マサルの事件は、僕らが目標を持った団体であることを確認させた。どこのだれなのかということをはじめて語り合うことになった。ヒロムの言葉で言うと執行部が個人を確認し、行動の規範を作るように動こうと言うことらしかった。仁とマサミ、アキコとヒトミ、ヒデオとヒロムで六人組ができた。その周りに常任がいて、常連で新生で胎動だったような気がする。ヒロムはT大の学生だった。アキコは外科勤務の准看護婦で、ヒトミは美容師、ヒデオは型枠大工の見習いで、まさみはスナックで働いていた。「仁」、仁は・・・・・
仁は語らなかった。自分が何なのか、ただ、ニッカポッカに運動靴、ドカジャン、長袖のシャツ、その風貌から判断すると、鳶か、土方か、いずれにしろ、肉体関係の仕事をしていたことに間違いはない。
ヒロムは言葉を使って僕らのことを表現した。
・・・本当の意味で、僕らの存在は意味があるとは思えないだろう。生きて死ぬ。ただそれだけだ。死の瞬間に僕らはすべてを失う。言葉も音も光も臭いも感触もすべてだ。なのになぜ生まれてくる。無になるためになぜ生まれてこなければならないんだ。よく考えて見ろよ。今見ているものが本当に存在するのか。夢じゃないのか、お前は砂漠の中でたった一人でいて、夢遊病者のようにあたかも回りに世界が存在するかのように蠢いているだけじゃないのか。逆の意味でそれは真実だろう。死の瞬間にすべてを失うのだから。虚無、そう、すべては虚無なんだ。オレはずっとそう思っていた。偶然はすべてを支配する。すべてが偶然であり、死を前にしたらすべては同等だ。上も下もない。本当の意味で平等はすべての人に与えられている。なぜなら、すべての人が死ぬからだ。意味、意味はあるのか、そう思っていたんだ。
なぜ、ここにきた。なぜここにいる。それも偶然のなせる業か。でも、「ベース」にオレが迷い込んだとき、これが偶然ではないことに気づいたんだ。必然はある。導き、力、それはほんとに存在するんだ。オレは童貞だった。それにセクスにも興味はなかった。体が考えることも、いや、体そのものの思考がどんなに崇高なものかということをはじめて知ったんだ。
仁は語らなかった。自分が何なのか、ただ、ニッカポッカに運動靴、ドカジャン、長袖のシャツ、その風貌から判断すると、鳶か、土方か、いずれにしろ、肉体関係の仕事をしていたことに間違いはない。
ヒロムは言葉を使って僕らのことを表現した。
・・・本当の意味で、僕らの存在は意味があるとは思えないだろう。生きて死ぬ。ただそれだけだ。死の瞬間に僕らはすべてを失う。言葉も音も光も臭いも感触もすべてだ。なのになぜ生まれてくる。無になるためになぜ生まれてこなければならないんだ。よく考えて見ろよ。今見ているものが本当に存在するのか。夢じゃないのか、お前は砂漠の中でたった一人でいて、夢遊病者のようにあたかも回りに世界が存在するかのように蠢いているだけじゃないのか。逆の意味でそれは真実だろう。死の瞬間にすべてを失うのだから。虚無、そう、すべては虚無なんだ。オレはずっとそう思っていた。偶然はすべてを支配する。すべてが偶然であり、死を前にしたらすべては同等だ。上も下もない。本当の意味で平等はすべての人に与えられている。なぜなら、すべての人が死ぬからだ。意味、意味はあるのか、そう思っていたんだ。
なぜ、ここにきた。なぜここにいる。それも偶然のなせる業か。でも、「ベース」にオレが迷い込んだとき、これが偶然ではないことに気づいたんだ。必然はある。導き、力、それはほんとに存在するんだ。オレは童貞だった。それにセクスにも興味はなかった。体が考えることも、いや、体そのものの思考がどんなに崇高なものかということをはじめて知ったんだ。