今年最初のSFレビューでございますヽ( ´ー`)ノ
読み始めはちょっと手こずったけど、慣れたらさくさくでした。この作家の作品は、世界観が独特だからなー。
三惑星の探求/コードウェイナー・スミス、伊藤典夫・酒井昭伸訳(ハヤカワ文庫SF)
唯一無二の独創的な未来史「人類補完機構シリーズ」を描き出して右に出る者のいない、コードウェイナー・スミス。本邦では長いこと絶版状態が続いていましたが、2016年以降ハヤカワ文庫から彼の全短編を訳出する試みが続いており、3冊目のこの本をもって全短編の訳出が完了となります。といっても、鴨は80年代に一度ハヤカワ文庫で出版された「鼠と竜のゲーム」「シェイヨルという名の星」「第81Q戦争」の3冊を全て持っているので、この旧3冊にも収録されなかったキャッシャー・オニール・シリーズ目当てで、「三惑星の探求」のみ購入いたしました。
で、キャッシャー・オニール・シリーズについて。
このシリーズは、「人類補完機構」の歴史の中でも最も後期に位置する作品といわれています。「人類補完機構」系の作品を読んだことのある方ならご存知の通り、前期に当たる作品と後期に当たる作品では全くテイストが異なり、人類の宇宙開拓史でもあり勢いと緊迫感に満ちた前期作品に比べ、後期作品では広がるだけ広がり切った人類社会が爛熟期を迎え、緩やかに停滞していく過程が描かれています。動物を改造して人間の姿にして使役する、「下級民」というグロテスクな存在が主要な登場人物として現れる時代でもあります。
キャッシャー・オニール・シリーズは、こうした後期作品の特徴が端的に現れた作品だな、というのが、鴨の第一印象。故郷の星を追われたキャッシャー・オニールが他の惑星を経巡りながらある力を身につけて復讐を果たす、という典型的な復讐譚の筋書きはありますが、キャッシャー・オニール自身のキャラクターとしての特徴や魅力といったものはあまり感じられず、むしろ「宝石の惑星」の馬や「嵐の惑星」のト・ルースといった人間以外のキャラクターが異彩を放ち、物語を牽引します。筋書きを追うよりも、こうした舞台設定や世界観の異質さを楽しめ!という性質の作品だと思います。
特に、「嵐の惑星」のほぼ主役ともいえる下級民ト・ルースの美しさ、そして何よりもグロテスクさ!ただ一人の男を愛し、尽くし、奉仕するためだけに亀から作り出され、男を想う気持ちも男を守るための能力も人為的に刷り込まれ、常人を超える力をもってその男を保護し続ける(そしてそのことに何らの疑問も抱かない、何故ならそのように造られているから)齢3万年に至る絶世の美少女、という針の振り切れたキャラ設定は、正に「人類補完機構」後期でなければできない荒技かとヽ( ´ー`)ノある意味、SFの究極の姿と言ってもいいのかもしれません。一周してきて清々しいですわ。
シリーズ全編を通して感じられる西欧的宗教の香りも、いかにも「人類補完機構」後期作品ならでは。動物を改造して使役するという発想自体、東洋的な価値観からは違和感を禁じ得ませんし。
というわけで、鴨的にはキャッシャー・オニール・シリーズはいろいろと突っ込みどころ満載でして、でも面白くないわけではないです、念のため。この世界観に共感できる人なら、とても楽しめる作品だと想います。鴨は残念ながら、その域に辿り着けませんでしたが(^_^;
それ以外の作品群は、ストレートなSFまたは幻想小説としてよく出来た小品ばかりで、鴨的にはこちらの方がしっくりきました。
うーん、人を選ぶ短編集だなーこれは。世間一般がイメージする「SF」とはかなりテイストが異なりますので、初心者向けではないですね。
読み始めはちょっと手こずったけど、慣れたらさくさくでした。この作家の作品は、世界観が独特だからなー。
三惑星の探求/コードウェイナー・スミス、伊藤典夫・酒井昭伸訳(ハヤカワ文庫SF)
唯一無二の独創的な未来史「人類補完機構シリーズ」を描き出して右に出る者のいない、コードウェイナー・スミス。本邦では長いこと絶版状態が続いていましたが、2016年以降ハヤカワ文庫から彼の全短編を訳出する試みが続いており、3冊目のこの本をもって全短編の訳出が完了となります。といっても、鴨は80年代に一度ハヤカワ文庫で出版された「鼠と竜のゲーム」「シェイヨルという名の星」「第81Q戦争」の3冊を全て持っているので、この旧3冊にも収録されなかったキャッシャー・オニール・シリーズ目当てで、「三惑星の探求」のみ購入いたしました。
で、キャッシャー・オニール・シリーズについて。
このシリーズは、「人類補完機構」の歴史の中でも最も後期に位置する作品といわれています。「人類補完機構」系の作品を読んだことのある方ならご存知の通り、前期に当たる作品と後期に当たる作品では全くテイストが異なり、人類の宇宙開拓史でもあり勢いと緊迫感に満ちた前期作品に比べ、後期作品では広がるだけ広がり切った人類社会が爛熟期を迎え、緩やかに停滞していく過程が描かれています。動物を改造して人間の姿にして使役する、「下級民」というグロテスクな存在が主要な登場人物として現れる時代でもあります。
キャッシャー・オニール・シリーズは、こうした後期作品の特徴が端的に現れた作品だな、というのが、鴨の第一印象。故郷の星を追われたキャッシャー・オニールが他の惑星を経巡りながらある力を身につけて復讐を果たす、という典型的な復讐譚の筋書きはありますが、キャッシャー・オニール自身のキャラクターとしての特徴や魅力といったものはあまり感じられず、むしろ「宝石の惑星」の馬や「嵐の惑星」のト・ルースといった人間以外のキャラクターが異彩を放ち、物語を牽引します。筋書きを追うよりも、こうした舞台設定や世界観の異質さを楽しめ!という性質の作品だと思います。
特に、「嵐の惑星」のほぼ主役ともいえる下級民ト・ルースの美しさ、そして何よりもグロテスクさ!ただ一人の男を愛し、尽くし、奉仕するためだけに亀から作り出され、男を想う気持ちも男を守るための能力も人為的に刷り込まれ、常人を超える力をもってその男を保護し続ける(そしてそのことに何らの疑問も抱かない、何故ならそのように造られているから)齢3万年に至る絶世の美少女、という針の振り切れたキャラ設定は、正に「人類補完機構」後期でなければできない荒技かとヽ( ´ー`)ノある意味、SFの究極の姿と言ってもいいのかもしれません。一周してきて清々しいですわ。
シリーズ全編を通して感じられる西欧的宗教の香りも、いかにも「人類補完機構」後期作品ならでは。動物を改造して使役するという発想自体、東洋的な価値観からは違和感を禁じ得ませんし。
というわけで、鴨的にはキャッシャー・オニール・シリーズはいろいろと突っ込みどころ満載でして、でも面白くないわけではないです、念のため。この世界観に共感できる人なら、とても楽しめる作品だと想います。鴨は残念ながら、その域に辿り着けませんでしたが(^_^;
それ以外の作品群は、ストレートなSFまたは幻想小説としてよく出来た小品ばかりで、鴨的にはこちらの方がしっくりきました。
うーん、人を選ぶ短編集だなーこれは。世間一般がイメージする「SF」とはかなりテイストが異なりますので、初心者向けではないですね。