夢の中で私は、自ら書き上げた脚本を売り込もうと、ある映画スタジオへと向かった。
そこには、庵野秀明に似た映画監督と初老のプロデューサーがいた。
彼ら2人が、私に露骨な敵意を抱いてたのは明らかだった。
映画監督がケンカの口火を切る。
”これは脚本とは呼べんな。まるでガキの作文だ”
私は用意してた言葉を男に叩きつけた。
”アンタらの映画こそ、趣味の領域を出ていないじゃないか。質の軽いオタク漫画ばかりに集中し、自己満足だけでこの世界は成り立ってるのかな”
堪らずプロデューサーが間に入るが、私の右の拳が監督の左のテンプルを打ち抜くのが一瞬だけ早かった。
男は大きく崩れ落ち、プロデューサーとの殴り合いになったが、横でノビてた筈の監督だが何ともなかったかの様に直ぐに立ち上がり、我らを仲裁する。
”君の気持ちはよく解った。日を改めて面接をする。それでいいのかな”
私はおとなしく引き下がった。
所ジョージと北野武
数日後、再び私はそのスタジオを訪れた。
今度は、若い(今どきの)売れっ子女優が立ちはだかる。
監督もプロデューサーも、流石に”若い娘には手が出せんだろう”と高を括ってたのだろうか、女優と言うよりグラドルに近い安っぽい質感の女は強気だった。
”アンタね!私に見合うような脚本を作ってよ。理屈の羅列をただ並べられても、主役を張る女優としては困るの”
私は、用意してた言葉を女に叩きつけた。
”この脚本が理屈なら、アンタらをバカの羅列と呼んだら褒め過ぎだろうか”
若い女の表情が獰猛に朽ちるのが見て取れた。彼女は何かを叫ぼうとしたが、その前に私の拳が女の眉間を打ち砕いた。
私は再び暴力を奮ってしまった。
初老のプロデューサーは呆れ果て、庵野秀明に似た映画監督は申し訳なさそうに囁く。
”他を紹介するから、悪いけど今回の件はなかった事にしてくれないか”
驚いた事に、男が紹介してくれたのは北野武監督がプロデュースする制作スタジオだった。
”暴力が幸運を呼びこむ事もある”
私は喜び勇んで、そのスタジオに向かう。
そこには、たけし監督と所ジョージがいた。2人は私が犯した暴挙を知ってたのか、微笑んで私を迎えてくれた。
”最近の映画は??なものばかりで困ってるんだ。君が暴力を奮ったのは正解だ。しかし、君がそこまで怒り狂うとはどんな脚本なんだ?"
私は脚本の大まかな流れを説明した。
”愛人を殺したF1の名ドライバーの物語です。愛人との別れ話で大モメした末に女を轢き殺してしまい、その証拠を隠す為にレンタルした複数の車で何度も轢き返す。つまり、DNA鑑定になった時にその証拠を曖昧にする事を思いついた。こうした黒い企みに薄々気づいてた刑事は容疑者とされる名ドライバーを問い詰める。男のドリフトの腕は凄まじく、少し体験しただけでフラフラになる・・・”
所ジョージさんは微笑んでいる。
”フラフラになった愛人を轢き殺したって訳かな?”
たけし監督は首を振る。
”そんなんじゃ,お笑いのネタにすらならんだろ?何かオチがあるはずだよな”
私は言葉を閉ざした。
”これ以上言うとネタバレになりますから詳しくは言えないんですが、何度も轢き殺すことで捜査を撹乱する。本当の殺害方法を曖昧にする所がミソなんですね”
”犯人は判ってるんだけど、どうやって殺したかが判らない。そこら辺がキモなんだ”(所)
”つまり、どうやって殺したかが判れば、殺害理由も明白になる。どんでん返しの結末にしたかったんですが、庵野に似た監督には展開が実直でシンプルすぎて受け入れられなかったんでしょうね”
”学生映画上がりには受け入れられないんだよ。それにアニメや漫画のキャラとは食い違ったんだろうな”(たけし)
”私としては普通に真面目なシナリオのつもりですが、あの監督には純文学のようにクソ真面目に思えた事でしょう。でも悪い人じゃないです。映画の事もよく勉強されて理解されてますよ・・・”
最後に
こんな風な会話が三人の間でとりとめもなく続いてたように思う。そして夢から覚めた。
庵野秀明さんの作品は、「シン・ゴジラ」と「シン・ウルトラマン」の2作ほどしか見てないが、面白くはあったが、不思議と記憶と心には残らなかった。
多分、”シン”というタイトルが希薄に思えたのか、マイナスの印象を与えたのかもしれない。因みに、シン(Shin)とは神(God)とか真(True)を指すという。
ウィキで少し調べてみると、アニメ「エヴァンゲリオン」で超有名な監督らしく、そんな視点で見れば、評価も変わるのかもしれない。
基本的には、漫画家がそのまま映画監督になった様な感じで、いい意味で現代風、悪い意味で軽すぎる。奇抜とか斬新という捉え方も出来るが、”奇才”とまでは言えそうにもない。
例えば「シン・ゴジラ」は、従来のゴジラとは大きくイメージを転覆させたという点では奇抜なアイデアだったかもだが、それだけの様な気もした。「シン・ウルトラマン」も”帰ってきた”という視点で見れば悪くはないが、やはりそれだけに思えた。
庵野氏の有名な逸話で、宮崎監督作品を”つまらない”と評した事があったそうだが、多分同じ理由で(庵野の作品は)”物足りない”と私は思うのだろうか。
そういうのが夢にそのまま出てきたように思える。しかし、夢の中で見た庵野さんはとても人格者であった。
キャストや脚本を含め
思い切りミーハーしてますよね。
結構ヒットした映画らしいですが
こういうの作ってる間は韓国映画には勝てない。
落ちぶれたって感もないんですが
もともと日本映画ってこんな実力なんですかね。
何だかハリウッドに右へ習いって感じで未来は暗いです。
カンヌでは役所広司さんが最優秀男優を受賞されました。
好きな俳優さんだけにとても嬉しいです。
昭和の時代に隆盛を誇った角川映画の影響を受けてたせいか、物足りなさを感じるんですよ。
昨今は、アイドル系ミーハーのエンタメ映画が目立ちますね。
それでも純文学風の秀作も出てますから・・特に今回のカンヌでも話題になった是枝裕和監督なんかとても期待しています。
アジアで初のアカデミー作品賞を獲得した「パラサイト〜半地下の家族」(2019)も監督の「万引き家族」(2018)のパクリですよ。
日本にも世界に負けない監督や脚本家もいますから、こういう時こそ頑張ってほしいです。