大阪弁護士会の講演会「ブラック企業の見分け方と対処法」に参加してきました!

2013-03-02 16:58:13 | 京都POSSEの活動報告です!

2月28日(木)大阪弁護士会館にて、POSSE代表の今野晴貴が「ブラック企業の見分け方と対処法」をテーマに講演を行いました。
この講演会に京都POSSEのメンバーで出席しましたので、公演の概要や会場の様子などをご報告します。


第1部は、POSSE代表今野による講演。

 まずはブラック企業の実態やブラック企業問題の本質についてです。
 
 2000年代の非正規雇用の拡大やリーマンショックなどの社会変化を背景に、若者の雇用が大量採用・大量離職という特徴が際立ってきたこと。そして、労働環境が、「働き続けられない雇用」と表現できる程に過酷で、最悪の場合には人格が「壊されて」しまうという、ブラック企業における雇用の実態が、POSSEでの相談事例を挙げながら報告されました。具体的には、正社員採用後も終わらない競争・選別、物理的・心理的に過剰な労働の強制、先の見えない低賃金・長時間労働、固定残業制、パワハラ・セクハラの横行、強圧的な退職勧奨など手段は様々であるものの、こういった労務管理を行うブラック企業に共通するのは、労働者一人ひとりの生活、心身の健康、キャリア等かけがえのないものを限りなく軽視している点にあることが強調されました。「代わりはいくらでもいる」という考えがブラック企業の根幹にあり、若者を短期間で使いつぶしているのです。

 また、「ブラック企業」問題は、一部の違法企業や中小企業だけの問題と誤解されがちな点についても指摘がありました。すなわち、雇用保障と強大な人事権がセットであったことが従来の日本型雇用の特徴だったところ、前者が脆弱化しているにもかかわらず後者のみが肥大化していることが、ブラック企業における労働問題を生み出していること。そして、こうしたいびつな労務管理が、大企業成長企業で普及してきていること。こうした事実から、「ブラック企業」問題は、企業の分野・大小もしくは景気の動向を問わずあらゆる企業に起こりうることであり、しかも今後さらに拡大していく可能性が高いということでした。
 
 そして総括として、「ブラック企業をどう見分けるか?」という問いについては、(1)違法行為、(2)離職率、(3)労務管理(だます意図、使いつぶす意図)という判断基準が示されました。

 最後に、ますます深刻化していくブラック企業問題に対抗するためには、なにより労働者側が、会社を信用せず、「戦略的に思考する」ことが重要であるとの提言がされました。自身の心身の健康、キャリアを守るために思考することが大事だということです。それには、うつ病に罹患するのを避け、「自分が悪い」という思考停止に陥らないこと。ブラック企業はこのような思考停止に付け込んでくるものだからです。

 今野の講演後の質疑応答では、活発な意見が交わされるとともに、労働者としての自身の体験が語られることもあり、ブラック企業問題の当事者としての切実性・重要性が、会場全体でも共有されたように思います。


 第2部では、最初に全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子さんのお話。
 
 家族を過酷な労働の末に亡くされ、企業の責任を問う裁判を闘われた体験をお聞きしました。一人の方の人生が、企業の行為の下で断ち切られてしまった残酷さ、残された家族の無念さ、悲しみ、苦しみが胸に迫るお話でした。同時に、そのような深い悲しみを乗り越えて、過労死のない社会の実現を目指して活動されている寺西さんの姿には勇気をもらいました。

 また、岩城穣弁護士、和田香弁護士から、「過労死企業名情報公開訴訟」の経過が報告されました。企業の社会的責任として、過労死や違法な労務管理の事実が存在する企業について、その実名が公開されるべきという考えは正当であるように思います。しかし、昨年11月、大阪高裁は、企業名非公開は是認されるとして、原則公開するべきとした1審判決を逆転させました。企業利益を優先する判断として、裁判所の中立・公正性が疑われる判断です。このような経過から、両弁護士は、最高裁に上告し、この判決の不当性を争っていくとのことです。今後も、この裁判を支援し続けていきたいと思います。


 当日の会場の様子は、平日の夕刻であるにもかかわらず215名もの参加と盛況で、年齢層も様々な方が参加されており、ブラック企業問題、労働問題への関心の高さが伺えました。労働という事柄が、個々人の人生において非常に大きな位置を占めることから、社会全体で今日起こっている労働問題について考え、労働環境を改善していかなければならないことが実感できました。


 講演会は、ブラック企業と過労死とが同時にテーマに据えられたことで、この2つの問題が直接に連関していること、そして大きな広がりを見せていることを明確に示したように思います。また、大阪弁護士会がブラック企業をテーマにして講演会を開催したことにも注目されます。若者の間で生まれた「ブラック企業」という会社を告発する言葉が、大きな力を持つようになってきたことを実感しています。開会・閉会挨拶で述べられたように、大阪弁護士会においても労働問題、貧困・生活問題に対して続いてきた取り組みが一層高まってきているとのことです。今回の講演会は、これからの労働問題・生活問題の救済・対策のために、そしてブラック企業問題等を社会問題化していくために、弁護士さんや他の団体との連携を築いていく大きな一歩になることと思います。

(京都POSSEボランティアスタッフ・女性)

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