旅行に行ったり、風邪をひいたりですっかりご無沙汰してしまいました。今年はインフルエンザも早い時期から流行っているようですが、皆さんお元気ですか。
さて、先日、近場の温泉場である箱根強羅にでかけてきました。この界隈は箱根ガラスの森、星の王子さまミュージアム、ポーラ美術館、箱根ラリック美術館、彫刻の森美術館、箱根園、成川美術館、箱根美術館、箱根湿生花園など様々な見どころがありますが、車でないと移動しずらい為、電車でのんびり出かけた私たちは宿での温泉と食事が楽しめればいいという位の気持ちで出かけました。それでも折角だから宿への乗り継ぎである小田原、箱根湯本、強羅で何かないものかとガイドブックをめくっていたところ、強羅の駅程近い場所にある強羅公園が目につき、茶室もあるという言葉が私の心を捕らえました。
強羅公園は山の傾斜をうまく活用した美しい広々とした公園、温室やバラ園もあり、全体としては洋風とも和風ともいえない造りですが、綺麗に整備され調和がとれています。
その一角に「白雲洞茶苑」はありました。大正時代初め、益田鈍翁によって建設され、原三渓に引き継がれ、昭和に松永耳庵に継承された茶室。この三人の名前は茶を学ぶ人なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。日本経済発展に尽くし、茶道など文化への貢献もあり、小田原三大茶人とも呼ばれています。それぞれの名前は知っていましたが、強羅の茶室をこの3人が引き継いだという繋がりには少々驚きました。
この「白雲洞茶苑」は面白い作りをしています。寄付を含めて四棟の席があり、山の斜面を利用して、巨岩を到る所に配置し、茶室までは山道を登って山奥に向かうような風情になっています。茶室や露地は平坦な場所にあるものが多い中、珍しい作りだと思います。足もとに気をつけ、脇に茂る木々を見上げながら石段を登り切ると眼下に美しい風景が広がっています。ふっと一息ついて茶室に入り、蓬饅頭と抹茶を頂戴しました。
「白雲洞」と呼ばれるこの席は、近代数寄者茶人の間に流行した田舎家の席の作例とかで、山村農家の古材を生かし、囲炉裏より小さく、大炉よりは大きい炉が切られ、縁なしの畳がひかれた八畳茶室。点前座からは持仏堂が望めます。この茶室を作った鈍翁は自分の大切なものをここに飾り、祈り見つめながら、一服の茶を点てたのでしょう。持仏堂には今はここに関わった鈍翁、三渓、耳庵三名の写真が飾られ、天目茶碗と花が供えられていました。点前座に座らせて頂くとなんだかのんびりした気持ちになりました。
白雲洞づたいに降りていくと、石炉をもつ四畳半の寄付があります。長方形の石炉が据えられ、四畳半ながら畳二枚の耳が切り落とされているのが特徴的でした。
その下には「白鹿湯」と名付けられた岩風呂。鈍翁が建築し、三渓が名づけた岩風呂からは秋の風景がのぞいていました。茶室と風呂がこのように繋がった場所にある造りは初めて目にしました。湯につかり、リラックスした後、茶人達は一服の茶を頂いたのでしょうか。冬はこんな吹きさらしの中では寒そうだあと思いましたが、夏、風通しのいいこの岩風呂で汗を流した後に飲むお茶はさぞおいしかっただろうなあと想像しました。
さらに下に進むと「対字斎」。こちらは二代目の庵主である三渓が居室もかねて作った茶室で、広縁が設けられ、八畳と四畳の水屋がついていました。広々として、ガラス越しに美しい風景が見られます。
「白雲洞」に戻ると先ほどお茶を点ててくださった方が、この上にもお茶室があるのでご覧になって下さいねと声をかけて下さいました。靴を履いて、上に登りますと、「不染庵」。二畳台目に四畳半の寄付がついています。この茶室は仰木魯堂の作品で茶室から離れた自由な工夫がなされているとのことでした。
不思議なご縁でこの茶室をゆっくり拝見することができました。中に入れない茶室も多いですが、こうして点前座に座らせて頂いたり、ゆっくりお茶を頂きますと、昔の茶人の思いも少しながら感じることができていいものです。お抹茶を点てて下さった方もこの茶室の歴史をよくご存じで丁寧にお説明下さり、大切に守っているのだなと感じる物腰で、気持ちのよいひとときでした。やはり茶室は誰かに使われてこそ、なのかなと思いました。
帰ってからパンフレットを拝見して、「白雲洞茶苑」の裏に「茶花園」があることを発見しました。四季それぞれの茶花が集められているとのこと、今回は見損なってしまいましたが、いつかまた訪れ、茶花を拝見したいと思います。
お近くの方、一度訪ねてみてください。
ここ数年で、旅に出るとどこかしらに茶室が存在するものだと感じています。旅行に、茶室拝見し、お茶を頂くという目的が追加され、楽しみが増えました。今回久しぶりに思いがけず出会った「白雲洞茶苑」を見て、一昨年訪ねた鶴ケ城の茶室を思い出しました。あれも雪舞い落ちる寒い12月でした。年の最後にいい出会いをしました。
麟閣
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/842e5c11ce51068db0226db943f2693b
さて、先日、近場の温泉場である箱根強羅にでかけてきました。この界隈は箱根ガラスの森、星の王子さまミュージアム、ポーラ美術館、箱根ラリック美術館、彫刻の森美術館、箱根園、成川美術館、箱根美術館、箱根湿生花園など様々な見どころがありますが、車でないと移動しずらい為、電車でのんびり出かけた私たちは宿での温泉と食事が楽しめればいいという位の気持ちで出かけました。それでも折角だから宿への乗り継ぎである小田原、箱根湯本、強羅で何かないものかとガイドブックをめくっていたところ、強羅の駅程近い場所にある強羅公園が目につき、茶室もあるという言葉が私の心を捕らえました。
強羅公園は山の傾斜をうまく活用した美しい広々とした公園、温室やバラ園もあり、全体としては洋風とも和風ともいえない造りですが、綺麗に整備され調和がとれています。
その一角に「白雲洞茶苑」はありました。大正時代初め、益田鈍翁によって建設され、原三渓に引き継がれ、昭和に松永耳庵に継承された茶室。この三人の名前は茶を学ぶ人なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。日本経済発展に尽くし、茶道など文化への貢献もあり、小田原三大茶人とも呼ばれています。それぞれの名前は知っていましたが、強羅の茶室をこの3人が引き継いだという繋がりには少々驚きました。
この「白雲洞茶苑」は面白い作りをしています。寄付を含めて四棟の席があり、山の斜面を利用して、巨岩を到る所に配置し、茶室までは山道を登って山奥に向かうような風情になっています。茶室や露地は平坦な場所にあるものが多い中、珍しい作りだと思います。足もとに気をつけ、脇に茂る木々を見上げながら石段を登り切ると眼下に美しい風景が広がっています。ふっと一息ついて茶室に入り、蓬饅頭と抹茶を頂戴しました。
「白雲洞」と呼ばれるこの席は、近代数寄者茶人の間に流行した田舎家の席の作例とかで、山村農家の古材を生かし、囲炉裏より小さく、大炉よりは大きい炉が切られ、縁なしの畳がひかれた八畳茶室。点前座からは持仏堂が望めます。この茶室を作った鈍翁は自分の大切なものをここに飾り、祈り見つめながら、一服の茶を点てたのでしょう。持仏堂には今はここに関わった鈍翁、三渓、耳庵三名の写真が飾られ、天目茶碗と花が供えられていました。点前座に座らせて頂くとなんだかのんびりした気持ちになりました。
白雲洞づたいに降りていくと、石炉をもつ四畳半の寄付があります。長方形の石炉が据えられ、四畳半ながら畳二枚の耳が切り落とされているのが特徴的でした。
その下には「白鹿湯」と名付けられた岩風呂。鈍翁が建築し、三渓が名づけた岩風呂からは秋の風景がのぞいていました。茶室と風呂がこのように繋がった場所にある造りは初めて目にしました。湯につかり、リラックスした後、茶人達は一服の茶を頂いたのでしょうか。冬はこんな吹きさらしの中では寒そうだあと思いましたが、夏、風通しのいいこの岩風呂で汗を流した後に飲むお茶はさぞおいしかっただろうなあと想像しました。
さらに下に進むと「対字斎」。こちらは二代目の庵主である三渓が居室もかねて作った茶室で、広縁が設けられ、八畳と四畳の水屋がついていました。広々として、ガラス越しに美しい風景が見られます。
「白雲洞」に戻ると先ほどお茶を点ててくださった方が、この上にもお茶室があるのでご覧になって下さいねと声をかけて下さいました。靴を履いて、上に登りますと、「不染庵」。二畳台目に四畳半の寄付がついています。この茶室は仰木魯堂の作品で茶室から離れた自由な工夫がなされているとのことでした。
不思議なご縁でこの茶室をゆっくり拝見することができました。中に入れない茶室も多いですが、こうして点前座に座らせて頂いたり、ゆっくりお茶を頂きますと、昔の茶人の思いも少しながら感じることができていいものです。お抹茶を点てて下さった方もこの茶室の歴史をよくご存じで丁寧にお説明下さり、大切に守っているのだなと感じる物腰で、気持ちのよいひとときでした。やはり茶室は誰かに使われてこそ、なのかなと思いました。
帰ってからパンフレットを拝見して、「白雲洞茶苑」の裏に「茶花園」があることを発見しました。四季それぞれの茶花が集められているとのこと、今回は見損なってしまいましたが、いつかまた訪れ、茶花を拝見したいと思います。
お近くの方、一度訪ねてみてください。
ここ数年で、旅に出るとどこかしらに茶室が存在するものだと感じています。旅行に、茶室拝見し、お茶を頂くという目的が追加され、楽しみが増えました。今回久しぶりに思いがけず出会った「白雲洞茶苑」を見て、一昨年訪ねた鶴ケ城の茶室を思い出しました。あれも雪舞い落ちる寒い12月でした。年の最後にいい出会いをしました。
麟閣
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/842e5c11ce51068db0226db943f2693b
大正昭和の 大数寄者 御三人の + 魯堂
茶道を脱した 自由闊達心を 肌で観ずる
空間
いいですねぇ
お茶をたしなむ方ならではの、
旅の楽しみですね。
目指して行くのもよいし、思いがけず遭遇するというのもまたよいですね。
本好きの友人は、旅先で必ず古本屋に入り、大量に買い込むそうです。それもまたひとつの旅の楽しみですね。
本当に素敵でした。
石の階段を上っていると自分が山奥にきたかのような錯覚に陥りました。登りきった時に見えたニシキギの枝がなんだかかわいらしくて。
空いていたのもよかったです。
旅先の公園やお城には茶室があることが多くて、結構楽しいです。
旅先で古本屋、これまたいいねえ。重そうだけど、違った場所ならではの珍しい貴重な本が手に入りそうだよね。
この近くまで行っているのに
私ったら全然気がつきませんでした
鶴ヶ城も地元なのに
お茶室に入ってないし・・・
日ごろの心がけがしのばれます・涙
だいたい お茶の稽古に行ってない・・・
何とかしなきゃと思っています
おほめ頂き、ありがとうございます。
今度この周辺にいらしたら立ち寄ってみてください。なかなか味わいありましたよ。お茶代500円で、茶室の中もじっくり拝見できますので~。