#105 supercell「君の知らない物語」(Sony Music)
少し遅めのスタートとなったが、今年もよろしく。新年第一弾はこれ、話題のクリエイター集団、supercellのメジャーデビューシングルだ。
supercellは、作詞・作曲・プロデュース担当のミュージシャン、ryoを中心とするチーム。ボーカロイド・初音ミクをフィーチャーした一連の作品でネット界に大反響を巻き起こし、一躍メジャーな存在となった。まさにネット時代の、寵児的存在なのだ。
そのsupercellが、満を持して世に問うたのが、このシングル曲。昨年放映された中でも最も印象的なアニメのひとつだった「化物語(ばけものがたり)」(原作は西尾維新によるライトノベル)のエンディングテーマとして制作された。
この曲ではボーカルは初音ミクのようにバーチャルなものでなく、生身のシンガーを初登用している。ニコニコ動画で初音ミクの曲を何曲もカバーしていた縁でryoの目に(というか耳に)とまったらしい、nagi(ニコ動でのHNはガゼル)がリードボーカルをつとめているのだが、これがまた既存のシンガーにはない清新な魅力を放っているのだ。
あくまでも高く清く澄んだ声、でもちょっと儚さやもろさを感じさせるその歌声は、どこにでもいそうで実はどこにもいない、そんな印象だ。
高音部で少し苦しげな発声になり、素人っぽさが抜けきらないあたりも、逆に彼女ならではの持ち味。そういう意味で、亡き坂井泉水あたりに通じるものがある。
またバックには、ギターの西川進をはじめとする、実力派スタジオミュージシャンを揃えている。中でも、ピアノの渡辺シュンスケがダイナミックな演奏を聴かせてくれるので、こちらにも注目だ。
最近、スキマスイッチ、アンジェラ・アキ、WEAVERなど、ピアノ・サウンドをフィーチャーしたアーティスト、あるいは楽曲が増えてきているように思うが、supercellもまた、ピアノがそのサウンドの要であると見た。
なお、ご覧いただくPVの映像は、「化物語」本編とは独立した内容ながらも、主人公の高校生カップルが「ほしのさと天文台」(実在していない)に夏の星座を観に行くといった設定で、アニメの内容とも微妙にリンクした一編の青春ドラマになっている。
自分自身には、こんな甘酸っぱい青春の思い出など皆無ではあるが、これを観て「君の知らない物語」を聴くと、不思議と懐かしさがわき起こってくる。「セイシュンやな~」という感じ(笑)。
誰の身にも起こりそうな、でも現実よりはずっと魅力的な「もうひとつの物語」を見事に作りあげ、若い読者やリスナーの心をガッチリとつかんだ西尾維新、そしてsupercellの実力。脱帽であります。
少し遅めのスタートとなったが、今年もよろしく。新年第一弾はこれ、話題のクリエイター集団、supercellのメジャーデビューシングルだ。
supercellは、作詞・作曲・プロデュース担当のミュージシャン、ryoを中心とするチーム。ボーカロイド・初音ミクをフィーチャーした一連の作品でネット界に大反響を巻き起こし、一躍メジャーな存在となった。まさにネット時代の、寵児的存在なのだ。
そのsupercellが、満を持して世に問うたのが、このシングル曲。昨年放映された中でも最も印象的なアニメのひとつだった「化物語(ばけものがたり)」(原作は西尾維新によるライトノベル)のエンディングテーマとして制作された。
この曲ではボーカルは初音ミクのようにバーチャルなものでなく、生身のシンガーを初登用している。ニコニコ動画で初音ミクの曲を何曲もカバーしていた縁でryoの目に(というか耳に)とまったらしい、nagi(ニコ動でのHNはガゼル)がリードボーカルをつとめているのだが、これがまた既存のシンガーにはない清新な魅力を放っているのだ。
あくまでも高く清く澄んだ声、でもちょっと儚さやもろさを感じさせるその歌声は、どこにでもいそうで実はどこにもいない、そんな印象だ。
高音部で少し苦しげな発声になり、素人っぽさが抜けきらないあたりも、逆に彼女ならではの持ち味。そういう意味で、亡き坂井泉水あたりに通じるものがある。
またバックには、ギターの西川進をはじめとする、実力派スタジオミュージシャンを揃えている。中でも、ピアノの渡辺シュンスケがダイナミックな演奏を聴かせてくれるので、こちらにも注目だ。
最近、スキマスイッチ、アンジェラ・アキ、WEAVERなど、ピアノ・サウンドをフィーチャーしたアーティスト、あるいは楽曲が増えてきているように思うが、supercellもまた、ピアノがそのサウンドの要であると見た。
なお、ご覧いただくPVの映像は、「化物語」本編とは独立した内容ながらも、主人公の高校生カップルが「ほしのさと天文台」(実在していない)に夏の星座を観に行くといった設定で、アニメの内容とも微妙にリンクした一編の青春ドラマになっている。
自分自身には、こんな甘酸っぱい青春の思い出など皆無ではあるが、これを観て「君の知らない物語」を聴くと、不思議と懐かしさがわき起こってくる。「セイシュンやな~」という感じ(笑)。
誰の身にも起こりそうな、でも現実よりはずっと魅力的な「もうひとつの物語」を見事に作りあげ、若い読者やリスナーの心をガッチリとつかんだ西尾維新、そしてsupercellの実力。脱帽であります。