昔、むかしの話である。
夜になると、外に細く悲しい
ピーィ~ ピーィ~
笛の哭く音を町内に響かせて、
歩く男がいた。
「ちょいと、ちょいと」
お屋敷の女将が、笛を哭かす男をお呼び止めた。
「へい、ありがとうござますだ」
男は、村の訛で答えた。
「こちらよ、」
女将は、お屋敷の入り口で,手招きした。
男は、耳を澄ましその方向を確かめた。
写真と記事は関係ありません。
「ずいぶん大きなお屋敷ですな、もし」
屋敷に招かれた男は、皮膚の感覚でそう言った。
男は、耳で聞き、肌で感じるしかなかった。
そう、男は目が見えないのだ、
目が見えなくなって、もう30年にもなる。その原因を
男が語ったことがないが、痴話喧嘩の結果、
女が丑の刻参りを執り行い、男は失明した。
村の夜の暗い川の流のように、まことしやかにそう噂が流されていた。
そして、男は流れて、このお屋敷の中にいる。
一度は二階の階段に上がり、今度は階段を下ろされていた。
「ずいぶん、長く降りているようですが」
男は、不安げに言った。
「そんなことありません!上がったときと同じ長さです。
たぶん、お前の目が見えないから不安になり、
そう感じるだけです」
女将は、きつい言葉で言った。
男は、女将の気分を害したのを感じ、
それ以上は何も言わず、女将の足音に続いて行った。
重いドアが軋む音がしたのを男が聞いた。
女将がなにかやっている。
「お七、呼んできたわよ、按摩よ、いい男だわよ」
女将が、ふとんの中で養生しているお七に向って、
立ったまま、知らせた。
「ありがとう」
お七は、薄く答えた。
「じゃ、お願いね,按摩さん」
女将は、按摩の男をお七のところに連れていった。
「へい、おかまかせください」
男が全部言い終わるまえに,ドアの軋む音を耳にした。
女将の早足の音を聞きながら、男はお七に近づいた。
「按摩(あんま)お願いね、少し強めにしてください」
お七は、女将と違い、優しい言葉なのを感じた男は安心した。
「それじゃ、始めますだ…おや随分凝ってますだ、ね」
男は、終わったら「お礼ははずみますからね」と女将に言われていたので
上機嫌で上半身から揉みだした。
臥(ふ)せっているので、長く少しごわごわしていた髪の毛を
かき分けて、男はツボを探しては、もみほぐしていた。
「あぁ、いいわ、そこなのよぉ」
お七は、腰あたりを揉まれ、そう声を上げた。
「随分凝ってますだ、それにずいぶんお痩せになってしまっている…」
おとこは、お七が病で臥(ふ)せっているのを,按摩の経験から知った。
「そうなのよ、ああぁ、」
お七は、恍惚とした声をあげ…体を少し反らした。
「気持ちイイィ…」
お七はまた、あげた。
とたん、男は、なにか重たいモノが落ちる音を聞いた。
落ちた音は、音を立てながら転がっているのを男は聞きつけた。
「何か、落ちましたか…」
男は、お七に聞いた。
「大丈夫よ、何も無いわ、つづけてェェ」
男の耳には、お七の声がどこか寂しそうに届いた。
だが、その声は、何かが落ちて、転がった方向から喋っていたのだ。
そして、その転がったところには骸骨が一つあった。お七の骸骨だった。
屋敷牢:超微風ブログエアコン
座敷牢の中の話でした。温度下がらず、あがりつづけたかも(苦笑)?
夜になると、外に細く悲しい
ピーィ~ ピーィ~
笛の哭く音を町内に響かせて、
歩く男がいた。
「ちょいと、ちょいと」
お屋敷の女将が、笛を哭かす男をお呼び止めた。
「へい、ありがとうござますだ」
男は、村の訛で答えた。
「こちらよ、」
女将は、お屋敷の入り口で,手招きした。
男は、耳を澄ましその方向を確かめた。
写真と記事は関係ありません。
「ずいぶん大きなお屋敷ですな、もし」
屋敷に招かれた男は、皮膚の感覚でそう言った。
男は、耳で聞き、肌で感じるしかなかった。
そう、男は目が見えないのだ、
目が見えなくなって、もう30年にもなる。その原因を
男が語ったことがないが、痴話喧嘩の結果、
女が丑の刻参りを執り行い、男は失明した。
村の夜の暗い川の流のように、まことしやかにそう噂が流されていた。
そして、男は流れて、このお屋敷の中にいる。
一度は二階の階段に上がり、今度は階段を下ろされていた。
「ずいぶん、長く降りているようですが」
男は、不安げに言った。
「そんなことありません!上がったときと同じ長さです。
たぶん、お前の目が見えないから不安になり、
そう感じるだけです」
女将は、きつい言葉で言った。
男は、女将の気分を害したのを感じ、
それ以上は何も言わず、女将の足音に続いて行った。
重いドアが軋む音がしたのを男が聞いた。
女将がなにかやっている。
「お七、呼んできたわよ、按摩よ、いい男だわよ」
女将が、ふとんの中で養生しているお七に向って、
立ったまま、知らせた。
「ありがとう」
お七は、薄く答えた。
「じゃ、お願いね,按摩さん」
女将は、按摩の男をお七のところに連れていった。
「へい、おかまかせください」
男が全部言い終わるまえに,ドアの軋む音を耳にした。
女将の早足の音を聞きながら、男はお七に近づいた。
「按摩(あんま)お願いね、少し強めにしてください」
お七は、女将と違い、優しい言葉なのを感じた男は安心した。
「それじゃ、始めますだ…おや随分凝ってますだ、ね」
男は、終わったら「お礼ははずみますからね」と女将に言われていたので
上機嫌で上半身から揉みだした。
臥(ふ)せっているので、長く少しごわごわしていた髪の毛を
かき分けて、男はツボを探しては、もみほぐしていた。
「あぁ、いいわ、そこなのよぉ」
お七は、腰あたりを揉まれ、そう声を上げた。
「随分凝ってますだ、それにずいぶんお痩せになってしまっている…」
おとこは、お七が病で臥(ふ)せっているのを,按摩の経験から知った。
「そうなのよ、ああぁ、」
お七は、恍惚とした声をあげ…体を少し反らした。
「気持ちイイィ…」
お七はまた、あげた。
とたん、男は、なにか重たいモノが落ちる音を聞いた。
落ちた音は、音を立てながら転がっているのを男は聞きつけた。
「何か、落ちましたか…」
男は、お七に聞いた。
「大丈夫よ、何も無いわ、つづけてェェ」
男の耳には、お七の声がどこか寂しそうに届いた。
だが、その声は、何かが落ちて、転がった方向から喋っていたのだ。
そして、その転がったところには骸骨が一つあった。お七の骸骨だった。
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座敷牢の中の話でした。温度下がらず、あがりつづけたかも(苦笑)?