今期初銃猟。
獣害対策の金網や電柵の整備で、見切り(どの山へどんな獲物が入ってるのか、足跡などの痕跡から見極める)や待ち(勢子に追い出されてくる獲物を鉄砲を抱えて待ち受ける人)の配置も頭を使います。
待ちが配置されてからしばらく、無線が入ります。「出たぞ!!」そして銃声が2,3発。
またしばらくして勢子からの無線。「犬がやられた。獲物を仕留めた。早く来てくれ!」みたいな無線が飛び交います。中には「あ~犬がだめだ・・・」みたいな悲痛な無線も。
まだ僕の待ちは解除されてないし場所も特定出来ないので動けません。
それから数分、僕の待ち場所から6,70mの所、谷下でゴソリと動く黒い影。イノシシだっ!しかも結構でかい。7,80kgはありそうでした。射程圏内に入るまで決して動くなと言われていましたが、少し遠い上、そのまま進まれると死角に入られそうでしたので、体制を立て直すためにゆっくりと立ち上がりました。その瞬間、イノシシは立ち止まり、振り返って悠々と去っていきました・・
それから勢子と合流。カイ君と言う猟犬がイノシシとの格闘の際、深い傷を負って絶命したそうです。勢子が撃ったイノシシを見てみると・・小さい。。腹抜き10kgちょいのオスでした。
これに犬がやられるハズが無い。やったのは・・・多分僕の待ちに飛んできたあの大きなイノシシです。僕が動いたせいで、カイ君が命を賭けて追い出したイノシシを倒すことは出来ませんでした。。
ショックでした。危険を伴うイノシシ猟の猟犬ですので、やはり怪我や、場合によっては死亡も、ある程度は覚悟の上ですが・・さっきまで自分たちの仲間としてピンピンしていた生命が一瞬でいなくなってしまうのです。。それは獲られたイノシシファミリーにしてみても同じでしょうが・・生命のやり取りの場面は色んなことを考えさせられます。。
猟師の中には、働きの悪い犬を撃ち殺したり捨ててしまう人もいるそうです。この行為の善悪は別として、犬を猟の単純な道具として使うこと自体に関しては頭の中で理解はできますが、自分にはそれは無理です。イノシシ猟の自分で犬を飼う勢子には僕はなれません。
カイ君を含む、今まで一緒に猟をしてきた猟犬の名前や顔を、僕ははっきりと覚えてません。ある意味覚えないようにしていました。それは、心のどこかでこういう事故を覚悟していたからです。なるべく猟犬は猟犬として扱おうと思っていました。ペットとして情を入れすぎると悲しすぎますので。。
今はカイ君が大好きな山で走り回っているいる事を祈っています。そして実際に生命のやり取りをする猟犬や獲物となる動物たちに敬意を表します。