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仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

悲しいこともあるだろう。Ⅴ

2009年03月25日 17時25分50秒 | Weblog
闇。
男は目を覚ました。男は自分が椅子に座らされていることに気付いた。部屋の真ん中のダウンライトがともった。身体を動かそうとして自分が革のベルトで縛られていることにも気付いた。メガネを外した童顔のヒロムがダウンライトの中に入ってきた。
「なんて呼んだらいいんだろう。」
万遍の笑みを浮かべてヒロムが言った。
「君は、なぜここに来たのだろう。」
返事をしない男、いや返事などできる状態ではなかった。まる一日が過ぎていた。
何も口にはしていなかった。疲労と混沌の中で、意識と無意識の間で男はヒロムの声を聞いた。男の脳にはヒロムの写真の顔が刻み込まれていた。安堵とも、至福、それは不思議な感覚だった。男の周りには女たちがいた。耳元で囁いた。
「あなたのお名前は。」
「ツカサです。」
「いい名前だ。」