
月曜の夜は朝日カルチャーセンター新宿教室で、大栗博司先生の一般社会人・学生向けの講座の第3弾「ヒッグス粒子とは何か」を受講してきた。6月に開催された「重力をめぐる冒険(朝日カルチャーセンター)」以来4ヶ月ぶりである。
今回の講座は午後6時半からの2時間。これまでと同じ100人以上入る教室は満員御礼。あらかじめ席に配布されている講義資料のスライドは140枚あった。先生がお描きになったイラストが満載である。
ご存知のように今年の7月4日にヒッグス粒子発見のニュースが全世界をかけめぐった。(参考記事:「祝!:ヒッグス粒子発見」)けれどもニュースや新聞で報道された解説はどうもいいかげんなものばかり。
「場の量子論〈第2巻〉素粒子の相互作用:F.マンドル、G.ショー」や「日経サイエンス2012年9月号:特集ヒッグス粒子」を読んで、ヒッグス場やヒッグス粒子のことはひととおり学んでいたので、僕の関心はもっぱら場の量子論や素粒子物理学というとても学ぶことがたくさんあり、込み入った分野をたった2時間の講座でどのように大栗先生がお話になるかということだった。
大栗先生が元気に登壇され、授業が始まった。
全体の流れは次のようなものであった。
- 7月4日、CERNでの報告
- ヒッグス粒子の発見はなぜ重要か。
- 自然界の4つの力
- ヒッグス粒子の話とは弱い力の話
- 「質量の起源」の話はどうなったの?
- 力とは状態を変えるもの
- 「場」の考え方
- フェルミオンとボゾン
- 強い力について
- ヤン-ミルズの理論
- 弱い力について
- パリティの破れ
- スピンについて
- 対称性の自発的破れ
- 素粒子の標準模型
- ヒッグス粒子をどうやって見つけるか
- この新粒子は本当にヒッグス粒子か
2月と6月に開催された「重力」についての講座よりはるかに難しい内容だ。ヒッグス博士を筆頭として、素粒子物理学の発展に貢献した何人もの物理学者の話が盛り込まれているので、理論がどのように発展してきたのかが理解しやすい。それぞれの話が次の話に結びつく構成でお話されていたので、2時間の授業はまるで「素粒子物理物語」を聞くようだった。
予習してきたにもかかわらず、知らなかったことが次々でてくるので気を抜くことができなかった。特に僕の印象に残ったのは次のようなことだ。
1)弱い力の例として原発のセシウム137から出る放射線、太陽が100億年という長い間エネルギーを放出していることを取り上げ、人類にとって「弱い力」が有害な面、有益な面の両方の意味合いを持つことを説明されていた。福島原発の事故や半減期が30年と長いセシウム137のことをお話になるとき、このような事故を二度とおこしてはならないという先生の強いお気持ちがひしひしと伝わってきた。
2)新聞やニュースがヒッグス粒子によって「物質に質量を与える役割があり、その謎が解明された」ことを強調していたことに大栗先生は違和感をお感じになっていた。ヒッグス機構を使って説明するのは「ボゾン」というタイプの素粒子の質量なので「物質(フェルミオンというタイプの素粒子)」ではない。
3)3世代あるクォークと3つあるクォークの色荷を小学校の学年とクラスに例えて強い力と弱い力の性質の違いを説明されていたのだが、とてもわかりやすかった。
4)「自発的対称性の破れ」がとてつもなく大きな影響を与えたことがよく理解できた。
5)クォークを発見したゲルマン博士が昔使っていた部屋が現在カルテクで大栗先生がお使いになっている部屋だということに驚かされた。
授業が半分ほど過ぎたあたりで、前の2回の講座のときと同様、大栗先生は受講者に(糖分補給のための)お菓子をサービスしてくださった。(毎回、恐縮しながら頂戴している。)
今回いただいたお菓子はこれだ。後で調べてみたところ「こちらの商品」のようだ。

午後8時半を少しまわり講義が終わった後、先生は質問コーナーを設けてくださった。今回僕は3つ質問させていただいた。
質問1)クォークの強い力による閉じ込めをヤン-ミルズ理論で計算すると次のようにマイナス記号のついた式になり、この式を自力で導くことが素粒子研究者になるための登竜門だと大栗先生はおっしゃっていました。現在でも研究者は現場でノートと鉛筆、消しゴムを使って計算しているのでしょうか?(一人で試行錯誤をしながら計算するとき、鉛筆と消しゴムにまさる道具はないと思っている。Wacomのペンタブレットを持ち運ぶのよりずっと手軽だ。)
先生の回答)はい、そうです。でも研究者によってはマセマティカのような数式処理ソフトも使っています。
質問2)1964年にヒッグス博士の論文で、博士は「ヒッグス粒子」という名称を使ったのでしょうか?
先生の回答)いいえ、そうではありません。ヒッグス博士はとても謙虚な方です。新粒子についての記述を含む論文は次のような順番で発表されたのですが、後に論文を自分の論文で引用した物理学者が最初の論文の存在を知らずにヒッグス博士の論文を引用したので「ヒッグス粒子」と呼ばれるようになりました。(大栗先生はその物理学者のお名前をおっしゃっていたのだが、僕は忘れてしまいました。すみません。)
3つの論文:自発的対称性の破れのアイデアを素粒子の模型に使うために特殊相対論と組み合わせたもの。発表された順番。
1)ブラウト、アングレール
2)ヒッグス
3)グラルニク、ハーゲン、キッブル
質問3)巨大な加速器を使って陽子どうしを衝突させてヒッグス粒子はごく稀にしか生成しないということは、このあたり(講座の行われている教室)にはヒッグス粒子は存在しないということでしょうか?
先生の回答)はい、この教室にヒッグス粒子は存在しません。けれども「ヒッグス場」はこの教室などいたるところに存在しています。
大栗先生、今回も大変ためになる授業をしていただき、ありがとうございました。
講座の後は先生の著書の即売会&サイン会。先生はいったい何時にお帰りになれるのだろうと思えるほど長蛇の列が続いていた。
大栗先生のツイッターを見ると、翌朝には海外へ向かわれたようだ。今週末にはまた日本で講演会が予定されている。いつもながら先生のご多忙ぶりと健康管理能力には驚かされる。
一般講演会「重力とは何か」 @ 柏キャンパス:10月26日(金)と27日(土)
http://planck.exblog.jp/18525987/
僕はいつもどおり講座に参加されていた科学ブログ仲間とそのまま居酒屋へ。今回の参加者は僕を含めて5人だった。その中のお一人の271828さんからは毎回手作りジャムをいただいている。今回は「紅玉」で作ったジャムをいただきました。いつもありがとうございます。

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関連記事:
重力のふしぎ(朝日カルチャーセンター)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/243ec8bcf130122f0b25d7838a33b6a8
重力をめぐる冒険(朝日カルチャーセンター)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0471486930f344c4daa7aaa5ba2fdcc4
大栗先生の著書:
「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司」

「素粒子論のランドスケープ:大栗博司」

物理に馴染んでいない一般の社会人にとってはゲージ粒子(光子やWボゾンなど)とフェルミオン(電子など)の区別はないのでしょうね。光子とか電子の名前は耳にしていても、それらに質量があるかどうかも気にしていないみたいですし。ニュースや新聞の記事を書く記者も、一般の読者もそのあたりの違いはどうでもいいみたいです。
せめて、物理を学んでいる私たちは正確に学んでおきたいですね。
何が重要なのか最初はさっぱりわかりませんでした。
対称性と保存則は密接な関係があるのですよね。
今回の原発事故でエネルギーのことを考えるようになり、保存則であるところのエネルギーに関して、対称性のやぶれが生じ、フリーエネルギーなどないかなと妄想したりします。 でも保存則がないところに物理理論は成立しないのでやっぱり苦しいですね。
後
>3つの論文:自発的対称性の
とありますが 自発的対称性のやぶれ ですよね。
> 自発的対称性の破れですね。南部陽一郎さんが超伝導をヒントに着想されたのですよね。
> 対称性と保存則は密接な関係があるのですよね。
はい、まさにそのとおりです。
自発的対称性の破れについて、講座ではマイスナー効果を例にとって説明されていました。
運動量保存則は空間対称性と、エネルギー保存則は時間の対称性と密接に結びついていますね。同じ組み合せが「運動量と位置(空間)」、「エネルギーと時間」の不確定性原理に現れていることも興味深いです。
あと、タイプミスをご指摘いただきありがとうございました。該当箇所を直しておきました。
実は長年疑問に思うことがあります。
量子や素粒子って肉眼で見えるものなんでしょうか?
というのは、大気中にキラキラ光る金色の粒がたくさん見えるんです。
あれがなんなのか?
誰も知らないようで、でもちょっとした訓練で見えるし、訓練しなくても見えてる人はたくさんいます。私の母や子供も。でも、誰も疑問に思っていないようで。
プラーナというものという方がいらっしゃって、その方のサイトから、見える方法を知り、私は訓練によって見えるようになりました。
プラーナが見えると、人や物の周りに、オーラという言葉が適しているのかどうかはわかりませんが、色のついた光が取り囲んでいるのが見えます。
後、頭で考えた言葉が、他の人に届いた、つまりテレパシー?の体験もほんの数回ですがありました。
そういうことにこのキラキラ光るものが、関係するのかどうかはわかりませんが、何かはっきりしない、霊感とかそういうものではなく、学術的にこの物体のことを知りたいのです。
何かお分かりになるようなことがあれば、ぜひ教えていただきたいのですが…。
どうかよろしくお願い致します。
ご質問いただき、ありがとうございます。
量子や素粒子は肉眼で見えるほど大きくはありません。というよりどんな顕微鏡や望遠鏡を使っても見ることはできません。
私たちがものを「見る」というのは光がその物体に当たって、その反射光を見ているのです。光にはその色に応じた「波長」があり、その波長より小さいサイズの物体は反射がじゅうぶんに行われず、「反射しない」、つまり「見えない」のです。
目で見ることのできる光(可視光線)の波長はおよそ360nmから830nmなので、360nmより小さいサイズの物体はどんな方法を使っても光を使って(光の反射)によって見ることは「原理的に」できないのです。nmとはナノメートルのことで1ミリメートルの百万分の1です。原子の半径は、約0.1~0.3nm(ナノメートル)で量子や素粒子の世界はそれよりもさらに小さい世界です。
ちなみに空中を浮遊する花粉は数十マイクロメートル(0.001mm)、タバコ煙は0.1マイクロメートル以下(花粉の100分の1)です。1マイクロメートル=1000ナノメートルなので、花粉=10000ナノメートル、タバコの煙=100ナノメートルとなります。
ゆずっちさんがご覧になった「キラキラ光る金色の粒」は目で見えるわけですから、素粒子などよりははるかに大きいものです。可能性として大きいのは空気中に浮遊している「埃(ほこり)」か「花粉」」、あるいはなんらかの化学物質(固体の粒)だと思うのです。
雨上がりの朝など、空気がきれいなときほど、太陽光線によって空気中に浮かぶ微粒子が見えやすくなります。
もしかするとそれはアスベストのようなガラス質の微粒子の可能性もあるので、近くに古い建築物や廃材置き場などがないか確認したほうがいいかもしれません。僕の取り越し苦労かもしれませんが。。。
このきらきら光る粒は、一つ一つが動いているんです。まるで生き物のように…。
そして、ふうっと息を吹き掛けても動かないし、遠近感がないんです。
手でぱっぱっとあおいでも、くるくると一つ一つが生き物のように動いていて…。
実はこの金色の粒にはこういう説があって、誰がそう見たのかわかりませんが、その一つ一つの形や動きは精子に似てるとか。
そして、最初にこれを発見したと言われる人の中に、ドイツ人のヴィルヘルム・ライヒっていう1930年代に活躍したと言われるかなり特異な博士がこの粒にオルゴンと名付けて、病気の治癒に利用したという話が有名なようです。ただ、彼の著書は全て廃棄されてるので、このきらきらが、本当に彼の言うオルゴンなのか?…という疑問がずっと私の中にあるんです。ほんとうにアスベストならスッキリするんですが。(笑)
どういたしまして。お久しぶりです。
オルゴンやヴィルヘルム・ライヒについてウィキペディアで読んでみました。波乱に満ちた生涯を送った博士なのですね。
いったいその金色の粒は何なのでしょうねぇ。。。
愛媛大学の物理学部に問い合わせたところ、国立環境センターに聞いてみたら?と言われ、電話してみました。
そしたら、私の見てるものは現在、正体不明ということらしいです。
今日気づいたのは、一粒をずっと目で追うと、大気中に消えていってます。ふっと消えたな?って思うと、また大気中から出てきます。
速度的には、かなり速い。速すぎて目で追うことはかなり難しいです。(・_・;
もちろん、動いてます。その動きの規則性までは、小さすぎるのと、速すぎるので把握できず。
ちなみにこの粒の見方は、3Dの絵を視るように、寄り目にして、青空を背景に、しばらく一点を凝視してると見えてきます。
針の先程の大きさですね。見てる姿は端から見るとかなり怪しいそうですので、こっそり見て見てください☆(笑)
ちなみに、その粒に関しての本が出てますが、バーバラ・ブレナン博士って方でNASAにお勤めされてた方が出してます。かなり詳しく書かれてますが、一般的にはこの本のことは知られてないようだし、東京にこの方の学校もあったのですか、すぐに廃校に。現在アメリカのみのようです。彼女はこの粒を、病気の治療にと書いてますが、私がこの粒を見る限り、そこまでは不可能かと。コントロール不可能…。でも、確かにこの粒は見えるので、その正体をはっきりさせたいなと。最近、あやしいビジネスも横行してますので、この粒=オルゴン=病気が治ると大々的に治療器具と称して商売されてる企業もあります。そんなに安くはなかったですね。(・・;)
でも暴露しない方がいいのかも?…営業妨害?この粒をなんとか捕まえようとしたけど、私の体にくっついても来ないし、微動だにしない…(^_^;) ただ、ひたすら空中できらきらしてる。。。
誰か真面目にこれを研究してくれないかなぁ。
一般家庭で調べるのは難しいようです。ナノ粒子をフィルターで集めて化学的に解析、重さがわかるらしいから、可能と言えば可能?環境センターの方のお話によると。
とりあえず、このきらきらは、とてもきれいなものなので時々子供と公園で眺めることにします♪
ちなみにこれが見えると、オーラも見えるとか。確かに体や建物の周り、空を飛んでる鳥の周り、植物の周りにグレー、もしくは青や黄色、緑の鮮やかな光の色が、肌から2、3センチぐらいの幅で出てるのが見えます。でも、補色っていう話もあるので。いつかこのきらきらが解明されることを願って…☆
長々とお付き合いありがとうございました♪(^-^)/