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KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

冬の尾白川本谷・回収山行 #2

2012年01月08日 | アルパイン(積雪期)

天候:無風
行程:二日目
 起床5:30-出発7:05-二俣(黄蓮谷出合)7:55-西坊主沢手前(目的地)10:55~11:25-二俣13:30-岩小屋撤収15:30-黒戸尾根五合目17:10-刃渡り18:10-駐車場20:40 

 5時起床、6時出発のつもりだったが、皆でグズグズと30分ほど寝過ごしてしまい、うっすら明るくなってからスタート。
 朝一でボーッとして一度ルートをミスったが、昨日自分が付けたトレースが少しは役立って、サクサクと下降。
 思いのほか早く、本谷最初のナメ滝に到着する。

 ナメ滝は、釜は薄い氷が張っているだけだが滝はガチガチに凍っており、アイスに慣れたかっきーがまずはフリーでさっさと登る。
 ノーマルな中古アイゼンの私やケイさんはどうも心許なく、オーソドックスに右側の草付き壁を中段まで上がり、そこから先はかっきーが張ってくれた細引フィックスを伝って落口まで。
 ラストのjuqcho氏はフォローの形で凍った滝を登ってきた。

 その後しばらく雪の積もったゴーロが続く。

 やがて先ほどよりややスケールのあるナメ滝が現れ、ここもかっきーがリード。
 後の三人がロープを張ってもらってフォローする。

 見通しでは本谷を詰めて1時間強と踏んでいたが、これはやはり楽観的な予測だったようで、荷物の残された西坊主沢の出合まで意外と遠い。
 上流に行くに従い尾白川特有の巨岩が立ち塞がり、そこを縫うように雪と氷の河原を進んでいく。

 左手の三角岩のピークも間近になり、右側斜面を大きく高巻いていくと、やがて前方の一段高い所に黄色いテントを発見。そこが目的地だった。

 とりあえず手順に沿って品物を回収。
 小休止後、今来た道を引き返す。

 二つのナメ滝は懸垂下降。
 
 途中、薄い氷を踏み抜いて釜にハマったり(←私です)、黄蓮谷に入ってすぐのトラロープの登り返しでバイルを落としてしまったり(←無事回収)とポカミスはあったが、何とか無事に岩小屋に帰着。

 残るは暗くなる前に五合目まで上がること。
 その先の黒戸尾根はヘッデン下降となるが、山でも「残業」慣れしているこのメンバーなら不安は無い。

 ベースの岩小屋を撤収してまた一段と重くなったザックを背に、きつい樹林帯の登り。
 それでも行きよりはずっとスムーズに活路を見出し、日没寸前のところで五合目に到着できた。

 ヘッデンを点けて黒戸尾根を下り、「刃渡り」の手前で留守番部隊に連絡を入れたが、下ではやはり少し心配していたとのこと。ここでケータイが繋がって良かった。

 黒戸尾根はこれまで夏冬併せて何回も下っているが、やはり暗くなって、一日13時間行動となると疲れも出てきて、本当に果てしなく感じる。
 ようやくの思いで駒ケ岳神社にたどり着き、ここで無事下山に感謝、四人で固い握手を交わす。
 
 とりあえず自分たちの「仕事」を片付けることができて良かった。
 あとは、また後日。


(photo by かっきー、juqcho、ケイ & 現場監督)


冬の尾白川本谷・回収山行 #1

2012年01月07日 | アルパイン(積雪期)

詳細は省くが、とりあえず行動記録。

天候:無風
同行:かっきー氏、juqcho氏、ケイさん
行程:一日目
 登山口6:50-黒戸尾根刃渡り10:30-五合目11:50~12:05-千丈の岩小屋13:45~14:10-二俣(黄蓮谷出合)15:10-尾白川本谷最初のナメ滝15:30-岩小屋16:50

 2012年、正月最初の三連休。
 今年は大した計画も無く、単独で毎度のごとく八ヶ岳東面辺りを考えていたのだが、急な事情により南アルプスの尾白川本谷へ。
 ある知人が(私自身、一度沢で出会っただけの間柄であるが・・)山で事故に遭い、今回は現地に残されたその荷物を回収に行くというのが目的。
 メンバーは当事者の友人であるかっきー&きむひろ氏、それに手伝い組としてjuqcho氏とケイさん、それに私。
 このメンバーで揃って山へ行くのは初めてだが、山の世界は狭いもので何だかんだで知った顔である。

 事は急ぐということで、前夜のうちに現地入り。
 juqcho氏と私は「道の駅・白州」にテントを張って仮眠をとるがこれは失敗。
 夜半になってもすぐ前のR20号を車がひっきりなしに通り、落ち着かない。
 どうにか2~3時間ウトウトしたまま、朝を迎える。

 回収隊リーダーのかっきーの指揮の下、行動スケジュールを確認、まずは勝手知ったる黒戸尾根を登り始める。

 事前のネット情報どおり、黒戸尾根の下半部はいつになく雪が少ない。
 晩秋のような剥き出しの土と落ち葉の道をしばらく進むが、いくらも登らないうちに一人が体調不良で遅れ始める。
 途中で彼の個人装備まで皆で分担するが、どうにもペースは上がらない様子。
 こんなところでグズグズしていても困るが・・と思っているうちに、三~四合目間の「刃渡り」で自らリタイア。
 まぁしかたがない。
 共同装備を引き継ぎ、残りの四人で先を急ぐ。

 五合目に到着。
 小休止後、冬の黄蓮谷ベースとなる千丈の岩小屋へ向かう。
 急な樹林帯を下降していくが、これが噂どおりの難路。
 ある程度の間隔で赤テープ有りとのことだったが、実際には昨夏の台風のせいか倒木が多く、不明瞭。
 少しトラバースした後、左側に折れて谷に向かって真っ直ぐ降りていくべきところをそのまましばらくトラバースを続けてしまう。
 だいぶ西寄りにルートミスをしたまま樹林帯の急斜面を徘徊するが、かっきーがGPSで軌道修正をしながら、何とか岩小屋着。

 五合目からだいぶ時間がかかったように思えたが、時計を見るとまだ14時前後。
 この先、まだ目的地までどれほど時間がかかるかわからない。
 本来なら今日中に目的地まで目星を付けておきたかったのだが。
 少しでも行程を進めるため、そこからは自分一人で偵察に出かける。
 とりあえずトレースを付けておけば、明日暗いうちからヘッデンで行動できるだろう。

 黄蓮谷はつい二年前の夏に遡行したばかりで記憶に新しいが、やはり夏と冬では様子が違う。
 ところどころ薄い氷、分厚い氷とルート取りに悩みながらもほぼ右岸通しに下っていき、最後は年季の入った残置のトラロープでクライムダウンすると、そこが尾白川本谷との二俣。
 休まず、そのまま本谷に入り、最初のナメ滝を記憶を頼りに半分ほど登ったところで本日は時間切れ。
 2009年の夏に一人で本谷の途中まで詰めたことがあるので、地形は大体見当がついた。

 来た道を引き返し、どうにかヘッデンを使わずにベースの岩小屋に帰り着く。
 ちょっと予定時間を過ぎてしまったため、心配したjuqcho氏が岩小屋下まで出迎えてくれた。 (毎度すみません・・)

 岩小屋内は天井が低いものの、風が吹き込まず快適そのもの。
 さながら地底人の気分。 
 温めた酒類が疲れた身体に染み渡り、昨夜の睡眠不足も手伝って、洞窟の中でぐっすり眠った。



(photo by かっきー、juqcho、ケイ & 現場監督)


冬の甲斐駒・赤石沢奥壁中央稜(敗退) #3

2011年01月10日 | アルパイン(積雪期)

三日目

天候:
起床6:00-出発7:25-五合目8:15-竹宇駐車場11:00

 今朝はのんびり起きる。
 結局、せめて頂上まで一般道でという気力も出ず、そのまま荷物をまとめて下山。

 

 
 気の抜けた私は雪や隠れた木の根に何回かコケて手を打撲したり、もう散々。

 相変わらず黒戸尾根の下りは長い。

  鎖場は慎重に。

 

  五合目から甲斐駒を振り返る

  鳳凰三山

  八ヶ岳

  刃渡り

  甲斐駒

 下山後は昨年夏にタケちゃんと「開拓」した「藪の湯みはらし」で三日間の垢を洗い流す。
 風呂場からは雪を頂いた八ヶ岳、そして甲斐駒が見渡せ、値段も500円と安いし、やはりここは隠れた穴場。

  看板に偽りなし 

 心配していた中央道の渋滞はまったく無く、快調に飛ばして最後はR16号の「かつや」で〆。
 2011年最初から「黒星」発進となったけど、まぁ無事で何より。

 今年も一年、良い年でありますように。


冬の甲斐駒・赤石沢奥壁中央稜(敗退) #2

2011年01月09日 | アルパイン(積雪期)

二日目

天候:
行程:起床3:30-出発5:00-八合目6:00~20-中央稜取付7:30-3ピッチ目途中(撤退)12:15-八合目14:20-七丈小屋15:00

 寝静まっている皆さんに迷惑をかけないようコソコソと朝飯を済ませ、出発。
 外に出ると満点の星。風はそれほど無く、冬山にしては寒くはない。絶好のコンディションだ。

 ヘッデンを点け、juqcho氏先頭で進む。
 八合目下でjuqcho氏がトイレ・タイムに入ったため、私が先行し、八丈バンドの入口でしばし待つ。

 

 鳳凰三山のシルエットの向こう、東の空がオレンジ色に染まり始めた頃、八丈バンドの下降開始。
 けっこう急で、時折足を深い雪に取られたりするがぐんぐん下る。

 

 

   

 やがて前方に朝焼けに輝く圧倒的な壁が立ちはだかり、さすがにここではないなと思って振り返った少し上が今回我々が登る予定の中央稜取付だった。

  
 ルートはこんな感じ(サムネイルをクリック 

 

 juqcho氏に「順番どうする?」と聞くと、「自分は夏に一度リードしてるので、ここはどうぞ。」という返事。
 うーん、夏と冬とではまったく別モノだと思うけど・・・まぁいいでしょう、私はアルパインでは特にピッチの選り好みはしないので。
 というわけで、Wロープを結んでさっそくスタート。

  

1ピッチ目
 Ⅴ、A0(以下、グレードは体感)
 
 チムニー~浅い凹角状のフェース。
 私のリード。出だしはチムニー。下から見ると、それほど難しそうに見えないが、狭苦しくてザックがつかえてどうにも登りにくい。
 くそーっ、ナンなんだ。これは!
 夏ならフラット・ソールのスメアを利かせて、チムニーの中に潜り込まずにさっさと行けるのだろうが、アイゼンではイマイチ爪の置場が見つからず、ガリガリと岩を引っかき、もがくばかり。

 どうにもダメなのでまずは空身でチムニーをズリズリ上がり、途中で一本カムを決める。
 チムニーを抜けた箇所でロープを一本ほどいて自分のザックを吊り上げる。
 ルートはそのままやや右寄りに一段上がってから直上。浅い凹角状のフェースが続く。

 

 数メートルはガバに助けられ快適に上がるが、次第にホールドが乏しくなってきて最後のセクションはかなり悪い。
 アイゼンでだましだましのステミングで耐えながら、凍った草付にピッケルとアイスハンマーを打ち込むが、硬くてことごとく跳ね返される。
 残置はあるはあるが、久々に頭の中が真っ白になるほどアドレナリン出しまくり。
 最後のランナウト気味の所は、気休め程度に手持ちのイボイノシシをどうにか半分ぶち込んで、落ちる前に気合で駆け上がった。
 ずいぶん時間をかけてしまったが、いやぁここ絶対にⅣ級じゃないです!

 やっとの思いで赤い残置スリングがある立木でたどり着き、そこでビレー。
 juqcho氏もフォローながら苦労している様子。
 チムニーはカムを頼りに、そして後半のフェースはゴボウも交えて登ってきた。


2ピッチ目
 Ⅳ+

 スラブ~悪い草付のトラバース
 juqcho氏リード。
 やや左上の立木に残置スリングらしきものが見えるのだが、juqcho氏はなぜか右のバンドの方へ進んでいく。
 で、ラインからだいぶはずれた所で最初のランナーを取る。うーん、そっちじゃないと思うけど。
 正規のラインはやや左上に向かってスラブを上がっていくようだが、このスラブ、下から見ると簡単そうに見えるが、近づくと意外と立っている。

 
 
 結局、このスラブを避けては通れず、juqcho氏、逡巡しながらも思い切ってリード。
 スラブの上は雪に埋もれた不安定な草付を潅木頼りに左にトラバース。
 ロープの流れを考え、短めにピッチを切る。
 フォローしたが、たしかにここもアイゼンの爪がうまく立たず、見た目よりずっと悪い。

 


3ピッチ目 Ⅱ

 雪壁のラッセル
 私がリード。難しさはまったく無いが、吹き溜まっているのか胸元にまで迫るフカフカ雪を切り崩し、踏み固めての登りに息が切れる。
 次の岩場の手前までロープを伸ばす。

 

 juqcho氏が上がってきたところで小休止も兼ね、一旦協議。
 ここまでで随分と時間がかかってしまい、この3ピッチ目の様子だと上部の雪壁帯は相当のラッセルとなること必至。
 このペースでは絶対に明るいうちには終了点まで抜けられないだろう。
 一応、ビバーク用具一式(ツェルト、マット、ストーブ、シュラカバー、食料など)は持ってきているが、今夜は寒波が近づいていると小屋のおじさんも言ってたことだし。
 相手が「綾瀬はるか」ならいいが、中高年おやじ二人で「甲斐駒心中」というのはできれば避けたい。

 ここで敗退決定としても良かったが、とりあえず午後2時を退却のリミットにしようと決め、もう少しだけ続行する。


4ピッチ目 Ⅳ、A1

 人工のフェース~階段状の草付
 juqcho氏リード。
 すぐ手前にリングボルトが一本打ってあるが、これは夏だと最初のランナーになるとのこと。
 今は雪が深くてだいぶ下が埋まっているが、それでもアイゼン履いてフリーでここを突破するのは厳しい。
 juqcho氏、得意のアブミを駆使してフェースを上がり、その先は階段状に草付が続くが、ここも見るのと登るのでは大違い。
 けっこう悪そうだ。

 今にも折れそうな潅木を頼りに不安定な草付をどうにかこうにか繋いでいく。
 私もフォローし、その先でチムニー、クラックと続く所で再度協議。juqcho氏によると、クラックはアイゼン履いてだと今まで以上に厳しいだろうとのこと。

 残念ながら、今回はここで敗退決定。
 これ以上無いほどの絶好の天気に恵まれながらも、技術、スピード、体力・・・全てにおいて要修行!
 サクッと登って「乾杯」するつもりが「完敗」になるとは・・・。

 直径10センチも無い潅木などを使いながら長短合わせて懸垂を3ピッチ。

  

 朝来た八丈バンドを登り返しながら振り返り見る赤石沢奥壁はまさに「長い壁、遠い頂」で、(あんたら、おととい来なさい!)と言っているようだった。

 

 小屋のおやじさんにどう言い訳するかなぁと考えながらも、そのまま七丈小屋に連泊する。

 
 甲斐駒をバックに「オー、マイ、ガッ」のポーズ。
 


冬の甲斐駒・赤石沢奥壁中央稜(敗退) #1

2011年01月08日 | アルパイン(積雪期)

天候:
同行:juqcho氏
参考:「チャレンジ・アルパインクライミング」(廣川健太郎・著) 東京新聞出版局

一日目
行程:竹宇駒ヶ岳神社7:05-刃渡り-五合目11:40~12:00-七丈小屋12:55~14:00-八合目15:30~45-七丈小屋16:20
 
 2011年第一弾の山は南アルプス。
 juqcho氏に誘われ、甲斐駒の赤石沢奥壁中央稜へ。
 冬のアルパインといってもこのエリアでは最も初級のルートなので、何とかなるだろうと甘く考えていたのだが・・・。

 前夜、横浜に集合し、車で現地入り。
 黒戸尾根の登山口、竹宇の駐車場で車内泊し、明るくなってから出発する。
 新年とあって駒ヶ岳神社では手を合わせ、今年の山での無事を祈る。

  いざ出発 

  

 冬の黒戸尾根はこれが三回目だが、今回が一番雪が少ないかも。
 カサカサと落ち葉を掻き分けつつ登り、「刃渡り」辺りでようやく雪が現れる。

  一合目の分岐

  刃渡りを行く

  後方に八ヶ岳

 前半は前を歩くjuqcho氏の快調なペースに引っ張られるようにして、汗をかきつつ五合目まで上がる。
 本日は七合目の小屋までなので「ここから先はマイペースで行きましょう。」と声をかけ、私が先に行く。

  五合目で小休止

 急な梯子段を登り、たしか六合目辺りもダラダラした登りが続いて苦しめられた記憶があったが、思いのほか楽に小屋まで着いてしまった。
 下の駐車場から七丈小屋まで途中休憩を入れても所要タイム5時間50分ほど。
 前回、2007年の冬に単独で登った時は、この行程にピッタリ7時間ほどかかっている。
 今回、ロープやアルパイン用のギアなども背負っていることを思うと、歳をとってもまだまだイケそう?
 juqcho氏もすぐに後から登ってきた。

 この日、小屋へは我々が一番乗り。
 juqcho氏は寝具付素泊まり4,500円、私はシュラフ持参なのでタダの素泊まり3,500円で申し込む。
 宿帳に記載するにあたり、相変わらず「所属団体」に「おやぢれんじゃぁ」と書くのは忍びなく・・・。

 それにしても冬の七丈小屋は快適。
 素泊まりといってもサービスで二品(一泊目は「カップお汁粉」と「コーヒー」)もらえるし、ストーブにかけたお湯は使い放題。

  本日のウェルカム・メニュー

 外は零下でも小屋の中は沖縄並みの気温とあれば、泊まらない手は無い。
  (21世紀を迎えた2001年の正月は、たしか缶ビールのロング缶+みかん2個+カップヌードルをもらったことがある。)

 さて、このまま小屋でダラダラと惰眠を貪るのもアリだが、本日は天気も穏やかでまだ夜までには十分時間もあるので、juqcho氏を残して一人上部へ偵察に向かう。

 少し上の天場を過ぎると、さすがに少し雪が深くなる。
 急な吹き溜まりの斜面では膝から腰にかけてのラッセル。
 明日の朝、暗いうちに出発となるとルートもわかりにくいだろうから、今日のうちにできるだけのことをしておくのは大事。

  鳳凰三山

  甲斐駒頂上方面

  摩利支天と北岳

 普段だと雪があってもせいぜい小一時間の八合目まで、たっぷり一時間半ほどかかる。
 壊れたままの鳥居を過ぎ、最初に出てくる岩場の裾から赤石沢へ下る八丈バンドが延びているはずだが、そこそこ雪が深くて時間がかかりそう。
 とりあえず様子だけ確認して七丈小屋へと下る。

 この日は我々の他に若い男の三人組、中高年男女ペアと単独のおじさんが小屋の泊まり客。
 皆がさっさと睡眠の態勢に入っているのに、酒が入ったおじさん二人がいつまでも山の写真の話をしていて気が気でなかったが、まぁさすがに常識の範囲で夜8時には切り上げてくれてホッ。

  
 juqcho氏の夕食は「超・大盛焼きそば」。驚異の1000kcalオーバー


天狗岳東壁 【北八ヶ岳】

2010年03月14日 | アルパイン(積雪期)

天候:
行動:前夜発日帰り 単独
行程:稲子湯手前-しらびそ小屋-天狗岳東壁-東天狗岳-西天狗岳(往復)-白砂新道-
    本沢温泉-しらびそ小屋-稲子湯

 さて、このところ外岩とジムですっかりクライミング・モードになっていたが、気がついてみるともう春はすぐそこ。
 雪のある時期に少しは冬らしい所に行っておかなければと、今週は久々に「岩」でなく「山」へ出かけることにする。

 先日見た栗城くんの「7サミッツ」にも触発されて、手軽なアプローチながらガツンと手応えがある富士山を計画したが、土曜日に吹き荒れた強風が翌日まで残りそうな気がしたので変更。
 そこでふと候補に挙がったのが、今回の北八ツ・天狗岳東壁。
 「東壁」と言いながら北アの前穂東壁のようなネーム・バリューは無いし、資料によると雪上訓練に最適な雪の斜面がダーッと稜線に突き上げているらしい。

 それなら一人でできるもんと、土曜の夜、車で現地入り。
 昨夏行った稲子岳南壁と同じ登山口まで車で入りたかったが、途中から轍が深いまま路面が凍ってしまっていてスタッドレスでも厳しく途中断念。
 結局、稲子湯から3kmほど手前の空きスペースに停車し、わずかな仮眠を取る。

 4時45分に目覚ましをセットしたが、年度末の残業続きの疲れが残ってすぐには起きれず。
 それでも何とか身体に鞭打って、メシも食わずに1時間後にはスタートする。

 天気予報では晴れマークとなっていたが、上空にガスが残っているのか今朝はドンヨリ曇り空。
 何だかなぁと思いながら、稲子湯まで単調な林道を一人トボトボと歩く。

 登山口の駐車スペースまで行くと、結構な車の数。
 昼間の雪の緩んだ時間帯なら、ここまでは来れたのだが、まぁ仕方ない。

  登山口の駐車スペース

 で、まずは「しらびそ小屋」まで。
 もちろんトレースばっちり。
 先週、横浜でも降った雪を懸念して、今回はワカンも用意してきたが、よく踏まれていて大助かり。
 樹林帯の道に入ると、それまで灰色に曇っていた空が見る見る晴れてきて、気がつけばこれ以上ないぐらいのドピーカン!となる。

  
 雪のトレース                    雪に埋もれたしらびそ小屋

 ほんの少しペースを速めて歩き、登山口から1時間ちょっとで「しらびそ小屋」に到着。
 煙突からは煙が上がっていた。
 みどり池は全面雪に埋まり、ただの白い雪原となっている。
 そして、前方には天狗岳東壁。

  天狗岳東壁。手前の雪原がみどり池。

 正面から見ているので立って見えるのは当たり前。
 はたしてどれほどの傾斜なのか、取り付いてみなければ何とも言えない。
 しばらく道なりに進み、左に本沢温泉への道を分けるとすぐに指導標があり、道はそこから中山峠に向かって右方向へグーンと上がっていくようになっている。
 地図で見るとちょうど道が二俣になっている箇所で、この指導標からまっすぐ進むのが東壁のアプローチのようだ。

  東壁へのアプローチ

 幸い今日はハッキリした深いトレースが残っていて迷う必要がない。おそらく先週ぐらいのものだろう。
 しばらく見晴らしの利かない平坦な樹林帯の中をクネクネと行くが、赤テープは思い出した頃にポツンポツンと疎らにあるだけで、初めて訪れ深雪のトレース無しだとちょっと不安になるかもしれない。

 小一時間ほどでようやく樹林帯から抜け、視界が広がる。
 どうやら出た所は東面でもずいぶん左側のようだ。
 ここでようやくハーネス、アイゼンを付ける。ブッシュがありそうなのでロープは無しで長めのスリングとアンカーだけ用意してきた。

 

 トレースに導かれ、ちょっとした木登りピッチ(Ⅲ級)を越えると、さらに回りは開けて、まるで北アの涸沢を横に広げたような気持ちいい広大な斜面となる。
 いやぁ、たしかにこれは雪上訓練に最適。山スキーにも良さそうだ。
 さらに本日は自分一人で貸切。この広い空間に誰もいないのが気持ちいい。
 振り返ると稲子の南壁がズドンと聳え、昨夏登った左カンテもはっきり見える。

  
振り返れば稲子岳南壁

 緩やかに見える傾斜も次第に急になってくる。
 やがて、もう一つ上のブッシュ帯に突っ込むと割と大きな岩のリッジとなる。
 長らく続いていたトレースもここまで。時間切れかそれとも装備が必要と感じたのかここから引き返したようだ。
 リッジは右から抜けられそうな気もしたが抜け口がわからずちょっとリスキーな気もしたので、安全に左から巻き気味に上がる。

  途中に出てくる岩のリッジ

 左の方は急だが浅いルンゼのようになっていて、そちらの方が楽そうだが、敢えてダイレクトに詰めていく。
 それまでは大したことないなと思っていたが、最後になってようやく「壁」らしくなってくる。白馬主稜の最後のピッチぐらいか?
 雪も固くなり、ミゾーのアイスハンマーも使ってWアックスで行く。

   

 途中で写真を撮ろうと手袋を外した時、誤って片方を落としてしまう。
 見る見るうちに落ちていく手袋。途中で止まらずあっという間に100mぐらい流されていく。
 一歩バランスを崩せば自分も同じ。
 雪の斜面なので大した怪我はないだろうが、もう一度登り返すのは嫌なので慎重に行く。

  
上部はそれなりに壁らしくなってくる。

 ふと見ると左手の稜線に数人パーティーの登山者が見えた。
 あと少し。
 最後、真っ白い雪壁を上がっていくところは、まるで未踏峰を登っているような、ちょっとした感動を味わえた。

  右の岩峰が東天狗。左の白いのが西天狗。

 登りついたところは東天狗の岩峰のやや南側。
 稜線に出た途端、冬八ツ特有の西風の洗礼を受ける。
 東天狗のピークで小休止後、西天狗も往復。
 天狗岳はおよそ20年振りだ。
 雲一つない絶好の青空の下、南ア、北ア、浅間山などを遠くに望み、しばしまったり。

  東天狗頂上。

  

  

 
下山は本沢温泉経由とする。
 稜線を少し南下し、途中から白砂新道という道を採ろうとしたらトレースどころかまったく道らしき形跡無し。
 この時期、深い雪に埋もれているようで、それでも前方遠くに本沢温泉の小屋が確認できたので、思いきって急な雪の斜面に突っ込む。
 出だしはけっこう急だが、スネぐらいが潜る感じでグングン高度を下げていく。
 樹林帯に入ると視界が利かずちょっと不安を感じたが、見当をつけて沢筋通しに雪を掻き分けていくと、やがて本沢温泉の小屋が見えてきて思わずホッ!

 念のため、少し上にある日本最高所の露天風呂を見に行く。
 この時期、加熱していないと若干ヌル目。
 まだ、この先2時間ほども歩かなければならないので湯冷めしてもと思い、今回は見送り先を急ぐ。

  本沢温泉「日本最高所の露天風呂」

 再び、しらびそ小屋に立ち寄り、デポしておいたワカンを回収。
 あとは踏み馴らされた雪のトレースをダーッと小走りに下山する。
 〆は信州秘湯会の一つ「稲子湯」へ。なかなかシブい岩風呂。600ならまずまずでしょう。

  

 さて、ほとんど予備知識なしで取り付いた天狗岳東壁だったが、帰ってから「日本登山体系」で確認したらいくつかルートがあることがわかった。
 今回、自分が取り付いたルートは特に表記なしで、敢えて近隣のルートからそれらしい名前を付けるとしたら「天狗岳東壁・正面左バットレス」とでもなるだろうか。

 

 グレードとしては赤岳東稜や阿弥陀中央稜と同程度の初級バリエーション。
 条件とルートさえ選べばロープ不要だが、雪壁主体なので新雪とあまり遅い時期は雪崩に注意が必要かも。
 隠れたプチバリという感じたが、ロケーションは良く、もっとネットの記録に載っていても良さそうな気がした。


八ヶ岳・広河原沢中央稜~阿弥陀岳

2009年12月13日 | アルパイン(積雪期)

天候:のち 微風
行動:前夜発日帰り 単独
行程:舟山十字路5:50-二俣6:50-第一岩峰9:00~25-阿弥陀岳11:25~50-舟山十字路15:50

 12月に入り、いよいよ冬山シーズン到来。
 冬靴とアイゼン鳴らしを兼ねて、勝手知ったる八ヶ岳へ。
 今回のコースは西面の初級バリエーション、広河原沢中央稜。
 グレード的には今さらという感じだが、まだトレースしたことがなかったし、今回は「ファイン・トラック」社のモニター・レポートが目的なので、まぁ手頃なところだろう。
 条件さえ良ければロープは不要ということだが、単独なので念のためヘルメットと長めのスリング、ハーネスぐらいは持っていく。

 前夜、車で登山口の舟山十字路入り。そのまま車内泊し、未明に出発。

 一昨日はけっこう荒れた天気だったはずだが、気温が高かったようで、積雪は昨年同時期より少ない。
 周辺にはアイス目当て?の車が10台近く停まっていたいたが、はたして凍っているのだろうか。

 林道をそのまま進み、堰堤に付き当たった所からさらに涸沢を詰めていくと、やがて大きく分かれた二股。
 この辺り、赤テープや赤ペンキの表示が随所にあり、ちょっと惑わされるが、大きく分かれた二股の正面やや右寄りに赤ペンキで「四区」と書かれた大木を見つけたら、それが正解。
 そのまま右俣に沿って進み、少し行った先にまた「四区」の表示。そのまま左手の急な樹林帯へ登っていくのが、中央稜だ。

  

 しばらくアイゼンを付けずに登っていくが、所々モナカ雪となっていて、体重を載せるたびにバコバコと踏み抜き、体力を消耗させられる。
 積雪は深い所でヒザぐらいまで。
 ふかふかパウダーにもがくのに較べたら大したことないが、それでも単独ラッセルはなかなか辛い。

  前方に見えてきた第一岩峰

 天気は落ち着いているので、慌てず騒がず「辛抱我慢」で登り続け、出発から三時間ほどでルートのハイライトとなる第一岩峰に到着。
 ようやく辺りの視界も開けてきて、ここで小休止。
  
 岩峰自体は思ったより大きいが、ここはセオリー通り、第一岩峰は右から、その上の第二岩峰は左から巻いていく。
 直登でもラインを選べばアルパインのⅢ級程度だろうが、残置の支点も見当たらないし、まぁヘタな冒険はしない方が無難だろう。

  第一岩峰は右裾を巻く

  第一岩峰付近から望む阿弥陀南稜

 第二岩峰の左端を回り込む所とそこから続くやや急な雪面と細いリッジが、かろうじてアルパインぽい雰囲気である。

  第二岩峰は左から巻く

 

振り返れば、遠く北アルプスの山々

  中央稜の核心部を抜けた所

  権現岳の向こうに北岳

  摩利支天へ続く最後の登り

  阿弥陀岳の向こう、雲海に浮かぶ富士山

 右に権現岳や阿弥陀南稜を眺めつつ、気持ちの良い尾根を詰めて行くと左手の御小屋尾根に合流。
 
 あとは摩利支天のちょっとした鎖場を慎重に越えると、ドーム状の阿弥陀岳に到着。

  阿弥陀岳山頂

この日は他に登山者も少なく、山頂は独り占め。
 風も僅かに吹くだけで、ゆっくりと辺りの展望を楽しむ。

  高度計は2,910mを表示

 

 下りは南稜でもいいかなと思ったが、ロープを持ってこなかったので、無理せず一般ルートの御小屋尾根とする。

 中央稜を登っている時に御小屋尾根を下山しているパーティーが1組いたので、トレースはバッチリ。代わりにこの尾根を一人で登ってきたおじさんとすれ違うが、「ステップを崩されて登るのが大変だ。」とボヤいていた。

  頂上から下る道
 
 ひたすら長い尾根を延々と下っていくが、最後に気を抜いて凡ミスを犯してしまう。
 車の停めてある舟山十字路へは途中から分岐を左に下りるのだが、それを通り過ぎてしまったのだ。
 (赤テープやベンキに従い、ずっと直進してしまいがちだが、途中の木に「→阿弥陀聖水」と書かれた方へ向かうのが、正解。)

 途中からどうもおかしいと気づき、軌道修正したが、結局、複雑に入り組んだ別荘地の一角に出てしまう。
 しかたなく煙突から煙の出ている別荘を訪ね、道を聞いたがいまいちはっきりとせず。次に聞いたおじさんが親切にも十字路まで車で送ってくれた。
 自分の足で歩いていたら、さらに小一時間ロスしていたので、大助かり。ありがとう、おじさん。