の脳髄に一生刻み込まれた。

筆者は感謝した。最も美しいと30年近く思い続けていた女性が、そのイメージをまったく裏切らないかたちでいてくれたことに。

27年とはとんでもなく長い歳月だが(自分にとってもこれまでの人生の半分に相当するぐらいだ)、そんな隔たりなど、この曲は一瞬で忘れさせてくれる。

そう、この台風の季節が来るたびに「TYPHOON」は、不滅の佳曲としてよみがえるのである。

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