茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

利休百首3 こころざし

2008-02-10 20:52:14 | 利休百首
 利休百首について書いていきたいと意思表明して、1,2と書きすすめたものの、その後随分時間があいてしまいました。今後は毎週一首と決めて書いていきたいと思います。今日は三首目について。


3.こころざし深き人にはいくたびも あはれみ深く奥ぞ教ふる


 志をもって取り組む弟子には、師匠はどんな時も心をこめて親切丁寧に教えよう。
 参考にした井口海仙著「利休百首」では、賀茂真淵と本居宣長の子弟のやりとりを例にあげていた。賀茂真淵に感じ入り弟子入りした宣長が古事記の注釈をしたいと言ったところ、真淵は「学問の道は低いところから段々高いところへあがっていくようにしなければならない。低いところがわからないのに、高いところにあがりだすのは危ういことだ。(中略)順をふまなくてはならない。」と諭し教え、その後憐れみ深くごまごまと指導したとあった。

 確かに何でも突然できるようになるわけではなく、徐々に段々と学びながら極めていくものだろう。先生とはその道を既に歩み、学ぶに大切な順序や方法を取得したからこそ弟子を導くことができる。
 教えてもらう側と教える側では立場も違い、両方を経験してみて始めてそれぞれの大変さを知ることになる。私は茶道の世界では弟子の立場しか経験していないが、学生時代の家庭教師や、サークル・会社の先輩として、後輩を指導する立場にはなったことがある。教える立場になったとき、教えてもらっていた頃の自分の無知さを認識し、わからない相手に丁寧に粘り強く教えてくれた先輩方に改めて深く感謝したものである。そして、学ぶ過程で自分が迷い、手間取った経験を糧にして、後輩にはスムーズに仕事が進むように教える努力をした。
 近年、企業は人に教えるということをコストに換算して、教育にかかる費用を減らす為派遣を安価な人材として積極的に登用している。しかし、人に教えるということはコストに変えられないものだと思う。それをお金がかかるから、面倒だから、とやめ、安価な人材に頼り、自分の眼先の仕事だけをするようになった時、その企業は堕落していくのではないかと思っている。
 家庭でもしかり。親が自分が受け継いだいいものを子供に教えることを止めたとき、子供の堕落が始まる。友達親子というのを聞くと、教えることを放棄してしまったのではないかと少々心配になる。何が正しくて何が悪いことなのか、いうべき時に言い、自分が嫌な思いをしても子供にきちんと教え導く義務が親にはある。

 教えるということはどの世界でもとても体力気力のいることだが、生きていく上で大切なこと。そして、教えてもらう為に謙虚になり、自分なりの努力をすることも大切なこと。茶道ももちろんだが、自分が何かをしよう、学ぼうと思うとき、志を深くもつこと、情熱をもって一生懸命やることを忘れないようにしたい。折角取り組むのだから、何事も前向きに進みたい。

 私が2年半前、茶道に対してより興味を持ち、先生に問いかけるようになった時から先生はより深く指導して下さるようになったように感じている。必要な時に必要なことを与え、質問に対してもストレートな答えだけでなく、関連する全てのことをお話してくれるようになった。そのご指導に応えるべく、これからも真摯にお稽古に臨みたい。その気持ちを私が持ち続けることができれば、先生は順を追って憐れみ深く奥を教え、導いて下さるはずである。そして、いつかは自分が教える立場になることも考えて、その教え方についても学びとりたい。
 この三首目からそんなことを思った。

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2 コメント

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好きな一首です (ゴマたん)
2008-02-10 22:43:07
この一首は私も好きなんです。
茶道の世界に奥深く入るにしたがい、点前だけでなく精神面でも成長してきますよね。
私は最近、先生がおっしゃることひとつひとつが
「なるほど~」と深くうなずけるようになってきました(といっても、多分、先生が伝えたいことの半分ぐらいでしょうが、、、)
あと、先生がずっと前におっしゃったことは、やっぱり正しかったんだ、と、ふと気づくようにもなってきました。

たまごさんの先生も、すばらしい先生ですね。
師弟の縁も一期一会というか、不思議なものですよね~。

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そうですか (m-tamago)
2008-02-12 23:12:08
ゴマたんさん、こんばんは。
いい言葉ですよね。
私も親や先生に言われていたことが、最近になってやっとなるほど!と合点が行くことばかりで、感謝しています。その時わからなくても、その先に気づくことってたくさんありますよね。

本当に、師弟の縁も一期一会。出会いを大切に。
いい先生に巡り合えたのだからお互い頑張りましょうね~!
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