遊月(ゆづき)の日々これ修行なり~

パワースポット研究家(おたる案内人)でセラピスト遊月のブログ
【パワースポットニッポン(VOICE)北海道担当】

結ばれるべき人がいるなら~良縁を結ぶ西野神社

2021-01-02 22:22:00 | 100物語【パワースポット物語】
【遊月100物語 その9】良縁を結ぶ西野神社


人を好きな気持ちをコントロールできたら、どれほど救われる人がいるだろう。好きな気持ちを止められるなら苦労はしない。

「悪いことは言わないから、忘れなさい」
典子は親友だと思っていたのにと、その言葉に悔しい気持ちになると同時に、いいえ、親友だからこそなのだと、ありがたい気持ちにもなる。
でも気持ちは動かなかった。

「言われなくてもそうしようと思っているの」
「それはわかっているよ。でもどこかで踏ん切りつけないと」
諭すように典子は言った。ありがたいけど、うざくも感じる。

「忘れようと決めて忘れられるくらいなら、誰も苦しんだりしない」
典子の言う通りだと思いながら、つい反論してしまう。
非難されるようなことをしているのはわかっている。だからこそ、誰か一人でいいから肯定してほしかった。わかるよ、仕方ないよねと言ってほしかった。

「たぶん一番苦しいのは、旦那さんなんじゃない? 」
その一言で何かがプチンと切れてしまう。
「そんなことわかっている。一番悪いのは私だってこともわかっている。だけど、どうしようもないの。それが苦しくてたまらないの」
叫ぶようにそう言うと、ハンドルに突っ伏して泣いてしまった。

結婚するまで勤めていた職場の同僚だった典子とは、月一でランチに出掛けている。だけど苦しいこの恋の話をしたのは今日がはじめてだった。
レストランでは人の目があり、ちゃんと話せなかったからちょっと話すねと、家まで送り届けたのに車から降りず、典子は話し始めたのだ。

夫のことを言われるのが今は一番嫌だった。彼は何一つ悪くないからなおのこと、自分の正当性を保てなくて、思考が止まってしまうのだ。
「諦められるなら、それが一番だって思っている。だけどできないの」
少し泣いて落ち着きを取り戻し、顔を上げると私は言った。頭の中はぐちゃぐちゃで、心はいっぱいいっぱいだった。

「ねえ、時間ある? 」
典子はそれ以上何も言わずそう聞いた。
「うん。こどもが帰るまでまだ時間ある」
「じゃあさ、神社に行かない? 」
予想外の言葉だったけれど、神様のところに行けば少しだけ心が軽くなるかもしれないと思った。

典子の案内でたどり着いたのは、縁結びと安産で有名な神社だった。
鳥居をくぐる時に典子が礼をしたので、真似をして頭を下げる。神社なんて子どもの頃に初詣に行くくらいでほとんど来たことがなかった。

お社のそばに戌の像があって、それぞれに干支が書かれた子戌が輪になっていた。
「うちの子が生まれるとき、ここに何度も来てこの子の頭を撫でたのよ」と、典子は懐かしそうに丑年の戌の頭を撫でる。

縁結びという言葉にひどく心が揺れた。
結ばれたいわけではない。それを望んではいけないとわかってもいる。
だけど、運命がもし違っていたら。出会う時期がもう少し早ければと何度も願った思いが溢れてくる。

「結ばれるべき人と結ばれる、そのことだけ強く考えてみて」
結ばれるべき人。頭と心が乖離する。
頭では家庭を大切にするべきだと十分わかっている。でも罪悪感でいっぱいの心の向こう側に、14歳の頃のように、好きという言葉が何もかもを覆い隠してしまう感情が渦巻いている。

「何も考えずに、ただ唱えるの。結ばれるべき人と強く結ばれますようにって」
典子にそう促され、二人で並び神様に祈る。
考えると心が閉じるし、心に従うと罪悪感で人として壊れてしまいそうになる。だから何も考えずに唱えた。
『結ばれるべき人と、強く結ばれますように』

「先のことなんて誰にもわからないし、運命がどう動くのか、その正解を私は知らない。人の道を外れたと言う人もいるだろうけど、心のことなんだからそれは仕方ないとも思うよ」
わたしは力なくうん、と頷く。仕方ないと言ってくれてありがとう。

「きついことを言ったかもしれないけれど、私はね、あなたにはお日様に向かっていつでも胸張っていてほしいの。
誰かを傷つけてしあわせになろうとしても、きっとどこかで自分の心が自分を裁いてしまうから」

「わかっている・・・ 」
力なくそう答える。
「神頼みはね、もっとしていいと思うの。
苦しくてどうすることにできない時に神社に来るだけで、ほんの少しだけ心が楽になって、どうすればいいのか、光が差してくることだってあると思うから」

改めてお社を見上げる。兜のような形の凛とした屋根の向こうに青空が見える。空を見上げたのは久しぶりかもしれないと思った。
視線を落とし、子戌の像を見つめた。丑年と寅年の子戌を見つけて涙が出そうになる。
やっと夫の顔が少しだけ浮かんだ。

「今はまだ心の整理がつかないと思うけど、結ばれるべき人と強く結ばれる。そのことだけを考えていて。
コントロールできない心を操ろうとして、余計な感情に振り回されてしまわないように」

結ばれるべき人と、強く結ばれますように。
その日から何度もその言葉だけを唱えていた。

神社に行ってすぐの日曜日、近所のショッピングモールに出掛けた。
去年より大きくなった息子たちと一緒に冬用のジャケットを買いに来たのだ。
二階から入口に向かうエスカレーターを降りてきた時に、私はうっかり見てしまった。

洋服屋が並ぶ一階の通路を、入口から奥に向かって歩いていた一組の家族連れ。
黒いダウンを着た、背の高い奥さんらしき人と並んで歩いているその人は、普通に笑顔で歩いていた。
母親と小学生の女の子は手を繋いでいた。女の子は父親のことが好きなのか、父親を見上げて笑顔で一生懸命話しかけていた。

その家族は混んでいる通路をそのまま奥へと進んでいった。少しだけ高い場所から自分たちを見ていた私のことには気づかないまま。

エスカレーターで身体をひねって通路の奥を見ていた私に、
「知っている人? 」
と息子が声をかけてきたので
「似ていたけど違ったみたい」と笑顔を見せた。

妻とはうまくいっていないって言ってなかった?
心の中でそう毒づく私がいた。
がんじがらめにしていた紐がほどけていくのを感じた。

何故かわからないけれど、魔法が解けていくみたいに、するすると感情が解けていく。
たったこれだけのことで、あれほど凝り固まって動かなかった気持ちが消えていくなんて。
涙が溢れてきたので、息子に気づかれないようにそっと指でぬぐう。

大きく息を吸い込み、ふうっと息を吐いた。
結ばれるべき人という言葉はまだ私には重いけれど、今度典子と会う時までには、もう少し軽くなっているだろうと思えた。




お正月だからお正月らしいものを書こうと思っていたのですが、なぜかこの物語が消えなくて。
とりあえず書いてからじゃないと次が浮かばない感じがしたので、お正月っぽくない!と思ったのですが、載せました(*_*;

ちょっと安易な展開でしたけど(苦笑)
明日はファンタジー的なお話です(もう書いてある)

結婚していても、恋人がいても、別の誰かを好きになることは止められないと思っています。
そんな相談を受けることもあります。
占い師として占うことはしますが、基本的には、誰かを傷つけて結ばれても、うまくいかないと思っているので、推奨はしません。
それはモラルの話ではなく、潜在意識の話なのですけどね。

でもね、カチンコチンに固まっている思いは、占いの結果が今すぐ別れましょうと出たとしても、簡単には変えられないんですよね。
そんな時は縁結びの神社に行って、魔法を解いてもらうのもありなのかなって思います。
悪縁を断ち切るだと強すぎて足が向かない人には、特にお勧めです。
よい縁を結んでくれますから。
そして神様が結ぶ縁は、曇りのないお日様の光のような縁ですから。

私自身は恋愛体質じゃないので、うまく共感できないのですが、どこかでそんな苦しみを抱えていた人とシンクロしたのかもしれないですね。


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