NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#227 ローリング・ストーンズ「Ain't Too Proud To Beg」(It's Only Rock 'N Roll/Rolling Stones Records)

2023-11-14 05:00:00 | Weblog
2012年7月29日(日)

#227 ローリング・ストーンズ「Ain't Too Proud To Beg」(It's Only Rock 'N Roll/Rolling Stones Records)





ローリング・ストーンズ、74年のアルバムより。ノーマン・ホイットフィールド、エディ・ホーランドの作品。

今年結成50周年を迎えた、ストーンズ。ミック69歳、キース68歳、ロニー65歳、チャーリー71歳。平均年齢、実に68歳超ながらもますます意気盛ん、最長命のトップ・バンドとしての記録を更新中である。

そんな彼らの、一番脂が乗り切っていた時代のレコーディング(ロニーは未参加だが)。

曲はといえば、60年代に一世を風靡した黒人ボーカルグループ・テンプテーションズの大ヒット曲。プロデューサーが名チームとの誉れ高いHDH(ホーランド=ドジャー=ホーランド)から、ノーマン・ホイットフィールドにバトンタッチされてからの作品。ただし、作詞はエディ・ホーランドが残留して担当している。

ストーンズの演奏スタイルについて、いまさらあれこれ語るのも野暮というもんだろう。とにかく、「ストーンズ流」を何十年も貫き通している。60年代の末にギターがブライアン・ジョーンズからミック・テイラーに交代したあたりでサウンドがほぼ完成、以降は若干時代のテイストを加味しながらも、基本的な線はあくまでも墨守するという流儀が続いているのだ。

そしてなにより変わらないのが、ミック・ジャガーのボーカル。特徴あるダミ声はそのまま、特に技術的に向上したという印象はないが、それでも彼の存在感は、他のすべてのロッカーたちを軽く凌駕している。ストーンズは、やはり、ミック不在ではストーンズと呼べまい。

「Ain't Too Proud To Beg」もまた、典型的な「ストーンズ節」のひとつだ。スタジオ録音のデッドな感じが、オリジナルのテンプテーションズの立体的なサウンドとは対照的で、音響に奥行きはないかわりに、すぐそばでストーンズで演奏してくれている感じ。

この曲のキーポイントは、やはり前面にフィーチャーされているピアノだろうな。演奏しているのは、6人目のストーンズことイアン・スチュアートではなく、5人目のビートルズこと、ビリー・プレストン。彼の叩き出すタイトなリズムなしでは、この曲はしまりがなくなったに違いない。

この曲ではギターリフやソロに頼ることなく、ひたすらミックのボーカルと、バックのコーラスでまとめている。このコーラスにしても、テンプスのプロフェッショナルらしく洗練されたそれとはだいぶん趣きが違って、いかにもラフな仕上がりなのだが、そこがまさにストーンズ流なのだ。

モータウン発の都会的な楽曲も、ストーンズがアレンジすれば、むしろ南部風の、泥臭いながらも懐かしさを感じさせるナンバーに一変する。

これぞストーンズ・マジックであり、変わらぬ魅力のみなもとだと思うね。

どのくらい違っているかを知るために、オリジナル版も加えてみた。ぜひ、じっくりと聴き比べてみて。



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