「相思相愛の男と女、五分と五分」
『軽蔑』
この映画を観る為に、未だ手を付けていなかった
中上健次 の 『軽蔑』を読んだ。
あらすじはって言うと、
東京で賭博に明け暮れる日々をおくっていた名家出身のカズは、新宿歌舞伎町で働くポールダンサーの真知子と熱烈な恋に落ちる。2人はカズの故郷で新生活を始めるが、カズの父親をはじめ周囲は2人の関係を認めなかった。やがて真知子は東京へ戻り、自暴自棄におちいったカズは、借金にまみれながら賭博で身を滅ぼしていく。
中上健次が亡くなる間際に書き上げた 最後の長編小説。
恥ずかしながら、中上氏の作品は初めて読んだ。(いや、他にも初めていっぱいあるけどな。)
なんだろ、この不思議な文体は。
語法が独特で、気が付いたら突然シーンが変わってる。
だから読んでて戸惑う。 時間軸が凄く不安定なんだ。
でもそれが、この主人公2人の危うさ焦りとして読み手に伝わってくる。(と、思う)
「筋骨の抜きん出た、反省なぞ生まれてこの方した事も無いような遊び人」のカズ。
その「カズさん」を、自分の生命を犠牲にしても惜しいと思わない程に愛する女、真知子。
そして真知子が呪文の様に繰り返す、
「相思相愛の男と女、五分と五分」
二人が出会った東京歌舞伎町では「五分と五分」の関係を築けたはずが、
カズさんの故郷では 彼を取り巻く地元の何もかもが真知子の「五分と五分」を奪ってしまう。
地方に潜む封建的なものが真知子を追い詰め、封建的なそれらは真知子を決して「個」にはしない。
それは故郷に戻ったカズさんにも言える事。
どこまでも纏わりつき、一層真知子は孤独へと追い詰められていく。
でも 少年の様に真知子を愛するカズさんは それに気がつかない。
真知子は咄嗟に家を飛び出し東京へと戻ってしまう。
その出来事がカズさんを苦しみの極点へと立たせる引き金となってしまうんだ…。
読み終えて感じたのが、
正直、心に血を流してまで「五分と五分」に拘る真知子に、なんでそこまでという思いだよね。
トップレス・バーのポールダンサーだったというコンプレックスが、「五分と五分」に雁字搦めにされてたんじゃないかとも思う。
そして、この「真知子」は、完全に「男脳」で書かれた女性ってことね。
絶対これらの中には隠れた主体があるはずなんだけど、アタシにはここまでしか理解できねー。(笑)
で、映画の方なんだけどさ、
これ間違っても 原作と比較しちゃダメだよ。
全く世界観違うから。(笑)
鈴木杏ちゃん、体当たりの演技だった。
高良健吾くんも、ルックスは良かったよ。
でもね、イメージがね、
絶望的に違う。
ホント、申し訳無いけど。
それと、あんなに中上健次が言わんとしてる 「五分と五分」 のくだりが軽すぎるし。
保守的なものと近代的なものが「五分と五分」になろうとすると、必ず摩擦が起きるって事を二人を通してもっと丁寧に描いてほしかったぞ。
と、あーだこーだ言っても アタシには作れんですがね。
つー事で、次は中上氏の 「岬」あたりから読みあさろうと思ってマス。
んじゃ。
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