学生の頃、青春18きっぷで
よく旅をしていた。
九州の旅もした。
日田彦山線に、夜明けという名の
駅があって、その名に惹かれて
旅に出た。
長閑な駅に降り立ち
記念に切符を買って帰った。
帰ると、クラスメイトが
「もう駄目なのよ」と何度も
ため息をついていた。
何が駄目なのか
分からなかったので
夜明けの切符を渡した。
クラスメイトは、ありがとうと
笑みを浮かべた。
あれから、十数年
体調を崩した私は
夢を諦めこちらで
夫の自営業の手伝いをしながら
暮らしている。
なんとか、続けている
私たちにお客さんが
「いつも助かっています」
と言ってくれることがある。
とても嬉しい。ありがたい。
夜の路地、空を見ながら
作業着のジャンパーに手を入れる。
ポケットには
まだ、青春のきっぷが入っている。
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