KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

踏み抜けば、赤岳天狗尾根

2018年03月04日 | アルパイン(積雪期)
日程:2018年3月3日(土)~4日(日)前夜発一泊二日
同行:ヒロイさん(我が社の山岳部)
 
 さて、今回は八ヶ岳東面のバリエーション、赤岳天狗尾根。一年前から部のステップアップ研修として候補に挙げていたルートだ。
 一応、初級バリエーションという位置付けだが、積雪の具合によってはけっこう体力系で、上部岩稜帯は変化に富んで楽しめる。
 ちなみに私は2005年3月下旬に一人で行って完登したが、下部の樹林帯では思いのほか深い雪でラッセルに苦しめられた。
 はたして今回はどうなることやら。
 
 前夜の内に中央道経由で、登山口の美しの森へ。
 着いた時には登山者らしい車はほとんど無く、かつては賑わったアルパインの世界もいよいよ衰退かと思ったが、そのうちそれらしき車がチラホラとやってくる。
 外気はすっかり春っぽい雰囲気だが、アスファルトの底冷えなのかテントでの仮眠はけっこう冷えた。
 
一日目 天候:
行程:美しの森駐車場7:10-出合小屋10::20-道間違えによるタイムロス(約1h)-ナイフリッジ13:30-標高約2,200m付近樹林帯(テン場)15:20
 
 朝食を摂ってから出発。
 つい最近も降雪があったようで、出だしの林道から積雪。ただ、この時点で雪は締まっており、持ってきたワカンは不要と判断。車に置いていく。
 しかし、その判断は良かったのかどうか。一応、トレースはあるものの、凸凹していて歩きにくい。
 
 今日は行ける所までの予定だが、それなりに長丁場なので、樹林帯のなるべく上まで歩を進め、テントを張っておきたい。

 

 天気は上々。風も今のところ穏やかだ。
 真っ青な空の下、眼前の権現、旭の東稜が純白に映えている。一方、右手の天狗尾根は大天狗、小天狗とも荒々しく茶褐色の岩肌を見せていた。
 
 単調な林道歩きが終わると左手に堰堤が現れ、地獄谷沿いに進むようになる。
 この辺りから少し足が潜るようになる。ワカンを置いてきてのは失敗だったか?でもトレースがあるのでまだ何とかなる。
 しかし、足にまとわりつく雪は重い。湿り気を帯びているのか、普通に歩いていても疲労度が大きく、ペースも鈍ってくる。
 それでも先行者のトレースのお陰で、何とかほぼコースタイム通りに出合小屋に着。

 
 
 ヒロイ嬢は八ヶ岳東面は初めて。今後、旭岳東稜や権現岳東稜も視野に入れているので、そのうちこの小屋にもお世話になるだろう。
 だが、最近はこの小屋も夜はミッキーが出るらしい。ミッキーといえば可愛らしいが、実際、夜中に自分の周りをネズミにウロチョロされると気味が悪い。
 まぁ、今日はこちらには泊まらないので一休みしたら先を急ぐ。
 
 先行パーティーの一組はやや年配の4~5人パーティーで、本当は旭岳東稜へ行く予定だったらしい。
 が、美しの森からこの出合小屋までたっぷり5時間もかかってしまい、この先もトレースが無いことから旭は断念したとのこと。
 軽荷で天狗尾根方面へ少し登ってみるとのことなので、自分たちも小休止後、後を着いていく。
 だが、この辺りから重たい雪がいよいよ本領発揮。トレースがあるにも関わらず、ズボスボ潜る。そして自然の落とし穴にハマる。
 
 しばらくして先行組に追い付いたが、何とそこはツルネ東稜の登り口。
 てっきり天狗尾根だと思ってトレースをのこのこ付いてきてしまった。大きなタイムロスだ。
 さすがにここですぐに計画をツルネ東稜に切り替えるわけにもいかず引き返す。もう何人も歩いた跡だが、けっこう潜る。
 天気はいいが、この重い雪質では今回は時間切れ敗退か?
 
判断を迫られ、改めてヒロイ嬢と協議。
 選択肢としては、
・敗退覚悟でこのまま天狗尾根続行
・直ちに往路を戻り、八ケ岳西面へ転進
・今回はトットと山を諦め、明日はクライミングで仕切り直し。

 自分は正直三つ目の選択でもいいかと思ったが。ヒロイ嬢はできたら行きたいと意志が強く、天狗尾根続行で決定。
 
 
 
 しかし、その先、雪はますます深くなる。
 急な斜面をフウフウ言いながら登り詰め、細い雪のリッジへ。
 さらに樹林帯を登り詰め、上部で先行二人組に追い付く。
 彼らもワカンなし。ウチらと同様、車に置いてきたらしい。それでもここまで二人で登り詰めるとはさすがである。その強靭な体力に驚くとともに感謝する。
 
 そこからはラッセル交替、自分たちが引き継ぐ。が、やはり雪は深く、重い。
 どうにも進まず、時には匍匐前進で進んだりする。
 まだカニのハサミは見えないが、おそらく近いであろう樹林帯の中の比較的平らな場所を選んでテン場とする。・・・疲れた。

 
 
 夕食はヒロイ嬢のお手製メニュー。
 昨年秋に一緒に大同心へ行った時は完全レトルトメニューだったので(私は食にうるさくないのでそれでも満足だったが)、もしかして気にしたのかもしれない。
 具沢山のリゾット風でたいへん美味しくいただきました。m(_ _)m

 
 
二日目 天候:
テン場5:15-カニのハサミ6:40-30mのルンゼ7:00-大天狗の岩場8:25-縦走路9:55-ツルネ11:40~12:00-上ノ権現沢-出合小屋-美しの森P17:20
 
 朝、ヒロイ嬢の特製野菜ラーメンをおいしくいただき出発。
 我々の少し下には後発の三人組がテントを張り、そして昨日先頭で頑張ってくれた中年男性二人組はそれよりずっと下に張ったようだ。
 とにかく今日は我々が一番手。いきなり急な直登、もちろんノートレースだ。
 膝から腿、時には腰までハマって重たい雪と格闘する。

 
 
 樹林帯を出るまで永遠の長さに感じられたが、ようやく抜け出し、眼前に待望の「カニのハサミ」が現れる。
 上部に出ると嬉しいことに(もちろん予想していたが)雪も飛ばされ、歩きやすくなってきた。

 
 
 ハサミは左裾をトラバース。
 次のちょっとした岩稜は雪の付き方によっては悪く、パーティー次第ではロープを出す必要もあるが、今回はヒロイ嬢を信頼してロープは出さず、そのまま通過。
 
 次のセクションであるトラバースから30mのルンゼに移る。
 ここで、後ろの三人組に追い付かれ、トレースのお礼を言われる。
 ルンゼ手前のトラバースはFIXロープが表面に出ていたので、カラビナを通して通過。

 
 
 その上のルンゼは雪の付き方によっては、核心となるポイントだ。
 絶対に落ちれないところだが、雪が安定したのでここもロープを出さずにヒロイ嬢を先に立たせて突破。
 次のニセ天狗の岩稜もそのままリッジ通しに上がる。
 
 そして最後、大天狗の岩場。
 以前一人で来た時はもう少し岩のセクションが長いように感じたが、実際にはほんのひと登りだった。
 フリーで5.10cまでリードできるようになったヒロイ嬢には何の問題もないが、ここだけ念のためロープを出してリードしてもらう。

 
 
 上部に出ると風が強くなってくる。最後は簡単な雪稜を登り詰め、ようやく縦走路との分岐点に到着した。
 ここで握手!お疲れさまでした!

 
 
 時間と余力を考えて今回は赤岳は割愛、縦走路をツルネへ向かう。
 しばらくは岩のルンゼを矢印に導かれ進む。
 キレットまでガーッと下って、その後のツルネへの登りが辛い。
 
 ようやくツルネ。ここで大休止とする。
 周囲の展望を満喫する。

 
 
 しかし、気を抜いたわけではないが、その後の下山でちょっとミスった。ツルネ東稜を下るつもりが、誤って別の下降路をとってしまう。
 後から旭東稜の三人組も付いてきたが、どうも判然としない。結局GPSを持っている彼らの後を付いていくようにしたが、途中から尾根はブッシュがひどくなり、右手の上ノ権現沢へ導かれる。
 深雪で滝がほとんど雪のデブリに埋もれていたため、労せずそのまま下れたが、本来はリスキーな選択。
 最後までロープを使わず下れたラッキーだった。
 
 出合小屋で先導してくれた東京の山岳会三人組に礼を言い、夕暮れ迫る林道を下山する。
 昨日からの二日間、踏み抜きラッセルに苦しんだが、下山になっても最後の最後まで落とし穴にハマったりして辛抱我慢の山行だった。
 素晴らしい天候と頑張ったパートナーに感謝。

 


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