君のためなら千回でも カーレド・ホッセイニ(1965年生)
映画が良かったのと、もっと知りたい部分があったので、原作本を読みました(図書館で借りました。上下巻 早川書房 660円)
尚、全部ネタバレで書いていますので、ご注意下さい!
殆ど映画は原作を忠実に作っていたんだなぁ~と思いました。
違っていた点と、知りたかった部分(映画ではハッキリ解らなかった部分や描かれていなかった処)を書いておこうと思います。
まずは、映画では殆ど語られることがなかったハッサンのお母さん(アリの妻ですね)ですが、通り過ぎる時に男女とも誰もが振り返るほどの美貌と、色っぽいフェロモンを持っている女性で、身持ちがゆるく、多い男性と関係を持っていたらしいです。
なんとハッサンを産んだ数日後、旅まわりの歌舞団と一緒に夫と子供を捨て、黙って家を出てってしまい行方不明になってたんです。
が、後に1990年、ハッサンとその妻とラヒム・ハーン(ババの親類でもあり親友)が住んでいたかつてのババの屋敷に、ボロボロの姿で現れ、以後一緒に暮らす様になり、ソーラブを大変可愛がり、でもソーラブが4歳の時、突然朝ベットで亡くなっていたそうな。
アリは両親を5歳の時殺され、天涯孤独になってしまったところを、アミールの祖父(みんなから尊敬される判事だった)が引き取り、我が子(ババ)と一緒に育てた、という訳です。
アリは幼い時に病にかかり、それ以後脚を引きずる様になり、また顔半分下が麻痺しているせいで表情の変化が少ないなど、外貌的なことを、心ない人や子供らに、いつもバカにされつづけていたようです。で、ハッサンの母とアリが結婚したのは、特にお互い気に入ったからではなく、なんとなく、陰でまるで娼婦のように思われてる女と、外見的にからかいの対象になっている男がくっついた・・・という感じだったようです。
ところで、ハッサンは生まれた時に、口唇裂だったそうで、それを1974年頃、ババが良い医者を捜して来て手術を受けさせたんです。
映画よりも小説の方が、アミールがハッサンを蔑視しており、友達という風じゃなかったことが書かれていて、ちょっとショックでした。
映画では、アミールは、アフガニスタンを離れた以後も、ハッサンとアリへしてしまった事への呵責を持ち続けていた・・・っていうのは感じられなかったと思うんですが、小説では、割と感じられました。
アミールが妻にする女性が、過去に男とかけおちしていたという過ち?(イスラムでは花嫁は純潔な女性じゃないと、嫌われる傾向があるので)を告白された時、正直アミールは、嬉しくはなかったんです。でも自分も過去に負い目があって、そんな自分が、他人の過去をとやかくとがめる資格なんてありゃしない・・・って感じの事も書かれていました。
ババのような立派な人が、アリの妻を寝取る様なことはしないんじゃないか?何か理由があったのではないか?ということも小説を読んで知りたかった事の一つだったのですが、特に書かれていませんでした。むしろ、あのババでさえも後悔の念を抱きながら、だからこそ、人にやさしく、孤児院を作ったりと、贖罪の気持ちを常に持ち続け暮らしていた、って風に取れるような感じでした。
小説では映画よりも、もっと、アミールに対してババが失望してる描写が色々ありました。2人で食事してるときも会話は無く・・・ アミールが偉大な父に気に入られようと努力しプレッシャーになってるのがよ~~く解りました。
アミールは運動も苦手でした。ババはサッカーマニアで、息子にサッカーチームに入らせたものの、チームメイトの足を引っ張るようなプレイしか出来ず退部、それじゃ一緒にサッカーを熱心に観戦するサポーターになるべく・・・と思ったものの、アミールは表面的に大声で応援したりしたものの、やっぱり、あまり興味が無いことを父に悟られてしまう。
そしてアミールの母(ババの妻)という人が、非常に美しく、頭も良く、文学的に抜きんでた・・そんな女性だったので、アミールの本好きはママに似たんだろうな・・・。
かたやハッサンは、父ババの長所を受け継ぎ、1コ上のアミールよりも走るのも抜群に速く、運動神経も良く、学校に通ってないから学問も全く解らないはずなのにもかかわらず賢いんですよ。そして、いじめっ子に屈することなく向かって行く勇気や、アミールをかばってやったり、アミールの心理をすぐに察せる才能があるので、上手いことアミールをフォローしたりしてあげてるんですよ・・・。
ある時、カードゲームだかトランプで、ハッサンの方がアミールよりも賢いため、アミールがハッサンに勝てず、そのゲームをアミールがやらなくなっちゃった、ってエピソードもあったり、トランプのあるゲームで、ハッサンが気を使ってわざとアミールに負けたりと・・・そんなシーンもありました。
ハッサンが後にババの屋敷に妻とラヒームと移り住んだ時も、ラヒームが「屋敷には一杯空き部屋だらけだから、こっちに住みなさい」と何度も強く言っても、決してハッサンたちは住まず、昔アリとハッサンが住んでいた小さなボロイ小屋に暮らしたそうな・・・。
で、アミール夫婦ですが、赤ちゃんが欲しいのに、なかなか授かることが出来ず、産婦人科で調査してもらい、不妊治療も行ったりして、でも15年間子供に恵まれることがなかった・・・という部分がありました。
あと、ソーラブをタリバンから奪って一緒に逃げ切れた後、養子縁組などが簡単じゃなく、一時孤児院にソーラブを入れてから、引き取る方が上手く行きやすいことが解り、それをソーラブに説明するのですが、(もちろん毎日面会にも通うし、パキスタンの孤児院だし・・と、アミールは怖がらない様に説明するんだけど・・)ソーラブは、もう孤児院には絶対入りたくない!いじめられる!!と非常に怖がり、結局お風呂場で自殺未遂してしまい、あわや・・・というシーンがありました。その事で、ソーラブはアミールに心を少し閉ざしてしまうんです(もう絶対側から離れないよ、と言ったのに、また孤児院に・・って言ったことが、ソーラブにとってはショックだったのです)
ラストは映画と同じ。アメリカで、凧上げをし、ソーラブが少し笑顔になり・・・今後良い方向へ向かいそうな気配を感じさせお終いでした。
映画の感想はこちら
「君のためなら千回でも」 結構大泣き・・
ハッサンのお母さんは、そうだったんですか。何だかぼんやりしていました。
シビアなものが沢山過ぎりますね。
この映画というか、この作品。なかなか凄いです。
トラックバックありがとうございました。「君のため
なら千回でも」私も映画を見て感動し、原作も読んだ
のですが、こちらブログでとても細かく映画との比較
が書いてあって興味深く読ませていただきました。
原作を読むことでアミールの複雑な心理がわかって
とてもよかったと思います。映画ではハッサンに対す
る仕打ちがひど過ぎると感じたのですが、原作でどれ
だけ父ババの愛を切実に求めているかがわかると(で
もババはアミールにかなり失望している)納得できま
した。アミールとハッサンの母のこと、ソーラブを連れ
帰るためにはたくさんの困難があったことなども原作
を読んでよくわかりました。
こちらのサイト、他にも映画や小説の感想を興味深く
読ませていただきました。ありがとうございます。
長い文章読んで下さって、ありがとうございました^^
映画を見た後読むと、なるほど~~という部分がありました。
最初に小説を読んでから映画を見たら、どんな感想を持っただろうか・・・?と思います。
映画も小説も両方私的には5つ☆あげたい作品でした。
コメントありがとうございましたー!とっても嬉しかったです☆
いやいや、ステラさんのブログの記事の方が、ず~っと詳細に熱の入ったレビューでした。4回に分けてのアップされていましたよね☆
>映画ではハッサンに対する仕打ちがひど過ぎると感じたのですが、原作でどれだけ父ババの愛を切実に求めているかがわかると(でもババはアミールにかなり失望している)納得できました。
そうなんですよね。私も同じでした。
小説では、ババ、そりゃちょっと無いよぉ~って、アミールがふびんに感じる処がありました。
>アミールとハッサンの母のこと、ソーラブを連れ
帰るためにはたくさんの困難があったことなども原作
を読んでよくわかりました。
そうですよね。映画も良かったけれども、映画を見終わった後、この原作を読んで更に2度楽しめて、満足しています。
ステラさんのブログも、バビロンというタイトルから感じられるとおり、ギリシャ(私も20年前ツアーでですが行ったことがあります)や、昔を舞台にした作品「トロイ」とか「300」他が色々記事にあって、色々拝見させて頂きました♪
また、この後も遊びに寄らせて頂きますので、よろしくお願いします
お久しぶり~~
お元気してましたか?? 札幌は、なぜか、なぜなんだか最近暖かすぎます。まるで初夏のような陽気に
(この時期に24℃とかですよ!)桜が一気に咲き出して・・・。もうもうここんところ超仕事が忙しくてlatifaさんとこ遊びに行きたかったのになかなか行けなかったです・・・(一緒に仕事している人が突然入院しちゃって!毎日「あわわわ!」の連続で
ところで、私は今 読んでいる最中でもうちょっとで上巻が終わるところかな? 読み終えたらまたlatifaさんとゆっくりお話したいわ~~☆
確かに小説の方がアミール ハッサンのこと蔑視しているような気がしますね。 アリやハッサンの民族は学校も行けないし、字も読めない、差別されても仕方ない事を受け入れてしまっているのにもショックでした・・・ハッサン利発な良い子なのにな~~。
アミールパパも映画では素敵だったのに小説では熊のような大男となっていましたね(笑)
民族の差別なんてなくなってしまえばいいのにな~~
(そういえば、今問題のチベット&中国。私はチベットの人達が可哀想だ。中国もチベット認めてあげてよ~って感じ)
ちょこっとお久しぶりで、嬉しい~~~
ところで、な、なんと・・・一緒に仕事している方が突然入院??それは大変ね・・。私も以前経験があるわ・・・。で、その方の病状はどうなのかな・・・良くなって来てるのかな?近く退院出来そうだと良いのだけれど・・・。その方が戻られるまでは、レナさんがその仕事もやらなくちゃいけないんでしょう・・?普段の倍の仕事量よね~~レナさん、大丈夫ーーー??
無理をせず、がんばって!!!
で、札幌の異常気象、ニュースで見てました。温かいのは嬉しいけど、後で反動が来そうで、ちょっと怖いよね(^^; でも、ここのところ、北海道って段々気温が上がって来てる気がする、やっぱり地球温暖化のせいなのかな・・・。
で、レナさんも、これ読んでいるなんて、嬉しい~~~!
そうそう民族によって、色々決められたり、差別されるのとかって、凄く私嫌いだわー!!ヒドイよね。
>アミールパパも映画では素敵だったのに小説では熊のような大男となって
そーなのよ!!私も、あれっ?ちょっとイメージ違うぞ・・・って思ってたの。小説では、背が凄く大きくて迫力ある「大男」系だったのね・・・。映画の方が知的な感じがして素敵だったかもw
それに、小説だとさ、あまりにババがアミールに失望していて、アミールが可哀想に感じてしまったわ。
私もレナさんと同じ。チベットの人達が可哀想だ。中国もチベット認めてあげてよ~って思ってるヒト。
このところ、オリンピックに向けて、色々物騒になってきてるよね。
お元気でしたかな??
北海道は、夏らしくなってきましたよ~~
今年は、何かと話題は「洞爺湖サミット」ですね。
洞爺湖のわかさいも本舗知ってます?(ひそかにケーキが美味しい) 参加国のケーキフェアなんぞ行っていますよ。 ドイツのチョコレートケーキなんか美味しそうでした~~
ところで、先日ね-「リトビネンコ暗殺」見に行ったの~。ドキュメンタリー風の映画でね、面白かったです。というより、ロシアって怖い~~ プーチンの事 悪く書いてる女のジャーナリストのインタビューとかも見れて・・・
(この人も射殺されてしまいましたが) こういうジャーナリスト達は何百人も殺されたそうです。 私、いつも思うんだけど、こういう仕事してる人って結局命狙われるわけじゃないですか。 特に女性なんかで殺されるかもしれないと思いながらも 信念を曲げない人って凄いな~って。尊敬しちゃうな~。 んで、本の感想(笑)ですね。
大分前に読み終えたんだけど、なかなか遊びに来れなかったの~
アミールパパがアリの妻を寝どるなんて考えられない!!という部分 はずれちゃいましたね~~ だって映画の中じゃあ アミールパパとっても素敵なんだもん・・・。 でも、だからといってダメというワケじゃなくて、小説の中でも素敵なわけで・・・ アミールが必死に父親に好かれようとしている姿が可哀そうに思えたし、(映画ではこら!!アミールでしたから) 確かにハッサンの方がババの性格をそのまま受け継いだようには思えますね。 そして、なぜかハッサンの息子のソーラブは、アミールの性格に近い気がするんですよ~~。(弱い部分とか) ハッサンもあんな死に方をしてしまったけれど、アミールが大事にソーラブを育ててくれれば嬉しいだろうな~~。アミール自身も自分がハッサンにしてきた仕打ちを考えると、ソーラブを立派に育てる事で自分の事も許せるでしょうね~。
アメリカでベストセラーになった本らしいですが、またまたなんでアメリカで??なんて素朴な疑問がわいた私でした。
> 洞爺湖のわかさいも本舗
知ってますとも~。今はケーキなんかも美味しいのね? 私は子供の頃、小学校の修学旅行といえば、わかさいも でしたよ^^ あの糸こんぶみたいのが入ってる甘い和菓子。懐かしいな~。
>参加国のケーキフェア
なかなか、ナイスアイディア♪な、企画ですねー。私も是非食べてみたいな。
ところで、「リトビネンコ暗殺」なんていう映画が来てるとは!!初めて今日知りましたぞ。面白そう・・というか、興味あるわ~。
>プーチンの事 悪く書いてる女のジャーナリスト (この人も射殺)
うん、うん、以前レナさんとおしゃべりしたこと覚えてますよー!まだ彼女が存命の頃、何かの番組で、インタビューや、他に謎の死を遂げた人についての特集を私も見ていたし、こういうの怖いよねー!!私も信念の人って尊敬しちゃいます。
で、小説ね♪
> アミールパパがアリの妻を寝どるなんて考えられない!!という部分
そうなのよね、実際はそういうことがあったのは事実みたいだけど、ただ「取る」って感じではなかったのかも・・・(と、今だアミールパパの肩を持ちたい私(^^;)
小説では、アリの奥さんの描かれ方が、尻軽女・・って感じで描かれていたものね・・・。無理矢理というよりは・・・合意の上って感じだったのかも・・・
>なぜかハッサンの息子のソーラブは、アミールの性格に近い気がするんですよ~~。
言えてる!!これは目からウロコだわ~。
で、今改めて、その事を踏まえて良く考えてみると、勇気があって、堂々としている父の元に産まれた長男って、結構キツイものがあるのかも・・・。アミールパパとハッサンが似た性分だとすると、息子への態度とかが、どこかこの2人、似た部分もあったのかも・・・。そうなった場合、ハッサンの息子であるソーラブが、アミールっぽくなる・・って言うのも大ありかも!!
>ハッサンもあんな死に方をしてしまったけれど、アミールが大事にソーラブを育ててくれれば嬉しいだろうな~~。アミール自身も自分がハッサンにしてきた仕打ちを考えると、ソーラブを立派に育てる事で自分の事も許せるでしょうね~。
うん、うん。私もそれは思ったわ~。 アミールは、それはそれはソーラブのこと、可愛がって慈しみ深い愛情を注ぐと思うわ! それと上記でレナさんがおっしゃった通り、結構この2人似た部分がありそうだから、気が合うかも☆
で、アメリカでベストセラーになったっていうのは、何か、不思議よね・・・。なんでだろう??