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仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
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綺麗な顔6

2012年03月21日 16時51分01秒 | Weblog
静かな時間が過ぎた。
男は助手席の窓に頭をつけて身動き一つしなかった。

なんだよ。笹川の奴。何考えてんだよ。
ヒカルやミサキがいってたのも同じことなのか。
違う。
会社って。
アカギさん何も言わなかったのかなあ。
待てよ。ここのところ、連絡してくるのは笹川だけだったなあ。
何で気付かなかったんだろ。
高井戸に戻ったら、アカギさんに電話しよう。

信号待ちで男を見た。
夕暮れの太陽の色が男の顔をセピア色に染めた。
綺麗な顔だった。
男は寝ていた。
誰かがいるのに、独りでいられる感覚。
マサルは好きだった。
車で出かけて、同乗者がすべて寝ていても気にならなかった。
沈黙ではない静寂。
車の騒音が作る静寂。
高井戸に着くまでマサルは男を起こさなかった。

スグリさんが珍しく帰っていた。
男を起こして、たずねた。
「どうする。家までつれてきちゃったけど。」
男は頭を垂れたまま何も言わなかった。
「もし、今日、いくところがなかったら、家に泊まってもいいよ。」
その風貌からか、臭いからか、そんな言葉が出た。
「マサルー。」
二階の窓からスグリさんの声がした。
「今日さあ、夜、どうしてる。」
「どうって、何もないよ。」
「じゃあ、さあ、こっちこない。」
「お客さんいるけど、一緒でいい。」
「いいよ。」
「片付けすんだら、いくよ。」
「いいねえ。」