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アリス・マンロー「ジュリエット」感想

2020-10-20 | 小説・漫画他
先日、スペイン映画「ジュリエッタ」ペドロ・アルモドバル監督 を見ました。
後半の展開には驚いてしまったのですが、解らない部分が多々あったので、原作も読んでみたいと思って調べたら、原作はカナダ人の2013年ノーベル文学賞作家!アリス・マンローの連作短篇集『ジュリエット』だというのを知りました。
恥ずかしながら、アリス・マンローさんというのは今回初めて知った次第。

収録作の中で独立した短篇「チャンス」「すぐに」「沈黙」の3編を、舞台をカナダからスペインへと移し、アルモドバル自身がひと続きの物語として映画化したそうです。

まずは、映画から受けたジュリエットの印象が、本ではかなり違っていたことに驚き。
原作での主人公は、田舎で優秀で知的レベルが高かったが故に、ルックスは結構良いのに変な子扱いされ、モテない学生時代を過ごし、親も近隣の人達から「おたくの娘さんは、いったいいつまで学校に通うんだい?」みたいに言われていました。

「すぐに」では、大学進学で家を出て行った後、結婚せず未婚の母になった事を(よりによって、あのガリ勉が未婚の母になったってと)詳しい事は書かれてなかったけれど、とにかく娘の事を悪く言われた事に父が怒って、トラブルになったために教職を辞めることになったというエピソードにも驚き。

アメリカやカナダでも昔の田舎町では、女の子が勉強が出来たり、長く学生生活をしていると、マイナスイメージに見られたり、損な事が多かったっぽいのね・・・(もしかしたら今もだったりするのかな・・・?)

「チャンス」
映画では金髪でパンキッシュなショートヘアで美人のヒロインが、会ったその日に電車の中で・・・という、進んだ女性という印象を受けましたが、原作ではキスはするものの、そういう発展的な関係は有りませんでした。

「すぐに」
久しぶりに娘が孫を連れて帰省するというのに、もよりの駅ではなく、人目につかないように、わざと両親は隣駅に迎えに行くという有様・・・。
映画ではお手伝いさんは、移民っぽい女の子だったけど、本作では夫を若くして事故を亡くした2人の子持ちの女性(ヒロインと2歳位違うだけの若い子)でした。
母はもともと体が弱く、心臓等に疾患があり、寝ていることが多い状態でしたが、そんなに命僅か、という風な印象は無かったのに、意外と早く亡くなってしまいました。
父がお手伝いさんを気に入ってるのは同じでした。

「沈黙」
娘が父親っ子だったのは同じ。その父親が海で死んでしまった後、母が複数の男性と恋仲になり、中でも2回、かなり年上の男性と、年下の男性との恋愛中は、その恋愛に没頭、周りが見えなくなっていたそうで、思春期の娘がそんな母にウンザリした事もあったかと推察されます。
映画を見て気になっていた、なぜ娘が突然母の元を黙って長期間去ってしまったのか?
という部分。もしかしたら、ここらへんも関係あったのかな・・・?

原作では母はTV番組のキャスター?になっていて、割と有名人であり、小奇麗にして素敵な人みたいでした。 でも現在はその仕事は辞めています。

原作では、20歳の時に娘が映画同様、籠る精神道場っぽいところに行った後、行方知れずになるのは同じです。
娘の親友にばったり会い、現在は子だくさんになっていることを教えてもらうのも同じですが、その親友と娘の関係は映画の様に特別な濃密な関係だったとは書かれていません。
そして、音沙汰は無いまま終わります。

映画ではラストで娘からのアドレスの書かれた、そして息子を亡くして初めて母の気持ちが解ったという手紙が入っていて、これからその娘の住むであろう場所に彼氏と一緒に車で向かうシーンで終わっていたので、映画は凄く救いがある様になっていますね。

まだこの作家さんの本は、これしか読んでいませんが、結構淡々とお話が語られる印象です。
なにしろ一番印象に残ったのが、多分にして自分の実体験であろう、田舎の優秀な女子は理不尽に辛い学生時代を送る、という部分でしたが、それ以外では、特に何かガツンと来るとか、再読したいと強く思う処とか、無かったかもしれません。

でも、この本だけじゃなくて、アリス・マンローさんの数々の本の装丁が、どれもとっても素敵なのですよ!ナチュラルな感じの野草やお花のイラストで、全部揃えたくなってしまう感じ。
ヒラリークリントンが彼女のファンらしいです。

ジュリエット アリス・マンロー 2016/10/31
長距離列車で乗りあわせた漁師に惹きつけられ、やがて彼のもとで暮らしはじめる大学院生のジュリエット(「チャンス」)。娘が生まれ、田舎の両親を訪ねるが、父母それぞれへの違和感にこころは休まらない(「すぐに」)。やがて夫は諍いのさなかに漁に出て、突然の嵐で遭難。つねにそばにいてくれた最愛の娘は、二十歳のときに失踪し、行方知れずのままだ。いまやバンクーバーで人気キャスターとなったジュリエットは、ある日、娘の消息を聞く―(「沈黙」)。以上、マンロー版「女の一生」ともいえる“ジュリエット三部作”のほか、ふとした出来事でゆすぶられる人生の瞬間を描いて、マンローの恐るべき技量が冴えわたる短篇小説集。

アリス・マンロー
1931年、カナダ・オンタリオ州の田舎町に生まれる。書店経営を経て、68年、初の短篇集Dance of the Happy Shadesがカナダでもっとも権威ある「総督文学賞」を受賞。以後、三度の総督文学賞、W・H・スミス賞、ペン・マラマッド賞、全米批評家協会賞ほか多くの賞を受賞。チェーホフの正統な後継者、「短篇小説の女王」と賞され、2005年にはタイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選出。09年、国際ブッカー賞受賞。13年、カナダ初のノーベル文学賞受賞
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2 コメント

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( ..)φメモメモ (こに)
2020-10-21 08:17:26
アンリさん、新潮クレストブックスに凝っていた頃に読んだみたいですがすっかり忘れていました(汗)
読んでみようと思います。
ヒラリーさんがファンなのですか。感想をお聞きしたいですね^^
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こにさん☆ (latifa)
2020-10-21 18:37:37
こにさん、こんにちは
そうだったんですね、新潮クレストブックスに凝っていた時代があったのですかー。
私は知らなくて、ちょっと調べてみたら、書籍の岩波ホールみたいな感じなのかなー。
出版リストをちょっと見たら、ミランダ・ジュライの本を2冊読んだ事がありました。
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