とね日記

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ファインマン物理学 I: 第17章 時空の世界

2009年07月20日 02時45分36秒 | ファインマン物理学

第17章:時空の世界

第15章で紹介した4次元時空の考え方を幾何学的に考察するのがこの章の導入部分である。

静止している観測者の4次元時空での位置 (x,y,z,t)と速度 u で運動している観測者の位置 (x',y',z',t') の関係を示すローレンツ変換は次の式であらわされる。



これは3次元空間での回転を示す次の関係式によく似ている。



3次元空間での関係式が示すようにX座標とY座標は「交じり合っている。」そして同じように4次元時空では空間座標である x と時間座標である t が交じり合っているのだ。

そもそも3次元空間で物体を立体的に見るというのは、目の「視角」で物体の幅を認識しつつ、同時に「遠近感」で物体の奥行きを認識するということだ。どちらも「長さ」という量であるにもかかわらず認識の仕方が違っているのだ。そして物体を回転させることによって「幅」だったものの一部分は「奥行き」になり、「奥行き」だったものの一部が「幅」になる。2つの座標成分が「交じり合っている」というのはそういうことだ。

同じことが4次元時空の回転についても言える。時間とは頭の中でその流れを認識するという意味で「幅」や「奥行き」とも認識方法が違う。でも4次元時空の回転を行うことによって、時間成分の一部は「幅の成分」や「奥行き」の成分になると考えられる。目で見ることはできないが、4次元の時空もこのような方法で幾何学的なものとしてイメージすることができるのである。

ファインマン先生は次に時間座標の単位を「長さ」に変換する。光が1秒間に進む距離(=30万キロメートル)を「長さ=1」として換算するのだ。これは単位変換以上の意味を持つ。時間さえも他の3つの空間座標と同じ単位で測ることになるからだ。その結果 c=1 となり、ローレンツ変換は次のように単純化される。



また、次の式も成り立っていることがすぐ計算できる。時間と空間についての美しい数式だ。



この式には運動速度 u が含まれていない。つまり運動とは関係なく本質的に時間と空間の間に成り立つ関係をあらわしている!「空間だけ」とか「時間だけ」では存在することができないのだ。うーむ、深い。。。。

そしてこの等式から計算される量は不変量であり、その量のことをファインマン先生は「インターバル(間隔)」という言葉で呼んでいる。4次元時空における距離の意味だ。(正確に言えば距離の2乗である。)

このように4次元時空の幾何学を紹介した後で、このミンコフスキー時空における「過去」と「現在」、「未来」について図を交えながら説明を続ける。特殊相対論における2つの4次元時空の間では「同時」の概念が意味をなさなくなること、物事の原因と結果というのは時空図の中でどのような位置関係にあるのか。私たちの常識は大きな変更を余儀なくされることが明確に示される。


議論は再び4元ベクトルに戻る。空間成分の3次元ベクトルに時間成分を加えた4つの成分を持つベクトルのことだ。運動量に相対論が導入されると、4元運動量(相対論的運動量)となる。また、エネルギー E も相対論的に表現されるスカラー量である。これらを数式として書き下すと次のようになる。ただし運動量は座標成分ごとに示しておいた。



エネルギーと運動量についてもローレンツ変換の関係が成り立っていることがわかる。そこで3次元の運動量とエネルギーをまとめて1つの4元ベクトルと考え、これを「4元ベクトル運動量」と呼ぶ。次のような相対論的ベクトルである。



エネルギー E は4元運動量のうちの第1成分=時間成分であることがわかった。こうしてエネルギーと運動量は1つの物理量に統一されてしまったのだ!

ここでもうひとつ不思議なことが発見される。上記のローレンツ変換の式では位置 x と運動量 px、そして時間 t とエネルギー E がペアになってあらわれている。第11章では空間的対称性は運動量保存則と結びつき時間的対称性はエネルギー保存則と結びついていることを示した。つまり x と p、t と E がペアになっている。さらに量子力学の「ハイゼンベルクの不確定性原理」もがΔxとΔp、ΔtとΔEのペアになっている。出所の違う3つの法則で同じ組み合わせがあらわれているのは、法則のもっと深いところにひとつの理由が潜んでいることを示しているのではないだろうか?

ところで時間と空間についての不変式があるように、4元運動量についても不変式が成立していることは簡単な計算で導かれる。結果だけ書くと次のような量が一定値になる。



この式は3次元空間の「エネルギー保存則」と「運動量保存則」を統一したものである。ますます奥が深くなってきた。

さて、この式は3次元運動量成分だけを1つにまとめると次の式になる。



この式は不変の値を持つことを述べたのだが、その値は何であろうか?これはいつも成り立っている式なのだから、速度が0のときでも成り立っていることを考えると p=0 を代入すれば疑問は解ける。つまりこれは静止エネルギーの2乗なのだ。



最後にきわめて不思議な結論が得られる。この段階では光速度 c を1という単位にしたので、次の式が成り立っている。



すると上記の(静止エネルギーの2乗の式)にこれを代入すると次の計算が導かれる。



光速度で運動するのは光だけであり、アインシュタイン自身が提唱した「光量子仮説」に従ってそれを「光子」とみなすと、この一連の計算は光子の静止質量がゼロであることを示しているのがわかる。正体がよくわかっていない「光子」というモノについて特殊相対性理論はその質量を明らかにしてしまうのだ。

ところで光の進路は天体の万有引力によって曲げられる。それはあたかも光が質量を持っているかのようである。けれども光が質量を持っていないのだとしたら、それはどのように解釈したらよいのだろうか?そう、曲がっているのは光の進路ではなくそのまわりにある空間であるとしか言いようがない。その曲がった空間に沿って光は慣性の法則にしたがって真っ直ぐ進んでいるのだ。

そうすると次のように僕は考えてしまう。光線はガラスを通ると屈折するわけなのだが、光学理論によればそれは真空中よりもガラスの中では光が遅く進むからだと説明される。それではどうしてガラスの中のほうが遅く進むのだろうか?質量がゼロである光を減速させる「からくり」とはいったいどんなものなのだろうか?謎は深まるばかりである。


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