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音盤日誌「一日一枚」#211 モーニング娘。「ベスト!モーニング娘。1」(zetima EPCE-5089)

2022-06-13 05:01:00 | Weblog

2004年3月28日(日)



#211 モーニング娘。「ベスト!モーニング娘。1」(zetima EPCE-5089)

モーニング娘。の初ベスト盤。2001年リリース。

この31日には2001年からの3年間のベスト盤「ベスト!モーニング娘。2」をリリースする彼女たちだが、この「1」が打立てた230万枚という大記録に、果たしてどこまで迫れるだろうか。

娘。を国民的人気グループにまでのし上げた初ミリオン・ヒット「LOVEマシーン」に始まり、正式デビュー前、5万枚限定のインディーズ・シングル「愛の種」に至るまでの15曲。おなじみのナンバーが満載である。

ところであなたは、最新のモー娘。のシングル曲のタイトルは何か、言えるだろうか?

おそらく、大半のかたはご存じないのではないだろうか。

かつて、最強のヒットチャート常連であった娘。にしてこのありさま。いったい何故、こんなことになってしまったのだろうか?

この一枚を聴きながら、考えてみよう。

モーニング娘。は97年秋に5人で結成。翌年8人編成に増員し、「サマーナイトタウン」「抱いてHOLD ON ME」の連続ヒット、ことに後者は初めてチャート一位となり、一躍注目された。

この二曲に、成功の鍵があったのは間違いない。

聴いてみて感じるのは、「ギリギリ感」とでもいうべきもの。彼女たちが歌いこなせる限界のキーやテンポに挑戦し、はっきりいって「苦しい」ところさえあるが、そのエッジ感覚が実はミョーに色っぽいのだ。

ことに、当時メンバー中最年少ながら、抜群に歌のうまい福田明日香の存在は大きかった。(「Never Forget」などを聴くと、そのことを痛感する。事実、彼女が卒業した後、娘。の歌のテンションはいっぺんに下がってしまった。)

歌詞にしても、最近のシングル「愛あらばIT'S ALL RIGHT」「Go Girl~恋のヴィクトリー~」に見られるような健全・穏健路線ではなく、男女のドロドロとした恋愛模様を歌っている。これがまた、聴き手にとっては刺激的だった。

のちの彼女たちのセールス文句となった「セクシー」という概念が、笑いをとるためのネタではなく、本当にそこにあったのだ。

新旧の曲を聴き比べてみると、同じ名前でありながら、まったく別のグループになってしまった印象さえある。実際、共通のメンバーはたったの3人(安倍・飯田・矢口)だけだし。

娘。というグループは、ほぼ定期的に旧メンバーを卒業(脱退)させ、新メンバーを採用し、世代交代を行うことで生き延びてきたグループではあるが、現在の平均年齢の異常に低いメンバーでは、おそらく、初期のナンバーを歌いこなすことは事実上不可能だろう。

たえず新陳代謝を繰り返すこと、これは諸刃の剣なのだ。

事実、このアルバムでは一番後期の曲「恋愛レボリューション21」の後、リーダーの中澤裕子が卒業し、4期加入の石川梨華がフロントをつとめた「ザ☆ピース!」から、シングルのセールスは下降の一途をたどっている。

やはり、歌作りそのものをおろそかにして、アイドルとしてのキャラクターを前面に押し出すようになってきたことが、凋落(おおげさに言えば、だが)の主要因ではないかと思うね。

まあそれでも、今だって十分人気グループであることに変わりはないが、全盛期、すなわち「LOVEマシーン」「恋のダンスサイト」「ハッピーサマーウェディング」「I WISH」と続く快進撃の時代に比べれば、そのパワー、一般リスナーへのアピール度は何分の一かに低下してしまったといえる。

「ベスト!モーニング娘。2」のセールスはおそらく、50万枚がいいとこかなという気がするね。

やはり、230万枚の実績はダテじゃない。どの曲も、プロデューサー兼作詞・作曲のつんく♂をはじめとして、アレンジャーの桜井鉄太郎、前嶋康明、小西貴雄、河野伸、ダンス☆マンといった人たちが実にクォリティの高い、いい仕事をしている。アイドル・ポップスといえば昔はお粗末なものしかなかったものだが、繰り返し聴くにたるだけのものがこの一枚にはある。

個人的には、フォーク・ロック路線の「愛の種」「モーニングコーヒー」、ラテン・テイストあふれる「サマーナイトタウン」、あの8人以外にはおそらく歌いこなせないであろうハイパーR&Bチューン「抱いてHOLD ON ME」、そしてバラードの名曲「Memory 青春の光」といった初期のナンバーが圧倒的に好みだな。娘。サウンドはこの「メモ青」で完成し、ピークを迎えたと断言していい。

もちろん、その後の「ラブマ」に代表されるお祭り系チューンも楽しい。セリフや合いの手、SEなどスタジオ録音ならではのお遊びもてんこ盛りで、あきさせない。

全盛期メンバーのあいつぐ卒業により、曲がり角を迎えているモーニング娘。このまま、お子ちゃま向きの甘ったるいアイドル・グループ路線を続けていくのか、あるいはもう一度原点に立ち戻って、曲作りを一から見直し、世代を越えたヒットで国民的な人気を取り戻すのか。

娘。そしてつんく♂から、今後も目が離せそうにない。

<独断評価>★★★★


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